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第122回 景気回復とシェアハウス2024

2月下旬から3月上旬にかけて、日経平均株価の上昇が伝えられています。2月22日にバブル最盛期の最高値を34年ぶりに更新したのを皮切りに、3月4日には初の終値4万円台を記録するほどの高水準。とはいえ、1日単位での下落幅も大きく、まさに「乱高下」と呼ぶにふさわしい激しい変動をくり返しています。日経平均株価は間違いなく景気判断の有力な指標のひとつですが、現在の「これ」が景気回復や日本経済の復興と素直に受け止められているかといえば、大いに疑問です。民間企業における賃金上昇の気運はたしかにあるようですが、それを上回る消費者物価の上昇により、生活苦を訴える声は日々あちこちから聞こえてきます。
参考までに、不動産における景気指標を見て見ると、3月11日に(公財)東日本不動産流通機構が発表した『月例速報Market Watch 2024年2月度』( http://www.reins.or.jp/pdf/trend/mw/mw_202402_summary.pdf )によれば、2024年2月の首都圏不動産流通市場動向は、首都圏中古(既存)マンション成約件数は9ヶ月連続の増加で前年同月比3.4%増。1平米当たりの平均成約単価は46ヶ月連続、1件当たりでは45ヶ月連続で上昇しているとのことです。同日、(公財)不動産流通推進センターが発表した全国の指定流通機構における『2024年2月の物件動向』( https://www.retpc.jp/wp-content/uploads/reins/bukken/bukken2402.pdf )でも、既存マンション平均成約価格、1平米当たりの平均単価ともに45ヶ月連続上昇となっていますから、物価上昇傾向はかなり根強いものがあります。折しも、確定申告の時期に当たり、インボイス制度のスタートによる消費税負担がいよいよ小規模事業者に対しても重くのしかかって参りました。シェアハウス大家さんを含む多くの人びとにとって、ますます生きづらい世の中になってきているのではないでしょうか。

さて、今月も直近のニュースから気になる話題をピックアップして参ります。まずは、3月13日付の『ananweb』に掲載された「毎晩騒音がストレスです…!【女性約200人調査】入居を後悔したNG物件エピソード3選」( https://ananweb.jp/soken/topics/research/537935/ )という記事。もう、このタイトルだけでも内容はあらかた想像がつきそうなものですが、一部抜粋して引用してみましょう。
「(前略)未知なる環境にワクワクがいっぱいの新しい物件での生活。しかし、なかには入居後に後悔ポイントを見つけてしまい、すぐにまた引っ越しをすることになってしまったというケースもあるようです。今回は、20〜30代の女性約200人が集まるanan総研メンバーに聞いた、住み始めてから後悔した物件のエピソードをご紹介します!
■シェアハウスで、他人の毛が気になって…
『普段の生活だとなかなか出会えない人とも知り合えて楽しそうだし、費用を抑える目的もあってシェアハウスに住み始めたのですが、私には合わなかったです。いままで家族としか住んだことがなかったので、他人の生活感を目の当たりにするのが嫌になってきて。たとえば誰かの髪の毛が落ちているのを見てゾッとしてしまったり…。結局すぐに引っ越しました』(32歳・会社員)
リビングやキッチン、洗濯機やお風呂などを他人と共有することも多いシェアハウス。家賃だけでなく光熱費など、さまざまな費用を抑えられたり、普段出会えない人と知り合いになれたりと魅力もたくさんありますよね。ただ、他人と一緒に生活するため、衛生面が気になるかたにとっては、きつく感じてしまう面もあるようです。また、ほかの居住者とタイミングが重なると洗濯機やキッチンが使えなかったりするなど、我慢が必要なことも。自分の性格を考えた上で選ばないと後悔してしまうこともあるので、住む前にはしっかりと検討が必要ですね。(後略)(文・オリ子)」
引用中の最初に出てきた「anan総研」というのは「ananの誌面で活躍する読者代表集団」とあり、20代前半から30代前半のさまざまな職業の女性とのこと。つまり、この文章を書いたオリ子氏とは素人ライターのようです。そのせいか、大きく間違ったことは書いていませんが、基本的に当たり障りのない内容で、記事というよりは感想文レベル。まあ、他人の抜け毛が気になるような人はシェアハウス暮らしに向いていないのは事実でしょうが……。

少し前の話になりますが、3月3日、フジテレビの番組『ザ・ノンフィクション』でシェアハウスを扱った内容が放送されました。同番組の内容はこちら( https://www.fujitv.co.jp/thenonfx/_basic/backnumber/index-216.html )をご参照いただくとして、この放送に関連して『集英社オンライン』で同編集部による次のような記事が掲載されました。「『ザ・ノンフィクション』ワケアリ格安シェアハウスを運営する人たちの無償の愛…山手線徒歩圏内、家賃3万4000円で電気・ガス・水道・Wi-Fi代込み」( https://shueisha.online/life/199224 )以下、全文を引用いたします。
「3月3日放送の『ザ・ノンフィクション 居場所をさがして 〜僕と家族とシェアハウス〜』では、居場所のない若者たちをサポートするシェアハウスが紹介される。都内で若者向け、家出人向け、ワケアリ向けなど、さまざまなシェアハウスを運営して彼らの生活を支援する人々の実態とは……。
■ワケアリシェアハウスの運営に携わる人の共通点
『ザ・ノンフィクション』では、都内4か所でシェアハウスを運営する荒井佑介さんらに密着した放送があった。
荒井さんは10代のころから周囲の人間関係で折り合いが悪く、家族の中にも居場所を見つけられずにいた経験を経て、自立支援を行うシェアハウスの運営を始めた。
東京都豊島区を中心に15歳から25歳くらいまでの若者をサポートするため、NPO法人サンカクシャ代表理事としてホームレス支援、子どもの貧困問題、若者支援などに取り組んでいる。荒井さんにシェアハウスを運営するうえでのやりがいを尋ねると、こんな言葉が返ってきた。
『今日、居場所がないという方たちをその日中に受け入れて、生活をサポートしていくことは、いますごく必要性を感じます。「安心できる場があってよかった」と落ち着いた表情をみせる若者たちを見ていると、やっぱりこういう活動をしていてよかったなと思います』
『ザ・ノンフィクション』では1月21日の放送回でも『家出人たちの家 〜人生をやり直すシェアハウス〜』で、別のシェアハウスとそのオーナーを特集して、居住者と向き合う献身的なオーナーの姿勢が『優しすぎる』と大きな反響を呼んでいた。
登場したのは、オカさんと呼ばれる男性。都内近郊に10か所、家出人を支援するためのシェアハウスをつくり、一人で運営している。なぜオカさんは家出人を支援するようになったのか。それは、荒井さんと同じように、自身の境遇が関係していた。
1977年、東京・勝どきで生まれたオカさんは、会社員の父親と幼稚園の先生の母親のもと、ごく一般的な家庭で育った。しかし、人付き合いが苦手で会社員にはなれない性格から、1996年、19歳のとき、株式投資をはじめ、それからトラック運転手、イベント運営など、さまざまな職を転々として生活していくことになった。
そして2020年、43歳の時に家出人向けのシェアハウスを立ち上げた。
オカさんは家出人たちのことを『僕と彼らは似てるんです』と話す。注意力散漫ですぐにミスをするし、飽きっぽい。それでも自分は家を失わず、彼らは失った。そこで、彼らにチャンスを与えるためにシェアハウスを立ち上げるに至ったのだ。
というのも、家出人が仕事に就けない大きな原因は、住民票が取れないことや連絡先がないため。シェアハウスではそうした事情もフォローしている。番組では、家出人たちを引き連れて、住民票の取り方をオカさんがレクチャーする様子も映し出された。
■家賃は相場の3分の1『3万4000円』
オカさんが運営するシェアハウスのひとつである、通称『駒込ハウス』は、駒込駅から徒歩10分ほどの場所にあり、家賃は相場の3分の1くらいである3万4000円。住民のプライベートスペースは2段ベッドのひとつだけではあるものの、電気・ガス・水道・Wi-Fi代込み。洗濯機もタダで使える。
そんなオカさんのもとには、ひっきりなしに入居希望の連絡が届き、不安な彼らに寄り添うためにも、即レスで対応する。
通常、入居の際には未成年の場合、必ず保護者の許可をとることを条件としている。また、家族構成から、所持金・貯金・借金額、ほかにも、これまでの仕事や辞めた理由、病歴、持病、反社との関わり、犯歴まで尋ねるが、それさえ教えてくれればオカさんは何も言わない。
『おまえらの味方だよ』というメッセージを送るために、日々、シェアハウスを回って住民たちとコミュニケーションをとっている。
オカさんや荒井さん、ワケアリ向けのシェアハウスが運営される裏側には、自身の経験を踏まえたうえでの、無償の愛がある」
記事中に登場するNPO法人サンカクシャについては、以前、別の記事で当コラムでも取り上げたことがあります。一歩間違えれば、いわゆる「貧困ビジネス」とも見做されかねない(ここでいう「貧困ビジネス」が、一種の必要悪として社会のセーフティーネットの一端を担っていることも否定し難い事実なのですが……)、いわばグレーゾーン領域の事業なのですが、番組中(および上記記事中)では単純に「美談」として取り扱われています。もちろん、仮にこれらのシェアハウスで今後、何らかの問題が発生したとすれば、たちまち手のひらを反すのがマスコミの常。シェアハウスの運営側としても、その点は百も承知で利用していることとは思いますが……。

続いてもう1本、NPO法人絡みの話題をご紹介しておきます。こちらは3月1日付の『タウンニュース 大和市版』に掲載された「シェアハウスが開業 母子や若者を支援」( https://www.townnews.co.jp/0401/2024/03/01/722569.html )という記事。短いものなので、これも全文を引用します。
「母子や若者のためのシェアハウス『CASA LALA MARINO』(福田3602の42)が2月18日に開業した。
 この施設は『楽しみや希望を持ち、一人ひとりが稀な個性で人生を乗り越えてほしい』という願いを込め、スペイン語を用いて名付けられた。
 休息や子どもの居場所としてのショートステイの役割を担うほか、シェアハウスとして、母子家庭や若者たちへ住まいを提供。家事や家族の世話などを日常的に行う子ども『ヤングケアラー』を含む、中学生以上の女性のための一時避難場所、小学生以下の預かりも行っている。さらに、地域の中の『みんなの家』になるよう親子サロンや子ども食堂を開くなど、施設の役割は多岐に渡る。
 管理者の相原洋子さん(55・福田在住)が、2021年7月にNPO法人ワーカーズ・コレクティブチャイルドケアによる子育て支援『ホームスタート』の講座を受け『子どもを支援できる場を作りたい』とシェアハウスの構想はスタートした。以降は同法人の永井圭子さん(64・つきみ野在住)と共同で準備し、オープンに至った。
 相原さんは『子どもや若者が自立するための、踏み台のような存在になれば。子どもや若者の不安を拭う場所にしたい』と話している」
記事に書かれているとおりであれば、どうも営利目的ではないようです。非営利事業としてのシェアハウスがどのような財政基盤のもとに成立しているのかは、この短い記事からは読み取れませんが、ワーカーズ・コレクティブチャイルドケアというNPO法人を通じて、国や自治体などからも援助を受けているのかもしれません。いずれにせよ、個人の善意や私財のみに頼った運営は永続きしないでしょうから、開業後なるべく早い段階で安定した収入源を確保しておくことが肝要でしょう。

その他、前月に引き続き、シェアハウス関連のプレスリリースをいくつか、タイトルのみご紹介しておきます。

「【新ブランド始動】500名を超える若者を輩出する株式会社アオイエが、3万円で住める格安シェアハウス『トーキョーロッヂ』をスタート」( https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000087455.html )(3月日 PR TIMESより)

「ジェクトワン、空き家事業『アキサポ』において神戸市灘区で約2年間空き家となっていた邸宅を中高年層向けシェアハウス『SolaSumika六甲』として再生!」( https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000083.000039551.html )(3月2日 PR TIMESより)

「小田原社中、起業を目指す学生向けに小田原市の築80年の古民家を活用した起業家シェアハウス『SHACHU HOUSE』を家賃/光熱費を無償提供」( https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000104675.html )(2月2日 PR TIMESより)

冒頭でも触れた通り、今や日経平均株価はバブル期に匹敵する、あるいは当時を超えるほどの高水準を示しております。にもかかわらず、今月もまた、目についた話題の多くが「(貧困や、家族関係・人間関係等により)住む場所に困っている人びとを支援するためのシェアハウス」に関する内容(最初に取り上げた『ananweb』の登場人物でさえ、シェアハウスへの入居理由に「費用を抑える目的もあって」と語っています)であったことにお気づきでしょうか。前回の当コラムのように、「生活困窮者」「高齢者」などのギリギリ切羽詰まった内容でこそないものの、あいかわらず「困った時のシェアハウス頼み」という世間の認識は変わっていないようです。もちろん、シェアハウスにそのような一面があることは紛れもない事実ではありますが、もう少し前向きな理由、「避難するためのシェルター」ではなく「積極的攻勢のための前進基地」としてのシェアハウス、という認識が世間に浸透してくるようでなければ、まだまだ本格的な景気回復には遠いように思われます。
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