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第119回 プレスリリースとシェアハウスその2

12月14日に行われた記者会見で、岸田文雄首相は、安倍派の政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑を受けて、安倍派の4人の閣僚に対する更迭人事を行い、松野官房長官の後任には岸田派の座長を務める林芳正前外相、西村経産相の後任に斎藤健前法相、宮下農水相の後任に坂本哲志元地方創生相、鈴木総務相の後任に松本剛明前総務相を起用することを発表しました。岸田首相はこれに続いて、安倍派の副大臣の更迭人事にも着手するとのこと。この会見の冒頭、岸田首相は次のように述べています。
「先送りできない課題への取り組みは、政治の安定があればこそ進展してきました。国民の信頼なくして政治の安定はありません。(中略)。国民の信頼回復のために『火の玉』となって、自民党の先頭に立ち、取り組んでまいります。国民の皆さんのご理解をお願い申し上げます」
さらに、この「火の玉」という言葉の真意を問われると、「この状況に対する強い危機感を総理総裁である私こそ最も強く感じている。そういった思いを込めさせいただいた」と答えています。思い返せば、今年年頭の「異次元の少子化対策」をはじめ、岸田首相の発言は「内容を伴わない、空虚な大言壮語」をもてあそぶ傾向が目立ち、今回の「火の玉」発言にしても、ネット上では「『火だるま』の間違いではないか?」などと揶揄する声も聞かれます。すでに内閣不支持率が7割を超えている現状において、政権に対する国民の信頼は、小手先の内閣改造程度ではとうてい回復できないところまで来ているということに、岸田首相はいつ気づくのでしょうか……。

と、まあ、政治の話題はこれくらいにして――今月もシェアハウスおよび不動産関連の直近のニュースの中からいくつか気になる話題を紹介していきましょう。まずは、10月度の当コラムでご紹介した、「DAO型シェアハウス」の続報になります。簡単におさらいしておくと、DAO型シェアハウスというのは、ハウスの実際の入居者以外のメンバーが多数参加するコミュニティ(分散型自律組織)によって運営されるシェアハウスのことで、入居者にとっては「ハウスの業務をすれば家賃が軽減される」、入居者以外のメンバーにとっては「提供した労働の成果に対して報酬が支払われる」、そして物件オーナーや管理会社にとっては「シェアハウス運営に関わる手間や人件費を軽減できる」という、三方にとってメリットのある仕組みになっています。この手法で2022年12月に東京・新宿区神楽坂にオープンした「Roopt DAO(Roopt DAO神楽坂)」は、翌2023年9月にかけて、管理会社(=巻組)の人件費や外注費を大幅に低減しただけでなく、DAOの魅力によって入居者の定着率が高まり、売上も約1.7倍に上がった……というところまでが以前のコラムで紹介した内容になります。
12月11日付のプレスリリースによれば、この「Roopt DAO神楽坂」を運営している株式会社巻組(空き家活用のシェアハウスで若者のU・Iターンを創出)と株式会社ガイアックス(分散型自律組織「DAO」のコンサルティング・実務支援を提供)の両社は、2024年1月中旬に宮城県石巻市に新拠点をオープンするとのことです。「DAOが人手不足・採用難を解決!巻組シェアハウスの宮城県石巻拠点が2024年1月にオープン〜2024年問題をDAO内の自律的取り組みで克服へ〜」( https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000599.000003955.html )と題するプレスリリースの中で、巻組は以下に抜粋・引用するようにコメントしています。
「(前略)2030年には2,000万軒を超えると推測される空き家は、固定資産税・維持管理費の面から所有者の悩みの種となっている遊休資産です。絶望的条件の空き家を魅力的な場へとリノベーションし、シェアハウスとして運営する巻組には、年間約50件の空き家の相談があります。
巻組は物件を買い取り、改修しますが、人手不足により、2023年に10件程度を購入した一方で、改修は現状年間5件程度となっています。
DAOメンバーによる改修やDAOによる新しいシェアハウス運営は、いっそうの人手不足に悩む地方にとって好機となりうると考えています。(後略)」
以前も申し上げた通り、これは当事者自身の発表ですから、書かれている内容のすべてを鵜呑みにするわけにはいかないでしょうが、DAOという新たな仕組みの可能性については引き続き検証していく価値があるのではないかと思われます。

続いて、これも以前当コラムで紹介したことがある事例(ただし、当時は団体名など具体的な内容には触れておりません)に関連する話題となりますが、特定非営利活動法人サンカクシャは12月7日、次のようなプレスリリースを発信しています。
「帰る家がない若者の再スタートをサポートする居住支援を拡充 〜新規にシェアハウス1件、個室シェルター2室を開設〜」( https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000082439.html
以下、抜粋して引用します。
「特定非営利活動法人サンカクシャ(中略)は、この度 、様々な事情により帰る家を失った若者が自分の住まいを確保し、新しい生活をスタートするためのシェアハウス1件および個室のシェルター2室を開設し、入居者の受け入れを開始しました。(中略)
親や身近な大人を頼れない若者に、『居場所』『住まい』『仕事』の3つを柱とした支援を提供しているサンカクシャでは、都内で家を失った若者のためのシェアハウス『サンカクハウス』3箇所(13室)および賃貸アパートの借り上げによる個室のシェルター5室を運営してきました。今回のシェアハウスおよびシェルターの新設により、シェアハウス4箇所(17室)、シェルター(7室)の体制となりました。
サンカクシャでは、公的機関からの紹介やSNS等を通じた問い合わせで繋がった困窮した若者の支援を行っていますが、新規の相談件数が昨年度の倍以上に増えています。そのため既存のシェアハウス、シェルターは満室状態が続き、新規の若者の住まいの確保が困難になっていたことから、今回シェアハウスおよびシェルターを新設しました。今後もより多くの若者をサポートするためにシェアハウス、シェルター共に増やしていく予定です。(中略)
居住支援担当スタッフが個々の若者の状況や希望を確認し、居場所や就労支援担当のスタッフと協働して、若者が安心できる住まいと居場所を確保しながら仕事の経験を積み、自立に向かっていけるよう包括的な支援を行っていきます。1年から1年半で自分で家を借りて一人暮らしができることを目標にしています。また、シェアハウス、シェルター退去後も、安定した生活ができるように継続的にサポートを提供します」
前出のDAO型シェアハウスにしろ、この自立支援シェアハウス&シェルターにしろ、現状ではまだまだ実績が乏しいものの、当コラムで以前取り上げた時点からは着実に一歩前進していると言えるでしょう。今後、どこまで存続・発展していくかはそれぞれの努力次第だと言えますが、参考事例として今のうちから注目しておいて損はないと思われます。

もう1本、こちらもプレスリリースですが、12月4日付で次のような話題が発信されています。
「メットライフ財団×日本財団 高齢者・子どもの豊かな居場所プログラム 高齢者シェアハウス『ひとのえき ほのぼの』開所」( https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000449.000005541.html
「特定非営利活動法人ほのぼのステーションが運営する『メットライフ財団支援 ひとのえき ほのぼの』は、堺市に新たに開所された高齢者シェアハウスです。様々な理由で自宅での生活を続けることが困難な方々に、住み慣れた地域で家庭的な環境のもと、各自の意思を尊重した生活スタイルで暮らせる場を提供します。3名までの高齢者と、福祉等を専攻する地元の学生等1名を入居者として受け入れ、若者がサポートに入る独自の取り組みも予定しています。また、万が一に備えて、ボランティアやヘルパーのケアを提供する他、デイサービスや訪問看護といった既存の地域サービスも活用し、安心して暮らせる環境を整えています。さらに、シェアハウスならではの『交流』という特徴をいかし、地域の人々が集う機会を提供していきます。本施設の利用開始は12月4日(月)です。
『メットライフ財団×日本財団 高齢者・子どもの豊かな居場所プログラム』は、人生の最期を豊かに暮らすための高齢者ための施設と困難な状況にある子どものための施設『子ども第三の居場所』の開設を通して、豊かな地域社会の創造に寄与するものです。また、メットライフ生命の社員は、日本財団が展開する全国の高齢者および子ども向け施設におけるボランティア活動を通じて、豊かな地域社会づくりに貢献して参ります。超高齢社会と子どもの課題に取り組むことで、誰一人取り残さない持続可能な社会の構築を目指します。」
一読しておわかりのように、これは施設の開所当日に発信されたもので、当コラムの更新日時点でまだ10日ほどしか経過しておりません。したがって、実績はほぼゼロに等しく、海のものとも山のものともつかない状況ですが――以前、まったく別の団体による取り組みとして、当コラムでご紹介したことのある事例と、コンセプトは共通していると思います。こちらも、今後の続報を待ちながら注目していきたい新たな取り組みと言えるでしょう。

今月はめぼしいニュース(第三者視点による客観的な報道)が見当たらず、当事者発表によるプレスリリースばかりとなってしまいましたが、それぞれの内容は、シェアハウス大家さんにとって参考になることが少なくなかったと思われます。この2023年という年は、3年余も続いたコロナ禍を経て(現実には、今なお完全終息したとは言えない状況ではありますが)、ようやく経済活動が活発化の兆しが見えてきた一方で、海外では戦火が収まらず、国内でも相次ぐ増税と物価高騰により、国民の生活は日に日に苦しいものとなってきています。また、年末年始は暦の都合でかなり慌ただしいものとなりそうですが――来たるべき2024年をどのような年とするかは、私たち一人ひとりの日々の努力と工夫改善の積み重ねにかかっています。読者の皆様におかれましては、くれぐれも健康にご留意の上、良いお年をお迎えください。
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