2025年7月5日――ご存じの通り、日本はちょっとした「予言」騒動に振り回されました。元漫画家のたつき諒氏によるコミック『私が見た未来 完全版』(2021年 飛鳥新社刊)の帯のコピーに記された「本当の大災難は2025年7月に」という「予言」が、SNS等を通じて話題になったことがきっかけです。この『私が見た未来』のオリジナル版は、いわゆる「ノストラダムス終末予言」のタイミングに合わせて1999年に朝日ソノラマ社から刊行され、当時は特に大きな話題にもなりませんでしたが、カバーイラストの一部に「大災害は2011年3月」と書かれたメモが描かれていたことで、東日本大震災後に急に注目を浴びるようになりました。そして、前述のように2021年に『完全版』が飛鳥新社から刊行され、4年後の2025年7月までに106万部を突破する大ベストセラーとなった……という経緯があります。折しも、インバウンド需要に沸く観光業界では、この「予言」を受けて6月から7月にかけて日本旅行の予約キャンセルが殺到し、日本行き航空便を減便するなどの影響が生じたほか、6月13日には気象庁長官の野村竜一氏がこの件に言及し、「現在の科学的知見では、日時と場所、大きさを特定した地震予知は不可能。そのような予知の情報はデマと考えられる」と声明を出す騒ぎになりました。結局――「Xデー」と見なされた7月5日には何事もなく、それどころか「そもそも7月5日に大災害が起こるとは言っていない」などと、作者や出版社が少し前から火消しに回っていたほどでした。ただし――鹿児島県のトカラ列島近海では6月下旬から群発地震に見舞われ、7月14日までに震度1以上の地震が2000回以上発生しています。このトカラ群発地震と「予言」との間に関係性は認められていませんが(おそらく今後も認められることはないでしょう)、南海トラフ地震に限らず、日本列島のどこかで大きな地震が発生するリスクは常にある……と考えておいたほうがよさそうです。
さて、今後どうなるかわからない自然災害については天に任せるとして、今月も目についたシェアハウス関連の話題についてご紹介して参りましょう。まずは何といっても、7月12日付の共同通信ニュースで報じられたこちらの話題から。
「政府、高齢者シェアハウス整備へ 介護も提供、3年間で100カ所」(
https://news.jp/i/1316668121448202418 )当コラムの連載をスタートしてからずいぶんと経ちますが、「政府が国策としてシェアハウス事業に取り組む」、というニュースを取り上げたのはこれが初めてのことではないでしょうか。驚きといささかの感動を込めて、以下、全文を引用いたします。
「政府は、過疎地などで高齢者らが安心して暮らせる住まいを確保するため、低料金で入居できるシェアハウスを全国的に整備する方針だ。年内に詳細を詰め、今後3年間で100カ所を目指す。介護など地域ケアの提供拠点とも位置付ける。地方では、既存の介護施設の維持が危ぶまれており、住まいを失いかねない高齢者への対応が急務となっている。人口減少に対処する地方創生につながる新たな取り組みとして、自治体側は歓迎している。
政府が想定するのは、単身高齢者や高齢夫婦らの個室を備えた小規模なシェアハウス。社会福祉法人やNPO法人などが運営する。規模を抑えた介護施設や障害者グループホームを併設し、元気な居住者は施設の業務を手伝えるほか、必要になった段階で介護も受けられる。福祉人材が集約されるため、サービス提供の効率化も見込む。
建物は既存の介護施設の転用や一部活用で賄う。子どもの居場所など、地域住民が集う場としても期待する。整備事業の主体は自治体で、政府は地方創生の交付金で改修費を財政支援する」(2025/07/12/一般社団法人共同通信社)
記事中、「社会福祉法人やNPO法人などが運営する」とあるのは、予想通りと言っていいでしょう。政府や自治体など、お役所勤めの人間が直接運営にタッチできるはずがありません。可能であれば「カネは出すが、口は出さない」というのが一番ありがたい話ですが、さすがにそれは難しいでしょうから、せいぜい「カネも出すが、口も出す」ということになると予想されます。それでも、「建物は既存の介護施設の転用や一部活用で賄う。子どもの居場所など、地域住民が集う場としても期待する」という基本方針は、できるだけ国の負担を軽くしつつ、既存の施設や仕組みを利用して、意地の悪い言い方をすれば「美味しいところだけ国が持っていこう」とする狙いが透けて見えます。「人口減少に対処する地方創生につながる新たな取り組みとして、自治体側は歓迎している」と記事にはありますが、その一方で「整備事業の主体は自治体で、政府は地方創生の交付金で改修費を財政支援する」というのですから、自治体にかかる負担は決して小さくないものと予想できます。リアルタイムでの人口減少に悩んでいる地方の自治体が、高齢者人口の増加をどれほど歓迎できるものでしょうか。それこそ、自治体は自治体で、運営当事者である社会福祉法人やNPO法人に丸投げするつもりでいるのかもしれません。国が進める事業として、高齢者向けシェアハウスを3年間で100カ所整備する、というのは有意義なことに違いありませんし、何より、これまで民間に頼るしかなかったセーフティネットを政府が支援しようというのですから、この取り組み自体は大いに評価すべきでしょう。とはいえ――いつものことながら、国の主導で進められる事業に過度な期待はしないほうが、落胆することも少なくて済むように思われます。
続いて、東京シェアハウス合同会社の運営するシェアハウスのポータルサイト『東京シェアハウス』が6月24日に発表した「【シェアハウス生活実態調査】シェアハウスに住む20代の7割が『キャリアにプラス』」(
https://story.tokyosharehouse.com/jpn/39 )について。これは2025年5月30日〜6月6日にかけて、東京都のシェアハウスに住む20代会社員の男女272名を対象に実施されたインターネット調査であり、モニター提供元は株式会社レイクルーが運営する「RCリサーチデータ」となっています。詳細はリンク先にグラフや図表付きで解説されていますが、一部抜粋して紹介していきましょう。
まず、「シェアハウスへの入居を決断するうえで、どの点に最も惹かれたか」については、1位「家賃や初期費用などの経済的メリット」(26.8%)、2位「人との出会いやコミュニティ形成の魅力」(20.2%)、同率3位「契約や入居条件の柔軟性」および「立地の良さ」(15.1%)となりました。
次に、「シェアハウス物件を探す際、どの手段を最も活用したか」については、1位が「シェアハウス専門物件サイト」(28.0%)、同率2位「不動産エージェントや仲介会社」および「友人・知人からの紹介」(26.8%)となりました。
続いて、「シェアハウスに入居したことで、実際に実現できた、またはメリットと感じたこと」については、1位「家賃や初期費用などの経済的メリット」(34.9%)、2位「人との出会い・コミュニティ形成」(31.6%)、同率3位「立地の良さ」および「シェアメイトを通じて仕事をもらえること」(25.0%)でした。
また、「シェアハウスに入居して感じたデメリットや不安」については、1位「プライバシーの不安」(22.4%)、2位「住民間の価値観の違いによるストレス」(21.0%)、3位「個人スペースの不足」1(20.2%)となりました。
さらに、「シェアハウスでの生活について、どの程度満足しているか」については、1位「ある程度満足している」(48.5%)、2位「非常に満足している」(24.3%)で合計72.8%となり、7割以上が「満足している」と回答しており、3位「あまり満足していない」(16.2%)を大きく上回る結果になりました。
最後に、「シェアハウスでの生活が、自己実現やキャリアにどの程度プラスの影響を与えていると感じるか」については、1位「ある程度プラスの影響を与えている」(34.6%)、同率2位「非常にプラスの影響を与えている」および「一部プラスの影響を与えている」(20.2%)という結果となり、合計75.0%が「シェアハウスでの生活が、自己実現やキャリアに少なからずプラスの影響を与えている」と感じていることが明らかになりました。
シェアハウス居住者、それも都内のシェアハウスに住む20代会社員男女という、きわめて限定された調査対象ではありますが、多くの回答がシェアハウスという住まい方、また実際に入居中のシェアハウスの住み心地について満足度の高いものとなっていることがわかります。特に、シェアハウスでの生活が「自己実現」や「キャリア形成」にプラスの影響を与えている――という回答は、この種のアンケートではあまり質問項目に用意されていない問いであるだけに、なかなか貴重なデータということができるでしょう。
ところで、この『東京シェアハウス』では2025年5月以降、月に2〜3本のペースで以下のようなさまざまなタイトルのレビュー記事を掲載(
https://story.tokyosharehouse.com/jpn/ )しています。
「暮らしやすさUP!自分にぴったりのシェアハウスを選ぶ5つのコツ」「シェアハウスの家賃相場は?東京23区の安いエリアや物件選びの注意点を解説」「シェアハウスって実際どう?メリット・デメリットを徹底解説!」「シェアハウスで恋愛や出会いはある?実態やトラブル回避のコツも解説」「シェアハウスに向いてる人・向かない人を徹底解説!後悔しない選び方も紹介」「シェアハウスでのマナーまとめ|共同生活を快適にするルールとは?」……タイトルからもおわかりのように入居者向け、それも初心者に向けたシェアハウス入門記事ではありますが、シェアハウス大家さんが読んでもいろいろと参考になるかもしれません。
このほか、直近のシェアハウス関連のプレスリリースを見て見みると、7月4日付けでSYSTR株式会社から「【江東区限定】シェアハウス退去専用!まとめて不用品引取りプラン|不用品回収のまるっと本舗」(
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000064.000163141.html )というリリースが発信されています。あまりにもピンポイントな地域限定、それも期間限定キャンペーンのため、「ウチは無関係……」という方がほとんどだと思いますが、類例のないサービスであり、今回のキャンペーン結果次第では、対象エリアの拡張や期間の延長、あるいは似たようなサービスに乗り出す同業他社も現れてくるかもしれません。
今世紀初頭、日本ではまだ海の物とも山の物ともつかない存在だった“シェアハウス”は次第に人口に膾炙するようになり、東日本大震災の前後には、東京都内のみならず全国津々浦々へと普及するようになっていました。それからざっと15年――その間には、いわゆる「脱法ハウス問題」の発覚と、それに対する「寄宿舎規制」の導入があり、また、「かぼちゃの馬車」をめぐる金融機関の不正融資問題もありました。そんな多事多端な15年を経て、今や政府が高齢者向けシェアハウス事業を手がけようという時代を迎えたわけです。それ以前からシェアハウス運営を手がけてこられたシェアハウス大家さんおよび元・大家さん、そして、実際に手がけてはいないものの前々から関心を寄せていた大家さん予備軍の皆さんからしてみれば「何を今さら……」と思われるかもしれませんが――当コラムでも何度かご紹介してきた、既に高齢者向けシェアハウスに取り組んでおられる事業者の方がたにとっては、「これでようやく、国が支援に本腰を入れてくれる……」と、胸を撫でおろす心境なのではないでしょうか。現時点では、具体的な支援の開始時期や予算規模も明らかになっていませんが、ある程度前向きに期待することはできそうです。