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シェアハウス イラン大統領ヘリ墜落 ゼレンスキー 富大起業部 外国人留学生 住み開き はちとご文庫

第124回 活用事例とシェアハウス

日本時間の5月19日22時30分頃、イランのエブラヒム・ライシ大統領、ホセイン・アブドラヒアン外相らが乗った専用ヘリコプターが、イラン北西部の東アゼルバイジャン州の山中に「不時着したらしい」との第一報が入りました。翌20日朝には「墜落」と報じられ、昼過ぎには墜落機が発見されてライシ大統領・アブドラヒアン外相ともに死亡が確認されました。昨今、何かと物騒な中東情勢ですが、今回の一件についてはおそらくテロとは無関係で、純粋な?事故?である可能性が高いと推測されています(今後の状況次第で、変化するかもしれませんが)。ただし、目に見えない余波(?)は各方面へ及んでおり、たとえば20日午前には、同日来日予定だったサウジアラビアのムハンマド皇太子兼首相が急遽取りやめ(延期とも中止とも言われ、はっきりしません)となりました。これは、皇太子の父であるサルマン国王の体調不良が理由とされ、少なくとも表向きはイラン・ライシ大統領の?事故?の件とは無関係ということになっていますが、はたして……? 同じ20日には、ウクライナのゼレンスキー大統領が任期満了を迎えています。本来は3月に実施されるはずだった大統領選は「現状では選挙どころではない」として見送られ、ゼレンスキー大統領は任期延長を主張しているそうですが……。ロシアのプーチン政権や、ウクライナ国内の反ゼレンスキー勢力からは「憲法違反」との指摘もあり、今後、政権の正統性を問われる場面もありそうです。現在、戦時下にある国々で、国家元首クラスの重要人物の動向が報じられるのを耳にするにつけ、つくづくキナ臭い世の中になってきたものだと実感がこみあげてきます……。

さて、気を取り直して、今月も直近のシェアハウス関連の話題からいくつかピックアップして参りましょう。まずは5月15日、石川県金沢市に本社を置く地方紙『北國新聞』に掲載された「学生起業家集まれ 富大『起業部』がシェアハウスを開設 刺激し合い、相談の場に」( https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/hokkoku/region/hokkoku-20240515000954 )という記事から。以下、全文を引用いたします。
「富大のサークル『起業部』を設立した富大大学院生の岡田航明さん(25)が、富山市五福で学生の起業を応援する『大学生チャレンジシェアハウス』を開設した。学生が住まいを同じくすることにより、互いに刺激し合い、相談しやすい環境を整える。新たな居住者を募っており、志ある学生の輪を広げることで起業意識の浸透を図る。
 シェアハウスは、岡田さんと県内でシェアハウス事業を展開する『空家活(あきかつ)』(南砺市)代表の吉田大地さん(26)が運営する。富大五福キャンパスから徒歩3分の3階建てで、現在は岡田さんと教育学部3年の尾崎日紀(はるき)さん(21)、工学部3年の渡辺万丈(たかひろ)さん(20)の3人が暮らす。最大6人まで居住できるため、残り3人を学外からも募集している。
 起業家支援の取り組みについては、富山経済同友会など経済団体が学生や社会人を対象に新事業のアイデアを競う大会『スケッチオーディション』を開催してきた。こうした中、岡田さんは昨年4月に学生自らが起業を考えるサークル『起業部』を発足させ、毎週日曜にアントレプレナーシップ(起業家精神)を高める活動に取り組んできた。
 ただ、各部員のやりたいことが異なるためにスケジュールが合わないケースもあったという。居住空間を一緒にし、モチベーションの維持につなげようとシェアハウスを設けることにした。
 時間を問わずに起業の相談をし合うことで異なる視点を得られたり、仲間の紹介を経て人脈が広がったりとの利点がある。屋上の改良にも力を入れ、気楽に話せる場の構築を目指している。
 ライフプラン設計を支援する仕事を目指す尾崎さんは『話せる相手がいる安心感があり、不安が和らぐ』と話した。イベント企画に取り組む渡辺さんは『変化が多くて楽しい』と語った。(2024年5月15日5:00更新)」
一読しておわかりのように、これは一大学院生が県内の若手シェアハウス事業者と共同で立ち上げた、ごくごく小規模なサークル活動の拠点の話題です。「起業家支援」という真面目なテーマを掲げているものの、どちらかといえば「仲間内で集まって、ワイワイ楽しく暮らす」という学生ノリのニュアンスも感じられますが、「楽しく暮らす」ことそれ自体はシェアハウスの本来の目的にも叶うものです。今後、彼らの「起業部」がどのような実績を上げていくかは未知数ですが、地方都市を舞台にこのようなサークル活動が活性化していくようなら、地域における良き先例となっていくかもしれません。

同じ5月15日、NHKのローカルニュースでは大分県竹田市に新設された女性専用シェアハウスの話題を報じています。ただし、こちらは本文の引用不可となっているため、以下のリンク先の元記事をご参照ください。
「支え合いながら生活する女性専用のシェアハウス開設 竹田市」( https://www3.nhk.or.jp/lnews/oita/20240515/5070018441.html )という記事で、「身寄りのない独り暮らしの高齢女性やシングルマザーの親子」など、社会的な支援が必要な女性が、互いに支え合いながら生活する女性専用のシェアハウスとのことです。地方都市のシェアハウスというと、少し前までは都心部の流行の後追いのような形で、地方に器だけは用意したものの、中身が伴わない……といった事例も見かけたものですが、近年はさすがに、シェアハウス本来の目的意識や、その地方ならではの必然性を持って開設されることが多くなってきました。これも、居住文化としてのシェアハウスが日本に根付いてきた証拠の一つと言えるかもしれません。

次にご紹介するのは、『毎日新聞』記者の澤俊太郎氏が5月14日に発表した「大学出ても就職できず…困窮の外国人らを支援 神戸のシェアハウス( https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/mainichi/nation/mainichi-20240514k0000m040059000c )という署名記事。これも全文を引用しましょう。
「生活に困窮したり、住む場所がなくなったりした外国人を受け入れ、衣食住や就労の支援をするシェアハウスがある。公益財団法人PHD協会が運営する『みんなのいえ』(神戸市長田区)。2020年から続けているサポート活動で支援してきた外国人らは延べ1000人以上。同協会の坂西卓郎事務局長は『支援が行き届かない外国人にも、公平な機会を与えることが自分たちの役割だ』と話す。
 シェアハウスに入居するヨルダン出身のムハマド・アブ・ユーセフさん(38)は3月29日、同協会のスタッフと近くのスーパーに買い出しに向かった。前日に入居してきたばかり。『宗教の関係で豚は食べられない』『牛乳は必要か?』。スタッフと話し合いながら、食料をかごに入れていった。
 ムハマドさんは18年に留学生として来日。神戸大に入学し、有機化学を専攻した。24年3月に大学院を卒業したが就職活動は困難を極めた。多くの会社では面接を断られ、その理由も教えてもらえなかった。学生寮に住んでいたため、卒業したら退去しなければならない。『家を探しても初期費用が高く、働いていないと難しい。このままではホームレスになる』と危機感を抱いていた時、知人にこの施設を紹介された。
 施設では住む場所を提供し、フードバンクを活用した食料支援、貯金や自立を促すためにアルバイトを紹介するなどの就労支援もしている。ムハマドさんは2カ月間を目安に入居し、就職活動を続けるつもりという。『手を差し伸べられて、本当に助かった。自分も将来は人を助けたり、サポートしたりする仕事を日本でやりたい』と力を込める。
 PHD協会は1981年に設立。アジアや南太平洋地域から農業や保PDH健などについて学ぶ研修生を招くとともに、食や住まい、仕事などに困難を抱える在日外国人への支援をしてきた。難民の支援方法なども模索していた矢先、新型コロナウイルス禍で生活に困窮する外国人留学生などが増加。こうした事態を受けて、2020年10月にシェアハウスという形でサポートを開始した。3階建ての家で、最大9人が入居できる。衣食住のサポートのほか、共同生活の心得や掃除の指導などもする。
 入居の相談にはさまざまな事情を抱えた外国人が訪れる。困窮して家が借りられなかったり、パワハラを受けて逃げ出してきたりした技能実習生もいる。軽犯罪で警察に捕まったものの、帰る場所も家族もいないため、シェアハウスで引き取ったケースもあった。このシェアハウスでは、これまで21カ国、延べ1011人(23年12月末時点)の支援をしている。
 施設長を務める濱宏子さん(63)は『できることは限られているが、セーフティーネットとして手を差し伸べ続ける場所でありたい』と語った。(澤俊太郎/2024年5月14日15:00更新)」
以前、当コラム内で何度か指摘していますが、もともと『毎日新聞』はシェアハウスを「貧困問題」の落とし子として認識していた節があり、かつてはあまり好意的な論調でシェアハウスを取り上げることはありませんでした。とはいえ、さすがに近年ではその認識も変わってきたのでしょう。署名にある神戸支局の澤俊太郎氏は、プロフィールによれば2016年入社の若手記者。おそらく、そのような偏見とは無縁の世代なのでしょう。

そして、『毎日新聞』に比べてもともとシェアハウスに好意的なスタンスだったのが『朝日新聞』です。だから……というわけでもありませんが、5月6日付けの『朝日新聞デジタル』に掲載された「シェアハウスの本棚、地域の人が借りに来る文庫に 鍵は『住み開き』」( https://www.asahi.com/articles/ASS5541Y4S55UJHB018M.html )という記事を紹介いたします。こちらは、2015年入社の宮廻潤子氏による署名記事になります。
「シェアハウスに暮らす住人たちの本を詰め込んだ私設文庫が、いまや地域の人たちが交流する場になっている。板谷隼さん(29)は『本や人との交流で学び、利用者が何かに挑戦するのを後押しするような場にできたら』と語る。
 奈良県出身。筑波大に進学し、茨城との縁ができた。所属していたサッカー部では、部員が地域の子どもたちにサッカーを教える活動が盛ん。学生時代から、つくば市内の少年チームで子どもたちと交流した。
 大学院進学後は、部内で後輩の指導にも力を尽くした。『将来はサッカー選手の育成や普及に関わる仕事がしたい』と、2020年春からJ2水戸ホーリーホックの普及コーチとして働く。
 社会人生活のスタートは、新型コロナが世界中に流行し始めた時だった。スポーツも含め、社会活動は大きく制限されていた。サッカー以外でも人との関わりを持ちたくて参加した『朝活』がきっかけとなり、21年、水戸市内に『住み開き』のシェアハウスをオープンした。
 『住み開き』は、家の一部を地域に開くことで交流を生み出す活動のこと。ただ、住人以外がシェアハウスに入るハードルは高い。自身も暮らすシェアハウスの住人たちの本を集め、22年に『はちとご文庫』を始めた。末広がりの『八』と仲間の意味を持つ『伍』を組み合わせ、訪れる人それぞれに仲間ができる、地域に開かれた場所になるように、との願いを込めた。
 自慢の絵本コーナーには約200冊が並ぶ。利用者からの寄贈も含め、コツコツ集めた小説やエッセー集、漫画など、全体で約600冊まで増えた。
 図書館としての認識が徐々に広まり、年間延べ400〜500人が訪れる居場所になった。『本をパラパラめくっていたら、そこにいても不自然じゃないと思える』と、本がある場所の意味を感じている。『将来的には、学校に行きづらいと感じている子たちの居場所にもなればうれしい』
 手狭になったことから、昨年末、近所の古民家にシェアハウスごと移転。室内を改装し、文庫エリアのほかに仕事や勉強にも使えるシェアリビングを作るため、13日までクラウドファンディングを募っている。(後略)(宮廻潤子/2024年5月6日 10時45分更新)」
この記事では、私設図書館である「はちとご文庫」の紹介に主眼が置かれ、シェアハウス自体はいわば図書館の背景のようになってしまっていますが、これは宮廻氏の個人的趣味(プロフィールには「好きなことは絵本や食器集め」云々、とあります)が前面に出ているためでしょう。とはいえ、だからこそこのニュースをキャッチできたとも考えられます。もっとも、蔵書が600冊程度では、「図書館」と紹介するのはさすがに少々無理があると思われますが……。

今回取り上げた話題は、それぞれあまり共通性はないものの、全体としては「シェアハウス(という舞台装置)を使って、何かをしたい」という目的を持った人びとが、その目的のための手段として運営しているところのシェアハウス、というくくりで捉えることができるでしょう。「目的のための手段」などというと、何やら隠れ蓑にして利用しているように感じられるかもしれませんが、その目的が違法でもない限り、何ら問題はないはずです。むしろ、賢い利用法を思いつくことで運営するハウスを活性化できるなら、世の多くのシェアハウス大家さんにとって貴重な活用事例を提供してくれるものとなるかもしれません。
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