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第105回 危機管理とシェアハウス

ここしばらく、北朝鮮がしばしばミサイルを発射するようになりました。少し前までは「ロケット打ち上げ実験」だの「飛翔体」だのと奥歯にものの挟まったような表現をしていましたが、今やニュースでも「弾道ミサイル発射」と明確に断言しているように、事態は緊迫の度合いを深めていると思われます。その一方で、これまでのところ他国に現実的な被害が生じていないだけに――もっとも、そうなったら待ったなしの戦争状態ですが――日本人も、いささか慣れっこになっている感があります。しかし、改めて考えてみるまでもなく、これは異常事態だと認識しなければなりません。ウクライナ戦争では、追いつめられたプーチン大統領が戦術核の使用をちらつかせて各国を恫喝していますが、米国防総省ではこれを現実的な脅威と判断して対応策を検討している……との報道もあり、まさに一触即発の緊迫した状況を迎えていると言っていいでしょう。国内では、先日のJアラート(全国瞬時警報システム)の誤作動を巡って、これを政権批判につなげようとする論調も見られますが、もはやそんな悠長な議論をしている場合ではないのかもしれません。60年前のキューバ危機の悪夢の再現も、決してありえない話とは言えなくなってきたようです。

さて、そうは言っても、市井の私たちの力でできることは限られています。国家的な危機管理は専門の方にお任せするとして、ここからは気を取り直し、身近な問題に目を向けてみることにしましょう。とりあえず、2022年9月28日付の『全国賃貸住宅新聞』に掲載された次の記事からご紹介していきたいと思います。「住宅確保要配慮者向けシェアハウス、事業者で連盟を発足」( https://www.zenchin.com/news/post-7541.php )というタイトルの記事。ここに出てくる「住宅確保要配慮者向けシェアハウス事業者連盟」( https://www.kakedasu.com/ )とは、読んで字のごとく、障害のある方や生活困窮者など、自力で住まいを探すことが難しい人びとを対象とするシェアハウス事業者による一般社団法人です。URLにもある「kakedasu」とは「現代の駆け込み寺」に因んだネーミングであるとか。以下、記事を抜粋して引用いたします。
「ドメスティックバイオレンス(DV)被害者などにシェアハウスを提供するコミュニティー『Kakedasu(カケダス)』は1日(※2022年9月1日)、住宅確保要配慮者向けシェアハウス事業者連盟(さいたま市)に名称を変更した。加盟団体数の増加や、連盟の機能拡大を図る。これに伴い、運営権をコトハウス(同)から一般社団法人こぐまの家(同)に譲渡した。(中略)
こぐまの家は、埼玉県と千葉県で15棟40室の住宅確保要配慮者専用シェアハウスを運営する。21年4月の1棟目オープン後からほぼ満室の状態が続く。発達障害や精神疾患を抱える入居者の通院付き添いなども行っている。
 これまでKakedasuは会員間での入居希望者の紹介や、チャット上で支援の具体例を共有するにとどまってきた。連盟化にあたり、居室面積や居住環境、入居者からの家賃集金方法などに関する規約を設け、無料定額宿泊所との違いを明文化していく。
 今後は、同法人の知見を生かし、入居者への伴走支援の在り方など、勉強会を月1回程度開催する予定だ。(後略)」
上記の通り堅苦しい文言が並んでいますが、要は一般社団法人化に伴い、活動内容を本格化するとともに財源確保の強化にも取り組むといった狙いがあるようです。一歩間違えば怪しげな貧困ビジネスにもなりかねなかった活動を、公的な活動として認められるように背景を整えたというニュアンスも受け取れますが、今後、加盟事業者が増えていけば、利用者にとってより安心感のあるサービスを提供できるようになり、入居のハードルも低くなることが期待されます。一方、加盟したシェアハウス大家さんにとっては、次のようなメリットがあると謳っています。
「駆け込んでこられた方がシェアハウス住民となることによる家賃収入増/ソーシャルグッドなイメージを持つことによる、広報的なイメージアップ/ソーシャルグッドやセーフティーネットを意識したシェアハウスを立ち上げたい方の情報収集や人脈づくり/セーフティーネットや各種制度などの専門的知識やノウハウの共有/東京アンブレラ基金の仕組みを活用した、今日泊まる場所がない方への宿泊費支援」……。一般的な多くのシェアハウス大家さんにとって、これらがどの程度魅力的なものかの判断は難しいところでしょうが……こうした社会貢献活動を通じて、シェアハウスの可能性が拡がっていくことは、将来的にこの業界に有形無形のメリット(たとえば、金融機関からの融資を受けやすくなるなど)をもたらすことにもつながっていくと期待できるかもしれません。

次に、10月14日付で(公財)日本賃貸住宅管理協会( https://www.jpm.jp/ )が発表した『管理会社は何をする⁉インボイス対応ナビブック』( https://www.jpm.jp/topics/38214 )の話題について。同書は、2023年10月1日から開始するインボイス制度(売り手が買い手に対して正確な適用税率や消費税額等を伝える)の対応策をまとめた会員(=管理会社)向けのA4判56ページから成るマニュアルになります。賃貸住宅管理業に特化して課題を抽出し、管理会社に在籍中のオーナー担当幹部、経理担当幹部や法務担当幹部などの実務者が、約半年間かけて研究し、対応策をまとめたものです。具体的な内容としては、インボイス制度の概要や賃貸管理業界に与える影響、対応Q&A集などで構成されており、賃貸オーナーへの影響、管理会社、サブリース会社が行うべき対応策を整理しています。会員向けの頒布は10月下旬を想定しており、すでに10月7日から会員専用ページでデータを公開しているとのことです。
なお、注意すべきは、ここでいう「会員」はシェアハウス大家さんをはじめとする不動産オーナーではなく、「管理会社」であるということ。そして、同協会のホームページにも明記されている通り、「居住用賃貸住宅の家賃は非課税であり、インボイス制度に直接関係は」ない、ということです。ただし、この文章を続けて読むと「多くの賃貸オーナーは、事業用物件や駐車場等課税取引となる物件が少なからずある」というケースが考えられるということ。また、「当該物件の課税売上が1,000万円以下の免税事業者であることが想定され、今後、賃貸オーナーからインボイス制度へ登録すべきなのかという相談が寄せられるでしょう。その際、管理会社としてその相談に応えていく必要があり、そのためには、インボイス制度のことやどのような影響があるかを理解しなければ」ならない、としています。同書ではさらに「インボイス制度の概要だけでなく、賃貸オーナーへどのような影響があるのか、管理会社やサブリース会社にとってどのような影響があるのか、管理会社やサブリース会社として何をすべきか等、実務者が理解すべき視点で多岐に渡る情報を整理しています。あわせて、想定される相談事例等もQ&A方式で紹介しています。」と記されています。シェアハウス以外にも不動産などの資産運用を手がけていらっしゃるオーナー業の方には参考になることもありそうです。

続いて、10月11日付で(公財)不動産流通推進センター( https://www.retpc.jp/ )が公表した「全国の指定流通機構における2022年9月の既存住宅の成約動向」( https://www.retpc.jp/wp-content/uploads/reins/bukken/bukken2209.pdf )について。これによると、既存マンション成約価格と平米単価は、いずれも28ヶ月連続でプラスとなっています。専有面積は16ヶ月ぶりにプラスに転じ、築年数は16ヶ月連続のプラス。成約件数は前月のマイナスからふたたびプラスに転じています。また、既存戸建住宅の成約価格は27ヶ月連続でプラスとなり、建物面積・土地面積も、いずれも2ヶ月連続のプラスとなりました。築年数は8ヶ月連続のプラスで、成約件数も前月のマイナスからふたたびプラスに転じています。ざっと総括すれば、既存(中古)住宅市場はマンション・戸建ともに「広く」かつ「古い」物件の成約が増加傾向にあり、それでいて成約価格は上昇傾向が続いているということができます。面積の広い物件の価格が高いのは当たり前ですが、築年数の経過した物件の売れ行きがいいということは、新築・築浅物件がそれだけ高騰し、手が届きにくくなっているということでもあります。

ここで興味深いのが、同じ10月11日付で(公財)東日本不動産流通機構( http://www.reins.or.jp/ )が発表した「2022年9月度の首都圏不動産流通市場動向( http://www.reins.or.jp/pdf/trend/mw/mw_202209_summary.pdf )」との比較です。こちらは首都圏の1都3県のみが対象となっていますが、マンションの成約件数は2ヶ月連続、戸建は9ヶ月連続で減少となっています。これに対して成約価格はマンションで平米当たり29ヶ月連続・戸当たり28ヶ月連続、戸建で23ヶ月連続の上昇となっており、こちらのデータは前出の(公財)不動産流通推進センターとほとんど差はありません。すなわち、前出の傾向に加えてもう一つ、首都圏を除いた地方圏で中古物件が売れているという傾向が読み取れます。この2つの市況データが表しているのは、都心部の不動産価格の上昇が続いていることを踏まえて、「遠く」「広く」「古い」物件を購入する層が増加傾向にあるという事実。そして、「遠くて古い」物件であっても価格上昇が2年以上続いているという状況です。ここ2年間はコロナ禍という一種の異常事態にあるとはいえ、これだけ長期間続けば異常事態も日常になります。こうした世の中にあって、利便性の高い都心部で狭小物件を扱うシェアハウス大家さんのような賃貸ビジネスは、今後ますます厳しい状況を迎えつつあると言わざるを得ません。

一方、10月19日の東京外国為替市場では、円相場が一時1ドル=149円台半ばまで下落し、1990年8月以来、約32年ぶりに安値を更新しました。もはや150円台突入も待ったなし、という状況ですが、政府の鈴木財務大臣も日銀の黒田総裁も、口先ばかりで事実上、無為無策……。円安不況も、施行まで残り1年を切ったインボイス制度も、シェアハウス大家さんにとって直接的にはほとんど影響ないかもしれませんが……特定の業界がダメージを受ければ、めぐりめぐって日本経済全体のダメージとなり、どんな業界もいずれは無関係ではいられなくなります。いざそうなった場合、中小・零細事業者はいよいよ難しい判断を迫られることになりそうです。
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