不動産関連お役立ち情報  >  新・今月の不動産コラム  >  第121回 生活困窮者とシェアハウス
シェアハウス 能登半島地震 生活困窮者 要介護者 ホームホスピス 貧困

第121回 生活困窮者とシェアハウス

早いもので、元日の夕方に発生したあの能登半島地震からすでに1ヶ月半が過ぎました。被災地の復旧にはまだまだ時間がかかりそうですが、被害状況の調査については進展しており、徐々にその全容が明らかになってきたようです。2月13日14時時点の発表によれば、石川県内で241人の死亡(災害関連死含む)が確認されたほか、重軽傷者は1184人にのぼり、さらに11人が今なお安否不明となっています。また、県内515ヶ所の避難所に合計1万3215人もの避難者の方が引き続き不自由な避難所生活を強いられているとのこと。この間、積雪を伴う厳しい冷え込みもあり、被災地の皆様、災害復旧に従事されている自衛隊ほかの皆様の苦難がしのばれます。雪といえば、先日は東京23区でも最大8センチの積雪が観測され、大雪警報が発せられる騒ぎとなりましたが、その翌週には一転して気温が急上昇し、4月下旬並みの陽気に……。しかも、この次の週には一気に気温が下がるとの予報もあり、気温の乱高下から体調を崩される方が出てくることも懸念されます。被災地の皆様はもちろんのこと、その他の地域にお住まいの皆様も、くれぐれも体調管理にご留意ください。

さて、今月も、直近のニュースからシェアハウス大家さんに関心のありそうな話題をピックアップして参りましょう。まずは、2月10日付の『朝日新聞デジタル』に掲載された、次の記事をご紹介したいと思います。「奈良・三宅町、学生と企業の交流拠点に 磯城郡3町見直し案出そろう」( https://www.asahi.com/articles/ASS296X2LS29POMB009.html )という見出しで、机美鈴・阪田隼人両記者の取材による署名記事です。以下、全文を引用します。
「奈良県三宅町に県立工科大をつくる前知事の計画を凍結した山下真知事が9日、予定地の活用について新たな方針を示した。若者の生活拠点とスタートアップ企業が入る施設を建てるほか、研究に取り組む企業を誘致するという。磯城郡3町での大規模ハード整備事業『大和平野中央田園都市構想』の見直し案がすべて出そろったことになる。
 山下知事はこの日、三宅町の森田浩司町長と共同会見を開いた。同町石見地区(7・7ヘクタール)での計画は、『次世代を担う学生と企業のまち』を掲げ、若者向けのシェアハウス『ヤング・イノベーション・レジデンス』を県が設けるというもの。若者が生活しながら企業や起業家と交流できる『全く新しいタイプ』の施設として、定員100人ほどを想定する。
 県によると、国立奈良工業高専(大和郡山市)や奈良女子大(奈良市)では、寮の希望者が定員を上回っている状態で、周辺の高校や大学などを合わせて、100人を超えるニーズがあるとみている。
 山下知事は『県内企業は学生との日常的な交流を望んでいるが、接点がない。東京では色々な人と交流できるシェアハウスが人気だ。県で建設し、運営には民間のノウハウを採り入れたい』と話した。県内では進学や就職による県外流出が課題となっており、一定の歯止めの効果を期待しているという。
 三宅町では昨年7月、住民説明会を開いた際、『大学ができると思ったから土地を手放した』といった反発の声が相次いでいた。森田町長はこの日、『起業家育成事業をしている町で、地元の声を反映してもらった案だ。ただ、賛否はあると思う。丁寧な説明に努めたい』と話した。
 同町の元地権者の男性は取材に対し、『案はすばらしいが、周辺には店もなく、本当にできるか心配だ。絵に描いた餅にならないことを願う。知事自らの説明を聞きたい』と要望した。
『大和平野中央田園都市構想』は、荒井正吾前知事が3町と進めたまちづくりプロジェクトだった。当初は総事業費580億円を見込み、県立工科大の設置や国民スポーツ大会の施設整備を計画していた。
 一連の見直し案について、山下知事は『複数の企業が進出の意向を示すなど、成功の確率が高いと考えている。建設費も抑制できて費用対効果に優れ、疑問を差し挟む余地の少ない案だと思う』と強調した。(机美鈴、阪田隼人/2024年2月10日 10時30分更新)」
要するに、「県立大学をつくる代わりに、県立の若者向けシェアハウスをつくる」と言っているわけですから、土地を手放した元地権者の方が「納得のいく説明を聞きたい」と憤るのは無理もない話です。県知事は自画自賛しているようですが、記事中にもあるように「絵に描いた餅」にならなければいいのですが……。そしてもう一つ、当コラムとしては「果たして、県にシェアハウスを運営するノウハウはあるのか?」という点に疑問を呈したいと思います。おそらく、実際の運営面は外部の事業者に委託することになるだろうと思われますが、委託先の選考過程での不正や癒着、あるいは、正式にコンペを行うにしても予算だけ見ていい加減な事業者が落札するようなことになれば目も当てられません。かといって、当初の計画通り県立工科大学を創設していたとしても、それで成功していたかどうかは甚だ疑問ですが……。いずれにせよ、この試みが無残に失敗してシェアハウスのイメージダウンにつながるような事態にだけはなってほしくないものです。

続いて、2月8日付のやはり『朝日新聞デジタル』に掲載された「収入安定まで家賃免除も 就労目指す人へ家具付き住居、NPOが提供」( https://www.asahi.com/articles/ASS273S96S22PTIL00C.html )という記事。こちらは有料記事になっており、無料公開されている部分のみ引用します。
「生活困窮者を支援する大阪市西成区の認定NPO法人『釜ケ崎支援機構』が、就労をめざす人のために家具付きの住居を割安で提供している。利用者の多くが若者で、安定的に収入を得られるようになるまでの間、物心両面で支える。
 支援機構は2020年12月から、布団、テーブル、冷蔵庫、電子レンジ、調理器具などを備えたワンルームタイプの部屋の提供を始めた。西成区内で計22室を支援機構が借り上げ、月3万5千〜4万5千円(共益費込み)で利用者に貸し出している。
 一般的な賃貸物件のような敷金、礼金といった初期費用や審査は不要で、安定した収入を得られるようになるまでは支援機構が家賃を肩代わりする。
 現在の利用者の約6割が20代〜30代。自立を目標に、支援機構のスタッフが一緒に就職先を探したり、定期的な面談で生活が乱れないように支えたりする。当初は、コロナ禍で家や仕事を失った人を支えるために全国で募った寄付金などで部屋を借り上げて運営していたが、今は支援機構の財源で運営しているという。22年12月には若者向けのシェアハウスも開設した。
 事務局長の小林大悟さん(37)は『単身高齢者向けの住居支援はあっても、若者が利用可能な住居支援は全国的に少ない。持ち出しも多いが、利用者のニーズに合わせて自立をサポートしたい』と話す。(以下、有料記事に続く)(小若理恵/2024年2月8日 10時00分更新)」
こちらは小若理恵記者の署名記事になります。一読しておわかりのように、ここで紹介されている物件自体はシェアハウスではなく、同支援機構が「(別の場所では)シェアハウスも開設している」というだけの関連です。ただ、最低限の家具を揃えた賃貸物件を敷金・保証人なしで安く(一定期間の家賃免除込みで)貸し出しているということで、シェアハウス運営にも通じるノウハウを応用した取り組みとも言えるでしょう。主たる目的は社会貢献であり、「持ち出しも多い」と言っていることから大多数のシェアハウス大家さんとは相容れないスタンスだと思いますが、一番目の記事とは逆に、シェアハウスのイメージアップにもつながる取り組みではないでしょうか。

なお、『朝日新聞デジタル』からはもう1本、「介護が必要な人のためのシェアハウス 『ホームホスピス』での最期」( https://www.asahi.com/articles/ASS1Z6QFCS1WUCVL012.html )という記事をご紹介しておきたいと思います。こちらは「それぞれの最終楽章」というシリーズタイトルを冠した連載記事中の1本で、やはり有料記事であり、じつのところ、無料公開部分だけ読んでもよくわからないかもしれませんが、ひとまず引用します。
「もう一つの我が家で(1)
ホームホスピス『われもこう』代表 竹熊千晶さん
みなさんは、『ホームホスピス』をご存じですか? 病気や障害などで自宅での生活を続けることが困難な方々が、24時間の見守りとケアを受けながら、安心して暮らせる『もう一つの我が家』です。宮崎県で始まり、いまは全国に広がっています。
 私は、2010年から、熊本市内で『われもこう』というホームホスピスを2カ所運営しています。『われもこう薬師』と『われもこう新大江』です。
 われもこうは、『我もこうありたい』との意味で名付けられたという山野に咲く赤い小さな花です。一人ひとりの命が、その人の暮らしの中で、最期まで大事にされることを願って始めました。(以下、有料記事に続く)(2024年2月4日 9時00分更新)」
この通り、無料公開部分はホームホスピスの代表者の方の自己紹介のみで終わっており、具体的な内容は何もわかりません。それをわざわざ当コラムで取り上げたのは、まさにこの先、有料記事の部分になかなか興味深い内容が語られているからです。残念ながら、ここで引用することはできませんが、記事タイトルで匂わせているように、要介護となった方を受け入れ、その最期を看取る施設としてシェアハウスのシステムを活用する……といった試みです。もし興味をお持ちの方は、上記リンク先から元記事へ飛び、有料記事を購読されるのもよいでしょう(なお、登録後一ヶ月間は無料で購読できます。無料期間中に解約しても料金はかかりません)。

その他、直近のプレスリリースや企業紹介記事の中から、いくつか目についたものを、タイトルのみ列記しておきます。

「京都発! ShuJu不動産が若者の自立支援プロジェクトを開始:不動産ベンチャーが『若者の貧困』問題に挑む」( https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000134120.html )(2月2日 PR TIMESより)

「あの選手村跡地のHARUMI FLAGにシェアハウス登場!共用施設の充実ぶりに驚き!?見学会へ潜入」( https://suumo.jp/journal/2024/02/01/200601/ )(2月1日 SUUMOジャーナルより)

「株式会社HABING、重症心身障害者・医療的ケア対応シェアハウス『IDEAL千歳船橋』2024年5月オープン」( https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000133607.html )(1月31日 PR TIMESより)

今回取り上げた話題のうち、一番目の記事を除けば、ほとんどが「生活困窮者支援のためのシェアハウス等の住宅施設」に関する話題となっています。若年失業者や高齢者、要介護者など、いわゆる社会的弱者の方が安心して暮らすことのできる住まいというものがこれだけ注目されているということは、逆説的に言えば、そういう人びとがいかに世の中に増えているか、という証明でもあります。言うまでもなく、能登半島地震の被災者の方もまたしかりです。もちろん、シェアハウス大家さんは正義の味方でもあしながおじさんでもありませんが、「世のため人のために、自分にできることがあれば、何かしら役に立ちたい」という思いは、多くの人の心に眠っているのではないでしょうか。無理をしない範囲で、今の自分にできることが何かないか、考えてみるのにいい機会かもしれません。
前
第122回 景気回復とシェアハウス2024
カテゴリートップ
新・今月の不動産コラム
次
第120回 震災とシェアハウス2024

ログイン

ユーザー名:

パスワード:


パスワード紛失


シェアハウス大家さん
倶楽部(無料)

シェアハウスで不動産投資に踏み出すサラリーマンやOLの皆様を応援する会員制プログラムです。ご登録いただくと各種不動産投資情報やサービスを無料提供致します。
入会申込(無料)