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第115回 防災とシェアハウス

気象庁の発表によれば、8月15日早朝、台風7号が和歌山県潮岬付近に上陸しました。この台風7号といい、ひとつ前に日本に接近した台風6号といい、常になく「移動速度が遅い」ことが指摘されており、発生が確認されてから日本列島近辺を離れるまでにかなりの日数がかかっています。この原因について、気象庁では「台風は自力で動くことができず、太平洋高気圧の縁にある空気の流れで北上している。この空気の流れは、上空を吹く強い風が生み出しているのだが、夏場のこの時期には、日本列島よりも北に位置しているため、台風は強い風の流れに乗れず、動きが遅くなっているということです。今回の台風は特に「雨」に注意が必要だと言われ、紀伊半島で24時間の降雨量が500?を超えたのをはじめ、西日本各地で記録的な降雨量が観測されており、厳重な警戒が呼びかけられています。また、折しもお盆休み明けのUターンラッシュの時期ですが、新幹線および在来線の一部、国内航空便の一部などで計画運休や欠航が相次ぎ、各地で混乱が広がっています。こうした中で、関東甲信越地方では今のところ比較的台風の影響が少ないようですが、今後、線状降水帯(次々と発生する積乱雲が列をなし、同じ場所を通過・停滞することで、線状に伸びた地域に大雨を降らせるもの)が発生する可能性もあると警告されており、他人事と安心しているわけにはいかないようです。

さて、台風と並んで、昔から我が国に甚大な被害をもたらしてきた自然災害といえば「地震」です。来たる9月1日は、大正12年(1923年)の「関東大震災」からちょうど100年目となります。これを機として、改めて「防災」というテーマが注目されつつありますが、その一環として、パナソニックホームズ(株)が8月10日付で発表した「関東大震災から100年。いま改めて考える防災対策。『家は防災上一番身近で大切なのに忘れられている。』ことが明らかに〜街頭インタビューや意識調査から、大半が 『家の耐震補強』」などの対策を意識せず〜」( https://homes.panasonic.com/company/news/release/2023/pdf/0810.pdf )というプレスリリースの紹介から始めましょう。「関東大震災から100年」ということを受けて、同社は2023年7月、街頭インタビューやWEBを通じて「住まいの防災」に関する取り組みについて生活者意識調査を実施したといいます。これによると、「日常生活において防災を意識しているか」という問いには、56.7%が「している」と回答しましたが、そのうち「家の耐震補強」を実践できている人は36.6%にとどまっています。「防災と聞いたときにイメージするもの」については、5つの選択肢の中で「食料・水の備蓄の確保」が42.7%で第1位となったのに対して、「住宅の耐震補強」という回答は第4位でわずか6.8%に止まりました。
また、街頭インタビューは、災害時に被災規模が大きくなりやすい木造住宅密集地域がある品川区戸越地区で実施されましたが、「あなたの防災対策、おしえてください。」というテーマで話を聞いたところ、「家」と回答した人は45人中1人しかいなかったということです。
これらの調査結果から、同社では、「生活者は、防災対策において『備品・食飲料の準備』や『避難』に関する意識は高いものの、生命や財産を守る基盤となる『住まい』はさほど重要視されていない」と分析しています。
なお、同社ではこの調査結果の発表と合わせて、「[関東大震災から100年]毎日と、万一の安心がつづく『大丈夫』な住まいと街づくり」( https://homes.panasonic.com/live/web-seminar/ )と題するWEBイベントを開催するとのこと。具体的には、来たる9月3日の日曜日の[10:00〜][15:00〜][20:00〜]の3回、各60分間の視聴無料のオンライン配信を行う――というもののようです。配信内容は3回ともすべて同じということですから、ご興味のある方は、ご都合の良い配信時間に視聴されてはいかがでしょうか。

続いてご紹介するのは、(株)NTTドコモの運営するニュースサイト『dメニューニュース』に掲載された「県営住宅への学生入居 高齢化進む町内の活性化図る“シェアハウス”も可」( https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/mro/region/mro-654319 )という記事。こちらは『MRO北陸放送』の番組で8月9日に放送されたニュース。短いモノなので全文を引用いたします。
「高齢化による自治会活動の人手不足を解消するため、学生に県営住宅へ入居してもらう石川県内初の取り組みが始まります。
9日は抽選会と説明会が開かれ、金沢市の平和町団地の2部屋に入居する学生が決まりました。間取りは3DKで家賃は2万4600円、最大3人でシェアハウスすることも可能だということです。地元の住民も、町内の活性化に期待を寄せます。
『お孫さんくらいの子らと少しでも会話があると楽しい』(近所に住む高齢女性)
平和町連合町会協議会は今後、入居者と相談したうえで町会活動の一部を担ってもらう予定です。 (MRO北陸放送8/9〔水〕19:24)」
入居した学生側の声を取り上げていないなど、いろいろ片手落ちの報道ではありますが……この種の取り組みは、全国各地ですでに進められており、もっぱら良い評判ばかりが聴こえてきます。逆に言うと、スタート当初の「期待の声」は大きいものの、その後、取り組みの実効性を立証するデータなどが報告された例は寡聞にして知りません。とはいえ、明らかな失敗例の報告についても同様なので、この件についてはまだ「検証中」として判断を保留にしておくこととしましょう。

次にご紹介したいのが、8月8日に『テレビ西日本(TNC)』で放送された報道番組を紹介する『FNNプライムオンライン』の「『にゃあ〜』お出迎えは“モフモフ” 実は社会問題解決の糸口に ちょっと変わったシェアハウスが福岡にオープン』( https://www.fnn.jp/articles/-/570130 )という記事について。以下、一部抜粋して引用します。
「福岡・篠栗町のとある古民家。室内はリノベーションされていて、和モダンな空間が広がる。この一軒家は2023年7月にオープンしたばかりのシェアハウスなのだが…出迎えてくれたのは、尻尾までフワフワな毛並みの『ネコ』だった。
(中略)
篠栗町の『ねこ長屋』は、家具付き物件のようにネコが物件に付いている、ちょっと変わったシェアハウス。
共用部であるリビングの壁にはキャットウォークが設置されていたり、床の間が爪とぎになっていたりと、ネコたちがのびのびと暮らせる工夫がちりばめられている。
(中略)
『ねこ長屋』の入居者第1号の岩瀬さん。ネコ2匹と暮らし始めて半月がたった。入居の決め手は、やはり『ネコ』だった。
(中略)
大阪から福岡への転勤を機にネコを飼うことを決めていたという岩瀬さん。しかし、1人暮らしでは留守番をさせてしまう時間が長くなるため思い悩んでいたところ、この『ねこ長屋』を見つけ、すぐに入居を決めたと話す。
(中略)
現在入居者は岩瀬さんしかいないため、エサやりやトイレ掃除など毎日の世話を1人で行っているが、入居者が増えれば当番制になるという。
さらに、エサ代などネコに関わる費用は管理費に含まれていて、不動産会社が手配してくれるというのだ。
また、もうひとつネコ付きシェアハウスならではのメリットが。『こんにちは〜。おじゃまします』と訪れたのは、シェアハウスを管理している不動産会社のスタッフ。
(中略)
スタッフのサポートが手厚く、ネコが体調を崩した時の通院や予防接種などは管理会社が行ってくれるのも入居者にとっては安心できるポイントだ。
(中略)
ネコと暮らす体験ができる福岡初のシェアハウス。現在『ねこ長屋』は福岡市南区の大橋と篠栗の2カ所。家賃は5万2,000円〜とシェアハウスにしては高額だが、大橋の方は予約待ちになるほど人気だという。
この取り組み、実は2つの社会問題を解決に導くシェアハウスなのだ。
(中略)
環境省によると、令和3年度のネコの殺処分件数は約1万2,000件。『ねこ長屋』では多頭飼育崩壊で行き場の無くなったネコや保健所に保護されたネコなどを引き取ることで、殺処分される頭数を1匹でも減らそうというのだ。
そして、もうひとつ。
(中略)
福岡県内でも年々深刻化している空き家問題。住む人がおらず、使われていない空き家を買い取り、シェアハウスとして活用することで、地域の課題解決にもつなげていきたいと話す。
(中略)
ネコと人、双方にメリットがあるシェアハウス『ねこ長屋』。社会の課題を一挙に解決する施設として期待が集まる。
(テレビ西日本)(FNNプライムオンライン 2023年8月12日 土曜 午後0:30更新)」
なお、こちらのサイト( https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/tvnc/region/tvnc-18614 )では、5分弱の動画を視聴することもできるようです。「2つの社会問題を解決に導く」などと大上段に構えた紹介のわりには、案外あっさりと流している点は気になりますが、これはやはり、ネコという「アイコン」が極めてエモーショナルな部分に働きかけるためでしょう。端的に言えば、「社会問題」だの「解決」だのという硬質な表現より、「にゃあ〜」だの“モフモフ”だのというもの柔らかな表現のほうが人の心にストレートに訴えかける効果が高い――ということだと考えられます。

最後にもう1本、7月29日付の『朝日新聞デジタル』に掲載された坂田達郎記者の署名記事を紹介しておきます。「旧納豆工場に気鋭の建築家の知恵 商人の町にできた『マチスタヂオ』」( https://www.asahi.com/articles/ASR7X7QD3R6ZUZHB003.html )というタイトルです。以下、全文引用いたします。
「旧納豆工場を改装し、シェアオフィスとして使ったり、子どもたちが立ち寄ったりできる『マチスタヂオ』が山形県米沢市本町2丁目に誕生した。気鋭の若手建築家が設計し、商人町の雰囲気を生かして地域を元気にする『現場事務所』という位置づけだ。
 長く空き工場だった築50年以上の建物を、約2年半の歳月をかけて刷新した。
 鉄骨2階建て、延べ床面積約190平方メートル。1階部分は柱だけの開放的な空間『ピロティ』になっていて、バスの待合所、井戸端会議の場、登下校の小学生が立ち寄る所を想定する。水飲み場があり、イベントも開ける。
 2階はシェアオフィスになる。仕事用の30席やオンライン会議ブース、ミニキッチンがあり、まちづくり会社やデザイン事務所などが入居する。
 事業主は米沢市のリノベーション会社『アジリノ』。網代修社長(38)は6月29日にあった記念式典で、『増える空き家などの問題に危機感があり、建築で根本的な解決につなげられるのでは、と考えた』と経緯を紹介した。知り合った地元経営者や建築家らと一緒に取り組み、『子どもたちに素晴らしい米沢を残したい』と語った。
 周辺の旧町名は『東町(ひがしまち)』で、江戸時代は商人町として栄えた。城下町の名残をとどめる一方、若手経営者らは『まちの個性が失われつつある』とまちづくり会社『ウコギ社』を設立。まちの将来像を考える官民連携の『東町プラットフォーム』も発足した。山形大学工学部建築・デザイン学科の学生らも加わり、学生のシェアハウスづくりを進めるなど知恵を出し合ってきた。
 設計を担当した増田信吾さん(41)は東京を拠点に建築家ユニット『増田信吾+大坪克亘』として活動し、建築家の登竜門『吉岡賞』や国際的な建築賞を受賞するなど注目を集める。2021年春ごろに初めて米沢を訪れ、網代さんら東町プラットフォームに集う人たちと意見を交わしてきた。
 増田さんは『この空き工場に魅力を感じ、まちをつくっていく人たちの工場になると考えた。鉄骨むき出しの倉庫、工場だったことを生かし、鉄骨のあずまやのようにした』と話す。
 床を少し高くし、2階に立つと窓から見下ろすように風景が見え、座ると山々が見わたせる。仕切りを動かすと用途に応じて室内を使うことができ、和室のようにも感じられる造りになっている。
 地元の東町上通り町内会長の小林秀一さん(75)は『昨年2月、空き家を利用したにぎわいづくりの構想を聞き、自治会も協力しようとなった。奇抜なデザインではなく、昔の情緒を残した街並みに合い、しっくりくる素晴らしい建物になった』と喜んだ。
(坂田達郎 2023年7月29日 10時45分)」
一読すればおわかりのように、この記事は直接的にはシェアハウスの紹介ではありません。登場するリノベーション施設は、用途としては複数の小規模事務所が入居する「シェアオフィス」を想定しているようですが、文中で紹介されている構造からすると、あえて無駄なスペースなども設けているようで、純粋なオフィス目的というよりは、人が集い、地域の活性化やまちづくりの場としての機能を持たせようという狙いが窺えます。事業主は空き家再生やシェアハウスづくりなどに参画した経験もあるそうですが……「気鋭の建築家」の試みが、必ずしも狙い通りの結果に結びつくとは限らない、というのは皆様もご存じの通り。もちろん、この試みが成功すれば、将来的に他の地域・他の用途物件などへの応用も大いに期待できますから、引き続き注目していきたいと思うのですが……。ただし、この種の「新たな取り組み」を紹介する記事に、「続報」が掲載されるケースはほとんどない――というのは、残念ながらまぎれもない事実です。これは「常に目新しい話題を提供する」ことにのみ価値を見出し、既報案件の追跡取材の価値を認めないマスコミの体質の問題でもあるのでしょうが――現実に、その取り組みの結果が「報道するほどの価値がない……」という例も少なくないようです。

逆に言えば、派手派手しいスタート直後の報道よりも、「その後、どうなっているのか?」という、実際にあるかどうかもわからない地味な続報にこそ注目する価値がある、と言うことができるでしょう。
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