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第150回 国際交流とシェアハウス

案の定――という表現はさすがに不謹慎かもしれませんが、イラン戦争の停戦は破られ、アメリカ軍は攻撃を再開しました。トランプ米大統領は「イラン側が先に手を出した」として自らの行為を正当化していますが、当事者たちにとってはともかく、部外者である他国民からしてみれば、「どちらが悪いか?」などという問題は考慮にも値しません。前回の当コラムでも「戦闘が終結したからといって、ただちに『ホルムズ海峡開放』『ナフサ輸入再開』が実現するというものではない」ということを述べましたが、やはり、当面はこの状況が続き――いえ、問題が長期化することで状況はますます悪化の一途をたどると考えたほうが正解でしょう。イランによるホルム海峡再封鎖を受けて、トランプ大統領は7月14日、イランの全港湾に対する海上封鎖を再開し、さらなる攻撃を示唆してイラン側を恫喝しています。また、これに先立ち「ホルムズ海峡を通過するすべての貨物に20%の『通航料』を課す」などと一方的に提案(?)していた件については、さすがに諸外国の理解を得られないものと反省した(?)ものか、同日付で撤回を表明しましたが……大統領に返り咲いた直後の「トランプ関税」騒動と同じく、自国の支持者たちしか見ていない相変わらずの浅はかな言動には、各国から白い目を向けられています。この期に及んでトランプ政権に無批判で盲従しているどこぞの国の為政者も、これに懲りて、少しは考えを改めてくれれば良いのですが……。

さて、当月も直近のニュースから気になる話題をいくつかご紹介していきましょう。まずは、7月14日付の『山陽新聞』に掲載された「【徳島県鳴門市】『おてつたび』×『JA里浦』×『鳴門市』〜『半農半X』推進シェアハウス事業〜『なると金時編』スタート」( https://www.sanyonews.jp/article/1954637?rct=prtimes_chushikoku )という記事ですが……じつのところ、新聞記事と言いながら、実質的にはプレスリリースの転載になります。いささか興味深い内容なのでほぼ全文を引用しますが、『山陽新聞』の記者が取材した記事ではないため、あくまで「主催者発表」であることをお含みおきください。
「『なると金時』の収穫期に合わせ、全国から『おてつびと』が集結し、2週間の『半農半X』生活を体験します。
本市に移住を検討しているリピーターやコロナ禍をきっかけに地方暮らしを考えている参加者など、全国から集まった4名が、和気あいあいとしたシェアハウス生活を楽しみ、地元農家と交流しながら、収穫作業や鳴門の暮らしを体験します。
また、初日は市職員による観光案内を実施するなど、滞在期間中は全面的にサポートを行い、本市の魅力発信についても注力します。
■事業詳細(中略)
■『半農半X』推進シェアハウス事業とは
『半農半X』を移住コンセプトに、『おてつたび』のプラットフォームで全国から参加者を募り、本市で2週間の農業アルバイトを体験してもらう事業。
これまでに『鳴門らっきょ』『なると金時』『いちご』『青首だいこん』の各収穫期に実施し、全国から125人の参加がありました。平均参加倍率が5倍を超え、大きな反響を呼んでいます。
■『おてつたび』とは
株式会社おてつたびは、地方で働きながら旅する若者と農業・観光業など人手不足に困っている事業者のマッチングサービスを提供している新進のスタートアップ企業です。
同社のプラットフォームは、登録者数10万人を超え、地域・地方に関わりたい人が多く参加しています。
令和6年には、新語・流行語大賞にもノミネートされるなど、地方創生の取り組みとして、各種メディアで大きな注目を集めています。
■『おてつたび』との連携
令和6年7月には、(株)おてつたびと自治体としては全国初となる連携協定を締結、移住交流の促進、関係人口の創出・拡大、人手不足解消などに連携して取り組んでいます。
今後は農業だけでなく、観光業など多様な業種で受け入れを拡大する方針で、令和6年10月〜11月には、市内リゾートホテル3か所で受け入れを実施しました。
また、UIJインターンシップとして、令和7年8月に医療・介護・保育の福祉関連事務所、令和8年3月には和菓子製造・食品製造・水産加工の事業所で受け入れを実施しました。(後略)」
要するに、人口減少問題に悩む地方自治体が民間企業とコラボを組み、移住促進政策の一環として進めている取り組みになります。目先の人手不足解消だけでなく、これをきっかけに移住者の受け入れ体制を整備していこうという狙いのようですが、はたしてどこまでうまく「繋げて」「拡げて」いくことができるでしょうか。今後の展開が注目されます。

次にご紹介するのは、『朝日新聞SDGs ACTION!』に7月9日付で掲載された「日本に住む外国人のお宅に泊まる 『まちなか留学』が変える国際交流のかたち」( https://www.asahi.com/sdgs/article/16695157 )という記事。『朝日新聞SDGs ACTION!』とはいささか聞きなれない媒体名ですが、「サステナビリティに取り組む人を応援するメディア」というキャッチコピーで朝日新聞社が運営する情報サイトです。以下は、同編集部の池田美樹氏によるHelloWorld株式会社の事業連携推進室マネージャー・高橋優氏へのインタビューをまとめた署名記事。一部抜粋して引用します。
「■『もったいない』という気づきから始まった事業
——『まちなか留学』はどのような経緯で生まれたのですか。
HelloWorldはコロナ禍の2020年に沖縄で創業したスタートアップです。英語教育の会社と思われることが多いのですが、私たちの思いは、教育を変えること、そして国際交流や多文化共生をインフラ化することにあります。
創業者の野中光が沖縄出身で、ある時ランチをしていた際に、近くに座っていた外国人から『3カ月、沖縄にいるのに日本人と話したのは初めてだ』と言われたことがきっかけです。多くの外国人が暮らす沖縄でも、日本人コミュニティとの接点がほとんど生まれていない実情に衝撃を受けたといいます。
同時に、コロナ禍で海外に行きたくても行けない子どもたちがたくさんいた。日本に住む外国人の方々も日本人コミュニティとの接点がない。ならば双方をマッチングして、ごちゃ混ぜにしてしまおうというのが発想の出発点です。
——具体的にはどのようなプログラムですか。
東京・神奈川・千葉・埼玉、そして沖縄に住む、海外にルーツを持つご家庭に、主に週末を使って英語でホームステイするプログラムです。沖縄では、内閣府の『沖縄国際交流体験促進事業』にも4年連続採択 されています。
まちなか留学の魅力は日本にいながらさまざまな国の人に出会えることです。海外留学だと多くの国を回るのは難しいかもしれませんが、まちなか留学なら『今週はアメリカ人のお宅に』『来週はバングラデシュ人と』『来月はドイツ!』といったように、 日本にいながら世界一周のような体験ができます。
安全面には特に力を入れており、書類審査とオンライン面談に加え、全家庭への自宅訪問を実施しています。審査の通過率は2026年時点で約35%です。
■24時間家族の一員として過ごす
——実際のプログラムはどのように進むのですか。
個人で参加する場合、午後3時ごろホストファミリーのお宅に到着し、翌日の昼食ごろまで一緒に過ごします。ほぼ24時間の滞在です。
お互いの自己紹介やホームツアーの後、まず一緒に食事を作るところから始まることが多いです。普段は見かけないチーズが並んでいたり、本場のスパイスを使ったカレーを作ったりと、キッチンで異文化体験をします。
夕食後は、ボードゲームを一緒に楽しんだり、近くの公園に出かけたりとホストファミリーの日常を体験しています。
参加者は2歳から80代まで幅広いですが、中心は中学生・高校生です。幼いお子さんが親御さんと一緒に参加する親子留学や、英語教室に通っているシニアの方が週末の異文化体験として楽しむケースもあります。
——英語に不安のある人も参加していますか。
英語力に関わらず参加していただきたいと思っています。大事にしているのは、英語を話すことよりも体験してチャレンジすることです。ホストファミリーも日本の参加者の英語レベルを理解していて、それに合わせたゲームや説明を用意してくれています。実施期間中は24時間サポート体制も整えています。
参加後に、英語がうまく話せなくて『悔しかった、もっと勉強したい』という声も多く聞きます。英語がある程度できる参加者からは『海外留学に踏み出す自信がついた』という声もいただきます。
また、フィリピンやインドのご家庭を体験して『米英ではなくこの国に留学してみたい』という新しい気づきにつながることもあります。英語圏だけでなく、学校教育はほぼ英語でおこなわれている国があることを初めて知る人も多いですね。
■東京進出が持つ意味
——沖縄から始まった事業が関東にも広がった経緯を教えてください。
私たちのビジョンは『世界中に1人ずつ友達がいることが当たり前の社会を作る』ことで、多様性を社会に実装するインフラになりたいという思いがあります。そのためには事業を日本全国、そして世界に広げていく必要があります。
東京・関東は、他の地域と比べものにならないほど多くの外国人が居住しており、大使館やインターナショナルスクールも集積しています。ホストファミリーの拡大がしやすく、また情報への感度が高いためメディアの注目も集まりやすい。
大企業とのコラボレーションや自治体との連携など、具体的な事業も動き始めています。関東での成功事例を作ることが、全国への展開につながると考えています。
——ホストファミリー側にとってはどういう意義があるでしょうか。
インターナショナルスクールに通うお子さんがいる外国人家庭では、日本の子どもたちとの接点がなかなか生まれないという声を多く聞きます。まちなか留学では、同世代の日本の学生と英語や日本語を教え合ったりする交流が生まれ、ホスト側にも喜ばれています。
たとえばパキスタン人のホストファミリーから『イスラム教に対して怖いというイメージを持つ人が多い中で、24時間一緒に過ごすことで、本当はどういう宗教なのかを伝えることができた』と話してもらったこともあります。ゲストとホスト双方に相互理解の場になっているのだと感じています。
■学校・自治体・企業との連携でプログラムを広げる
——学校や自治体、企業と連携しています。どのように進めているのですか。
背景に、グローバル人材育成に力を入れる自治体が増えているということがあります。私たちの強みは海外とのネットワークと自社開発のプログラムにありますので、各自治体の地域の魅力や課題解決について子どもたちが英語で発信できるようなかたちにアレンジして提案しています。
連携のきっかけは、東京都や区のスタートアップ支援の仕組みを活用したことが大きかったです。そういった場にはさまざまな企業や大使館関係者も集まるので、そこからつながりが広がっていきました。(中略)
■2030年までに500万人の子どもたちへ
——今後はどのように展開していきますか。
国内では、関東での成功事例をもとに、地域を問わず全国に国際交流の機会を広げていきたいと考えています。(中略)
目標として、2030年までに国内500万人の子どもたちに国際交流を提供することを掲げています。(中略)
海外留学はコストが高く、恵まれた環境、十分な時間のある人、公費プログラム等に選抜される成績優秀者など、一部の人しか享受できていません。通常の英語授業に関心のある子と、実際に海外留学に行ける子との間には大きなギャップがある。そのギャップを埋めていくことが、私たちの役割だと思っています。」
かなり長々と引用しましたが、中高生を主要なターゲットとしている点を除けば、いわゆる「国際交流シェアハウス」に近い目的・運営方針ではないかと思われます。シェアハウスという業態が完全に日本に定着し、当初の中心的な入居者層であった20代から40代の日本人の人口が減少の一途をたどっている今、他の年齢層や他国籍の入居者受け入れは、シェアハウス大家さんにとって避けては通れないテーマとなってきています。国際情勢がかつてないほど緊張の度合いを高めている昨今だからこそ、民間レベルの草の根活動であっても、こうした取り組みの重要性は増しているのではないでしょうか。

続いて、不動産情報サイト『健美家』の「不動産投資コラム」のコーナーに6月29日付で掲載された「外国人シェアハウス投資、改装デザインとオープンまでの道のり編」( https://www.kenbiya.com/ar/cl/fusimi/47.html )をご紹介しておきます。同コラムは「外国人賃貸大家の会」代表を務める谷浩氏による連載コラムの第47話になります。具体的な内容は上記リンク先をご参照いただくとして――「第47話」とあるように、同氏は過去数年にわたって同コラムを連載されており、リンク先からはバックナンバーをたどることができます。見出しをご覧になって、興味を惹かれた回があれば併せてお読みになるとよいでしょう。

もう一本、「株式会社ジャフプラザ、外国人材・留学生の“住まいの受け皿”を大阪圏で強化」( https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000114156.html )というプレスリリースもご紹介しておきましょう。こちらは国際交流シェアハウスを運営する株式会社ジャフプラザが7月14日付で発信したもので、「『住まい』を起点として外国人材・留学生・企業・地域社会をつなぐ新ブランド『HUBシリーズ』始動」についての告知になります。これについても、詳細は上記リンク先をご参照ください。

昨秋の高市政権発足以来、日本国内における外国人に対する風向きが変わってきたことを実感している方は少なくないものと思われます。いささかデリケートな問題を含むため、声高に議論するのを避けたがる風潮があるのは、無理からぬことかもしれませんが……こんな時代だからこそ、諸外国との融和・協調が求められていることもまた事実です。市井の庶民にできることなどたかが知れていますが、それでも、「何かせずにはいられない」と考えている方は大勢いらっしゃるはずです。「国際交流」という大それたテーマについても、一人ひとりがそれぞれの身の丈に合わせて、できることから手を付けてみてはいかがでしょうか。
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