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シェアハウス イラン戦争 ホルムズ海峡封鎖 非常事態 景気の遅行指標

第147回 非常事態とシェアハウス

開戦当初から予想されていた通り、トランプ大統領の思惑とは裏腹に完全に泥沼化したイラン戦争……。パキスタンの仲介によりようやく2週間の停戦にこぎつけたものの、イスラマバードで4月11日から行われた戦闘終結に向けた和平交渉は合意に至らず、協議の席に着いたバンス副大統領は手ぶらで帰国することになりました。イランがホルムズ海峡を通過する船舶に通航料を課すことで、ひとまず封鎖は解除される「はず」だったのですが……なんと、今度はアメリカ側が海峡封鎖を宣言。「イランに通航料を支払ったすべての船舶をアメリカが公海上で拿捕する」と言い出したのです。これに伴い、「イラン側が敷設した機雷を除去する」とトランプ大統領は息巻いていますが、機雷除去のための艦艇がホルムズ海峡に接近すれば、イラン側はこれを「重大な停戦協定違反と見なし、断固とした措置を取る」と警告。2週間の停戦期間明けを待たず、ふたたび戦端が開かれる公算が高まっています。その一方で、トランプ大統領が「イラン戦争に協力しない同盟国」として日本と韓国を名指しで批判してきたことを受けて、高市早苗首相は「時は来た」などと憲法改正に向けた追い風に利用しようとしているようですが……このままでは、日本はアメリカと心中するどころか、アメリカの防波堤となって一足先に沈むことになりかねません。イラン戦争は今や対岸の火事などではなく、我が国の足元を焦がし始めているのです。

その、ごく身近な証左として――4月13日、水まわり住宅総合機器メーカー・TOTO(株)がユニットバスなどの新規受注を停止したとのニュースが報じられました。これはホルムズ海峡封鎖に伴う石油由来のナフサの品不足によるもので、これだけでも建築・不動産業界への影響は計り知れないものがありますが、無論、この問題はユニットバスだけ、あるいはナフサだけに留まるものではありません。およそ、国内の製造業・物流業をはじめとするすべての業界に甚大な影響を及ぼすことは、子どもでも容易に想像することができます。「いずれ遠からず」とか「最悪の場合」などというエクスキューズは不要で、今この瞬間が非常事態の真っただ中にあります。「官民合わせて254日分の国家備蓄がある」「ただちに影響はない」などという妄言は、それを口にする人間さえおそらくは信じていない気休めに過ぎないでしょう。

ともあれ――事態は今まさに現在進行形で推移しているところであり、今後の動向を正確に予測することは困難です。ひとまず、現時点で明らかになっている事実に基づき、当月も直近の不動産関連の話題をいくつか紹介していくことにしましょう。
まずは4月10日、(公財)東日本不動産流通機構が公表した「2026年3月の首都圏不動産流通市場動向」( https://www.reins.or.jp/pdf/trend/mw/mw_202603_summary.pdf )について。同月の首都圏中古(既存)マンション成約件数は5,001件(前年同月比0.2%増)となり、17ヶ月連続で増加しています。都県別に見ると、東京都が同2.9%減、埼玉県が同0.7%増、千葉県が同1.1%増、神奈川県が同6.5%増となっています。横浜・川崎を含む神奈川県が17ヶ月連続で増加しているのに対し、東京都は都区部が3ヶ月連続で減少しているほか、多摩も17ヶ月ぶりに減少に転じています。
1平米当たりの平均成約単価は71ヶ月連続上昇で86万3,400円(同9.3%上昇)、1戸当たりの平均成約単価は17ヶ月連続上昇で5,521万円(同11.6%上昇)となりました。平均専有面積は3ヶ月連続で拡大し、平均築年数は2ヶ月連続で増加。新規登録件数は2ヶ月連続で減少し、在庫件数は8ヶ月ぶりに増加に転じました。
一方、既存戸建ての成約件数は17ヶ月ぶりに減少し、都県別では東京都が同5.4%減、埼玉県が同0.4%減、千葉県が同3.1%増、神奈川県が同0.2%増となっています。
平均成約価格は3ヶ月連続で上昇しているのに対し、新規登録件数および在庫件数は2ヶ月連続で減少しました。
不動産市況はもともと「景気の遅行指標」と言われるように、3月の時点では目立った傾向の変化は見られないものの、全般的に価格の高騰が続く都心部の物件は成約が伸び悩み、比較的資金に余裕のある層は都心への交通の便の良い神奈川県などに流れている状況が窺われます。マンションの平均専有面積の拡大は、都心の狭小物件よりは郊外の比較的広い物件が好まれる――平米単価で見れば割安、ということに起因するものと思われます。新築物件では今後、さらなる資材高騰・品薄の状況が確実視されるだけに、中古(既存)物件への需要は当面続くものと予想されます。

次にご紹介するのは4月9日付のプレスリリースで、「【賃貸物件】外壁の汚れ・ひび割れ・色褪せが気になった経験がある人は約28%。外壁・外観が原因で入居を見送った経験も約39%に―株式会社NEXER・賃貸物件選びの際の外壁・外観の老朽化に関する調査−」( https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002553.000044800.html )というもの。この見出しだけで内容はほぼおわかりでしょう。当たり前といえば当たり前の話なのですが、賃貸物件の場合、売買と違って「内装にはお金をかけても、外観にはなるべくお金をかけない」という貸主が一定数存在することから、わざわざ調査を行い、データを算出したものと思われます。結果も当然の帰結なのでしょうが、数値化することで説得力が高まることになっています。参考資料としては有意義でしょう。

続いて、健美家株式会社の運営する「不動産投資と収益物件の情報サイト『健美家』」に4月6日付で掲載された「外国人賃貸ニーズはどこまで本当か。関西エリアの現場から知るこれからの貸し方」( https://www.kenbiya.com/ar/ns/jiji/etc/9986.html )という記事。これは当コラムでも以前ご紹介した(株)東京情報堂代表の中川寛子氏の協力を得て健美家編集部がまとめた記事になります。元記事が非常に詳細で読み応えのあるもので、かつ、関西エリアというローカルに特化した内容であることから、ここでは簡単に概略のみご紹介させていただきます。詳しい内容についてはぜひリンク先をご覧ください。
「厚生労働省の2026年1月の発表によると日本国内の2025年の外国人労働者数は257万1037人。集計を開始した2008年以来で初めて250万人を超えた。
3年連続で10%を超える伸びが続いており、現状の労働状況の逼迫を考えると今後も増えることはあっても大幅に減るような事態は想定できない。
となると気になるのが住宅事情。当然、どこかに住まいは必要で、しかも労働力は日本全国で必要である。どんな住宅が借りられているのか、これからどのような住宅にニーズがあるのか。ここではそのうち、関西エリアの2地域で現状を聞いた」
ここまでがリード文の引用になります。続いて、大阪府南部の泉州地域(大阪と和歌山の間にある「阪和エリア」)と、奈良県エリアの2地域を取り上げ、それぞれ具体的な物件を取材しつつ関係者から詳しい話を聞き出しています。前者に関しては「関空で働く外国人労働者も多く、特に海側のエリアに需要が高いこと」「外国人の場合、単身者で一戸建てを借りるケースもあること」「水回りを中心にリフォームし、脱衣所を設けるなど使いやすくすることで賃料アップしても借り手がつくこと」などが語られています。また、後者に関しては「法人(大手だけでなく、中小・零細も多い)が一戸建てをシェアハウスとして借り、技能実習生を住まわせるケースが目立つこと」「1棟に同国人が集まって暮らすことで外国暮らしの不安を和らげる雇用者側の配慮があること」「高速道路や鉄道の開発計画があり、将来的な需要が見込めること」などが語られています。いずれも現地の不動産業者への丁寧な取材に基づく内容となっており、ここで直接取り上げている地域以外でも参考になることが多いと思われます。

なお、同じ健美家編集部(協力:中川寛子氏)のクレジットにより3月30日付で掲載された「開業2カ月半前に52室が満室に。Z世代に『家賃は投資』と認識される理由とは?」( https://www.kenbiya.com/ar/ns/for_rent/share_house/9995.html )という記事についても、併せてご紹介しておきます。こちらもぜひ、リンク先をご一読されるとよいでしょう。

もう1本、こちらはYouTubeの動画になりますが、(公社)全国賃貸住宅経営者協会連合会(ちんたい協会)が「立ち退き」裁判例の解説を5分間の動画( https://www.youtube.com/watch?v=ZGEjeYmNHoQ )にまとめたものを公開しております。これは2019〜24(令和元〜6)年までの最新裁判例137件を分析し、「正当事由」の新常識や立ち退き料の相場、泥沼化を避けるための最善策などについて、分かりやすく解説したものになっています。シェアハウス大家さんとしては当然、歓迎したくない事態ではありますが、万一に備えて予備知識を備えておく必要があるかもしれません。

戦争という非常事態にある国際状況と、そこに否応なく巻き込まれていく日本の現状、そして、今現在すでに深刻な影響を受けつつある日本経済を鑑みると、私たち一人ひとりの日本人が無関心でいることはもはや許されません。とはいえ、一企業や一個人の政治的発言に対しては、いまだ世間の拒否反応が強く、無言の同調圧力を感じている方も多いと思われますが――今こそ「誰が言ったか」ではなく「何を言ったか」を基準として、一人ひとりが自らの立ち位置を再確認する時期が来ているのではないでしょうか。
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