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9月13日、岸田総理は内閣改造を行い、皇居での新閣僚の認証式を経て、「第2次岸田第2次改造内閣」(くどいネーミングですが、公式です)が正式に発足しました。今回の内閣改造では、初入閣となる閣僚が11人、再入閣の閣僚経験者が2人、女性の入閣が過去最多タイの5人と、一見して大きく顔ぶれが変わったように見えますが……その反面、留任となった6人は斉藤鉄夫国土交通大臣をはじめ、鈴木俊一財務大臣・西村康稔経済産業大臣・高市早苗経済安全保障担当大臣・河野太郎デジタル大臣兼デジタル行財政改革担当大臣・松野博一官房長官と、経済・財政分野の中核を担う閣僚はほぼ同じ顔ぶれのまま。もちろん、財政政策は政権の基本中の基本方針ですから、そう簡単にブレるようなことがあってはならない――ということはよくわかります。しかし、現に今、岸田政権が推進中の景気対策が「奏功している」というのであればともかく、残念ながらその兆しも見えないという状況です。思えば、年頭に鳴り物入りで打ち出した「異次元の……」ナントヤラは、今や耳にする機会もほとんどなくなりました。今回の内閣改造について、岸田総理は「『あすはきょうよりも良くなる』と誰もが感じられるよう、政策を進めていきたい」とコメントしているそうですが、あいかわらず具体性を欠いた言葉選びに、空虚さを覚えずにはいられません。
さて――気を取り直して、今月も直近のニュースの中から目についた話題をピックアップして参りましょう。まずは、9月14日に(株)長谷工アーベストが発表した、首都圏の「住みたい街(駅)ランキング2023」(
https://www.haseko-urbest.com/assets/20230914_ranking_syuto_1.pdf )について。これは、2023年7月15〜20日の間に実施されたWebによるアンケート調査で、有効回答数は2,854件となります。これによると、首都圏総合ランキングトップ3は、1位が「横浜」(前年2位)、2位が「吉祥寺」(同1位)、3位が「大宮」(同4位)となりました。このように、上位陣については前年から大きな変動は見られませんでしたが、前年比で急浮上してきた街(駅)としては、6位の「武蔵小杉」(同20位圏外)、8位の「川崎」(同16位)および「調布」(同20位圏外)などがありました。同社ではこれらについて「23区に隣接する郊外中核の街(駅)」とカテゴライズしており、「都心・通勤アクセスの良さ」や「商業施設の充実」等が評価されたことが大幅なランクアップにつながったと分析しています。特に、20位圏外からトップ5まであと一歩と迫った「武蔵小杉」については、「交通利便性・生活利便性の高さ」に加え、「相鉄・東急直通線開業により、利便性が良くなった」「防災の見直しが進んでいる」等の声が聞かれたとのことです。このほか、20位圏外からの急浮上組としては16位の「千葉」および「町田」、そして初めて20位に喰い込んだ「橋本」などが注目されています。「橋本」については、「2027年のリニア駅開業に向け、駅前のマンションやビルの建設が進んでおり、今後の街の発展への期待感が高まっている」と分析しています。上位人気の街(駅)に関しては、今後、物件価格のさらなる上昇も予測されますから、新規取得をお考えの方にとっては苦々しい話ですが、お手持ちの物件の売却をお考えの方にとっては、“売り時”の見極めをつけるのに良い頃合いかもしれません。
続いて、9月12日付で三菱UFJ信託銀行(株)が発表した「2023年度上期 デベロッパー調査(首都圏マンション・戸建)」(
https://www.tr.mufg.jp/houjin/fudousan/f_report/pdf/fr_2023091101.pdf?20230914131222 )の話題です。こちらは、同社がデベロッパーを対象に「販売・仕入れ状況」や「相場観」についてのアンケート調査を7月末時点で実施し、マンションデベロッパー26社、戸建デベロッパー11社からの回答をまとめたものです。まず、販売価格の実績と予想について、現在の売値を「100」とすると、1年後の予想は、マンションでは6,000万円以上が「108.3」、6,000万円未満が「107.7」となっており、価格上昇が継続すると見込まれています。これに対して、戸建てでは6,000万円以上が「96.0」、6,000万円未満が「100.4」となり、価格低下・横ばいと見込まれています。売れ行き好調の価格帯については、マンションではすべてのエリアで価格帯・平均価格の上昇が見られ、とりわけ「都心6区(千代田区・中央区・港区・渋谷区・新宿区・文京区)」および「その他23区」が好調でした。一方、戸建市場については、「世田谷区等」「練馬区等」では価格帯・平均価格の上昇が見られたものの、「都区部周辺」「郊外」では逆に下落が見られています。また、素地価格(不動産鑑定士や不動産売買取引業者の間で用いられる業界用語で、農地や山林状態の土地の価格のこと)を半年前と比較したところ、マンションではすべてのエリアで8割超が上昇したと回答しており、都心に向かうほど価格上昇幅が大きくなっていました。さらに、半年後の予測については、「都心6区」「その他23区」で約7割、「都区部周辺」で6割、「郊外」で約5割が「上昇」と回答。なお、「郊外」については「下落」の割合も2割弱となっていました。一方、戸建については、半年前との比較で「上昇」と回答した割合は「世田谷区等」および「練馬区等」では半数以上、「都区部周辺」は4割、「郊外」では3割強にとどまりました。仕入れの進捗状況については、マンションでは86%、戸建では100%が「苦戦している」と回答しており、その理由については、第1に「用地価格が検討可能水準以上に高騰している」、第2に「用地情報が少ない」となっていました(マンション、戸建とも共通)。市場の懸念材料については、マンション市場では「資材価格・労務費の上昇」「金利水準の動向」「用地費の上昇」の順、戸建市場では「消費者の購入意欲の低下」「用地費の上昇」「資材価格・労務費の上昇」の順となっています。いずれにせよ、不動産オーナーから見て上流工程であるデベロッパーが仕入れに苦戦しているのであれば、それはダイレクトに不動産オーナーにも影響します。新しい物件取得に乗り出すには、残念ながら、今はあまり良い時期ではないかもしれません。
続いてご紹介するのは、同じ9月12日にローカル局「UTYテレビ山梨」の報道番組「UTYニュース」で放送された特集を、(株)NTTドコモが管理・運営するニュースサイト「dmenu」がまとめたものです。タイトルは「ひきこもり7割が40歳以上 当事者支援で情報交換会 空き家をシェアハウスに活用など 山梨」(
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/uty/region/uty-717309 )となっています。リンク先では、画像と合わせて本文テキストを読むことができますが、とりあえずテキストのみ抜粋して引用してみます。
「ひきこもり状態にある人の支援を考える情報交換会が開かれ、シェアハウスを活用した活動などが紹介されました。情報交換会は、山梨県が開いたもので、民間の支援団体や保健所などが参加し活動事例が報告されました。このうち、ひきこもりの経験がある男性が代表を務める支援団体は、北杜市の空き家をシェアハウスとして活用し、共同生活を通じて社会との関わりを取り戻すプログラムなどを紹介しました。(後略)」
一読しておわかりのように、ニュースの主題としては「官民協同によるひきこもり支援の取り組み」ということで、シェアハウスを用いた活動事例はそのほんの一部分でしかありませんが――シェアハウス大家さん側から見れば、これはこれで、シェアハウス運用における新たな用途・目的の一つとなる可能性もあるかもしれません。
次にご紹介するのは、(株)ユーという会社が発行する三重県のタウン誌『YOUよっかいち』の9月2日発行号に掲載された「障害者や高齢者に生きがい 古民家改築でシェアハウス事業 四日市市のイシズム」(
https://www.you-yokkaichi.com/2023/09/11/27083/ )という記事。以下、一部抜粋して引用します。
「障害者や高齢者らで、独居への不安や賃貸契約が困難な場合にも、生活を楽しんでほしいと、使用していない古民家を改修したシェアハウス『花鳥風月』が菰野町杉谷に、今年6月に完成した。四日市市高角町の介護や不動産を展開するイシズム株式会社(永石俊夫社長)の新たな事業で、三重県内では初の事例となり、国土交通省の『人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業』にも採択された。(中略)
物件の持ち主は、服部舞子さん。服部さんは、以前は生活していた自宅敷地内の建物が老朽化や使用していないことから、管理に頭を悩ませていた。しかし、自分が育ち、思いがたくさんある場所をどうにか生かしたいと考えたときに同社に相談。介護事業を手掛け、空き家問題にも貢献できないかと検討していた同社と、何かの形で思い出のある家を残したいと思っていた服部さんの思いが通じ、シェアハウス事業の実現へ動き出したという。(中略)
改修されたのは、1978年と86年に建てられ、使われなくなっていた平屋2棟。自然豊かな場所で楽しく穏やかな暮らしをしてほしいと『花鳥風月』と名付けられた。(中略)
シェアハウスにしたのは、家賃の低廉化もあるが、誰かと一緒に過ごすことで、『楽しく生きがいをもってほしい』との思いも込められている。今後は、敷地内に農作業などができる場所を作り、販売し収入を得ることできる仕組みを作る計画となっているそうで、『一緒に暮らし、働く意欲のある人は働くことができる。楽しく生活して喜び合える空間であってほしい』と永石社長は熱く語った。(後略)
(2023年9月2日発行 YOUよっかいち第223号)」
これは「障害者や高齢者である入居者同士が、敷地内で農作業などの仕事を共同でする」という取り組みですが、同じようなWin-Winの仕組みを「高齢者」と「学生」の間でつくろうというのが、次にご紹介する「高齢者介護施設に学生のシェアハウス 施設でバイトすると賃料が無料に 人との関わりを促すアイデア構造【広島発】」(
https://www.fnn.jp/articles/-/556916 )という事例。こちらは、(株)フジテレビジョンが運営する『FNNプライムオンライン』というサイトに7月15日に掲載されたものです。要するに、高齢者介護施設と学生向けのシェアハウスを同一の敷地内に建て、シェアハウスに入居する学生に対しては、「介護施設のアルバイトを月に12回以上することで、家賃などは無料となり、働いた分の給料が支払われる」という仕組みを用意した、ということのようです。やや古いニュースでもあり、詳しい内容について知りたい方は、上のリンク先に画像付きの本文テキストが掲載されております。ご参照ください。
最後にもう一つ、東京都が(一社)東京都マンション管理士会と共同で、来たる10月14日に開催する「東京都マンション管理・再生セミナー2023」(
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/09/11/documents/01_01.pdf )について。同セミナーは、「関東大震災から100年を契機に、自助・共助によるマンションの防災力の強化の取り組みの一つ」として、東京都マンション管理士会理事長の親泊哲氏、(一社)マンションリフォーム推進協議会技術士の村越 章氏らを講師に迎え、「マンション防災にもつながる管理計画の認定取得を目指そう!」、「マンションの防災対策の具体例」など全4講演を開催すると言います。定員は100名で参加費は無料ですが、事前予約が必要になります。詳しくは、上記リンク先にてご確認ください。
ところで……10月1日からはいよいよインボイス制度が開始されます。シェアハウス大家さん、またはアパート・マンションなども含めた賃貸住宅物件の不動産オーナーの場合、家賃は非課税なので原則としてインボイスの影響はないものと考えられますが、事務所・店舗などのテナント物件の場合、賃料が課税対象となるために大きな影響が出てくる恐れがあります。また、賃貸住宅であっても、個々の入居者に対して影響があれば、めぐり巡って大家さんへも影響が及ぶかもしれません。いずれにせよ、いざという時に慌てないよう、心の備えだけはしっかりとしておいたほうが良いでしょう。