紆余曲折の末、無事に「日本国初の女性総理大臣」に就任した高市早苗首相ですが、就任早々、さまざまな物議を醸しているようです。米トランプ大統領の訪日をめぐる対応では、「女を武器に使って、媚びている」「一国の宰相としてあの態度は如何なものか」といった、いわば感情面からの批判が目立ちましたが、続いて臨時国会での「台湾有事は集団的自衛権を行使できる『存立危機事態』になり得る」との答弁は、中国政府側の猛反発を招き、日中関係の冷え込みが懸念されています。高市首相にしてみれば、対米関係で「女」であることを打ち出して批判を受けたことから、敢えてタカ派を気取ってリップサービスしてみせた、という程度の感覚だったのかもしれません。あるいは、歴代政権の対中協調路線により、日本が中国から常々「舐められている……」と感じ、それこそトランプ外交を見習って(?)対外強硬路線を演じてみせたつもりかもしれません。事実、国内の一部の層からは「よくぞ言った!」との賛同の声も上がっているようですが……。
アメリカにせよ中国にせよ、他国に対して「毅然とした態度を取る」ということと、「無闇やたらにケンカを吹っかける」ということはまったく別物。必要以上に顔色を窺うことはありませんが、他国のことに自分から首を突っ込む必要もないはずです。この件では、中国側の駐大阪総領事のX(旧ツイッター)への過激な投稿問題などもあり、日中間に不穏な空気が漂いはじめています。件の総領事に対しては、「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」として国外退去処分にするかどうかについて注目が集まっていますが、ことは一個人の処遇だけに止まらず、重大な国際問題に発展しかねない危険をはらんでおり、今後の政権運営を左右する重要な判断となりそうです。
次第にキナ臭さを増す国際情勢の一方、日経平均株価は連日5万円台で推移しており、国内ではあいかわらず「多くの国民にとって、実感の伴わない好景気」が続いていますが……11月17日、内閣府が発表した7-9月期の実質国内総生産(GDP)速報値は6四半期ぶりのマイナス成長に。何とも気の滅入る話ですが――気を取り直して、今月も、不動産関連の直近の話題をいくつかご紹介して参りましょう。まずは、全国空き家対策コンソーシアムが発表した「自治体向け空き家対策の手引き」無料公開(
https://www.j-akiya.jp/event/release16/?ref_domain=www.google.com )の話題からです。これは、同コンソーシアムが11月14日付で発表したもので、「空き家対策を行う自治体職員」を対象に、「自治体が自らの現状を把握し、次に取るべき一手を明確化できるようにすることで、空き家対策業務の強化・促進を目指すこと」を目的としています。同コンソーシアムによれば、「従来の国のガイドラインや広域自治体のマニュアルが『法制度や行政の方針を実行するための指針や手引き』を示すものであるのに対し、本手引きは『現場が動くための手引き』として制作したものであり、(1)自治体の自己診断チェックリスト、(2)成功事例の再現ポイント、(3)進捗段階に応じたアクションステップを組み込み、空き家対策を実際に成果につなげるための実務ガイドとなっている」とのこと。
概要版と詳細版の二部構成となっており、上記リンク先から取得することができます。これ自体は上記の通り自治体職員を対象としたものですが、同手引きの公開に当たり、同コンソーシアムでは参加費無料のオンラインセミナーを開催するとのことで、こちらは「空き家問題に関心のあるメディア関係者」も対象となっています。シェアハウス大家さんを含めた運営事業者であっても、自社サイトで情報発信を行っている等の実績があればメディア関係者として参加できると思われますので、興味のある方は下記URL(
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_WM6Kmz_qSSirhZhwM7SY3g )から申し込みフォームへアクセスしてみては如何でしょうか。日時は2025年12月15日(月) 15:00〜16:00および2025年12月19日(金) 15:00〜16:00、Zoomを用いたオンライン開催となります。
続いて、これは少々嫌な話題ですが……11月12日、『京都新聞』に掲載された「障害者シェアハウスの入居男性から現金盗んだ疑い、40歳男逮捕(
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1598485#goog_rewarded )というニュース。短い記事なので以下に全文引用します。
「京都府警田辺署は12日、住居侵入と窃盗の疑いで、奈良市の団体職員の男(40)を逮捕した。
逮捕容疑は10月3日午前0時35分ごろ、京都府京田辺市内の障害者専用シェアハウスに侵入し、入居している男性(66)の部屋から現金約5万8千円を盗んだ疑い。
田辺署によると、男は男性の介護を担当し、日常的に部屋に出入りしていたという。(11/12 17:27配信)」
ニュース自体は「部屋から現金(約5万8千円)が盗まれた」というだけの――だけ、といっても歴とした刑事事件ですが――記事なのですが、現場が「障害者専用シェアハウス」であり、被害者が「入居者の障害者男性」であり、被疑者が「介護担当の団体職員」ということが事件を特徴づけています。「障害者専用シェアハウス」については当コラムでも過去に取り上げたことがありますが、最近話題の「高齢者専用シェアハウス」と同様、入居者だけでなく介護担当者も日常的に出入りする場所になります。同記事だけでは被疑者を雇用している奈良市の「団体」というのがどのような組織かわかりませんが、介護職員という仕事は一般に低賃金・重労働のため、なり手が少なく、現場は常に人手不足であろうことは容易に想像できます。窃盗事件を起こした職員は、もともと人間性に問題があったのかもしれませんが、生活苦等から「ふと魔がさした……」だけの、普段はごく真面目な人物であったという可能性もあります。件のシェアハウス運営事業者とこの「団体」との関係も不明ですが、仮にシェアハウス事業者が直接介護職員を雇用しているケースでも、このような事件が起こらないとは断言できません。何とも残念な事件ではありますが、障害者・高齢者といった要介護者を受け入れているシェアハウスでは、これはこれで他山の石として受け止めておく必要がありそうです。
次に、11月11日に(公財)東日本不動産流通機構が発表した「2025年10月の首都圏不動産流通市場動向」(
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/mw/mw_202510_summary.pdf )について。同月の首都圏中古(既存)マンション成約件数は4,222件(前年同月比36.5%増)となり、12ヶ月連続で前年同月を上回りました。年明け以降は10ヶ月連続で前年同月比2桁台の増加となっています。都県別では、東京都が2,234件(同39.7%増)、埼玉県454件(同20.7%増)、千葉県491件(同20.3%増)、神奈川県1,043件(同47.1%増)と全都県で大幅な増加となりました。1平米当たりの平均成約単価は85万3,500円(同13.6%上昇)で、2020年5月以来66ヶ月連続で上昇が継続しており、さらに1戸当たりの平均成約価格は5,325万円(同12.4%増)と12ヶ月連続で上昇しています。一方、平均専有面積は62.39平米(同1.0%減)で、成約物件の平均築年数は26.68年(前年同月より1.31年増加)となっています。すなわち、「価格は上昇し、部屋は狭くなり、物件は古くなっている」という傾向が読み取れます。なお、新規登録件数は1万5,959件(同4.4%減)で4ヶ月連続減少、在庫件数は4万3,669件(同4.8%減)で3ヶ月連続減少となっており、「中古マンションを新たに売りに出す」ケースや、「市場に売れ残っている中古マンション」の総数も減ってきていることがわかります。総じて、首都圏では中古マンションの販売が活発で、優良物件(比較的広くて新しいマンション)がどんどん売れている反面、条件に難のある物件だけが売れ残っている状況で、「これから中古マンションの購入を考えているシェアハウス大家さん」にとっては逆風と言うことができるでしょう。
ちなみに、既存戸建ての成約件数もやはり12ヶ月連続で増加しており、都県別でも全都県で大幅増。ただし、平均成約価格は、これも上がってはいるものの、同0.6%増と小幅で、それも2ヶ月ぶりの上昇であり、マンションに比べれば価格の上昇は誤差の範囲に止まりそうです。シェアハウス化を前提に購入を検討する場合、首都圏ではマンションよりも戸建てのほうが今はやや有利かもしれません。
続いて、11月11日に(公財)日本賃貸住宅管理協会が開催した「日管協フォーラム2025」の話題です。同協会では例年、この時期に同フォーラムを開催しており、今年で13回目となりますが、東京・港区の明治記念館で開催された今回は過去最多となる3,314名が来場したとのこと。同協会ホームページでは翌12日、「日管協フォーラム2025 盛会の御礼」(
https://www.jpm.jp/topics/97664?_gl=1*1v4sjid*_gcl_au*OTY5NDc4NjEzLjE3NjMyODQzMzA. )と題する短文を掲載しています。なお、第三者の視点からこの件を読み解くべく、(株)不動産流通研究所が運営する不動産ニュースと不動産業務のためのサポートサイト『R.E.port』に11月11日付で掲載された「日管協フォーラム、過去最多の3,314名が来場」(
https://www.re-port.net/article/news/0000080309/ )という記事から一部抜粋して引用してみましょう。
「(前略)今年は初の試みとして、同協会の支部執行役員会、広報委員会、組織委員会、預り金保証制度運営委員会がセミナーを開催。申込者数の多かったセミナーは、『AI活用』(採用難と人手不足の打開策 不動産管理に効く生成AIの力!!)、『管理業務』(管理戸数増! オーナー・入居者から選ばれる管理会社の独自ノウハウ)だった。
預り金保証制度運営委員会は、『差がつく! 家主との信頼づくり〜提案が届く関係構築とは〜』をテーマに、住まいLOVE不動産(株)専務取締役の滝脇清陽氏が講演。『ポータルサイトで物件情報が見放題の今、口コミや担当者・家主への「信頼感」が決定打となる』とし、『この不確実な時代、情報をどのように生かすかといった提案力が差別化の要因となり、ユーザーは信頼できるパートナーを求める心理が強まっている』と話した。(中略)
支部執行役員会は、地域密着型管理会社の『地域での生き残り策』を紹介。(株)ありき代表取締役の有木志津加氏は、地域創生、業務改善、知名度向上、オーナー・入居者との関係構築などの取り組みを披露。(中略)
『カスハラから従業員を守る! 組織の防衛力を強化する重要施策』をテーマにセミナーを実施した法務委員会は、弁護士の塚本智康氏が、同協会が制作した冊子を用いてカスタマーハラスメント事例と対応方法について解説。『時間拘束型(長時間にわたる電話や居座りなど)』『執拗な繰り返し(理不尽な要求を繰り返すなど)』『暴言型(怒鳴る、侮辱的な発言をするなど)』のほか、『SNSへの投稿(インターネット・SNS上での誹謗中傷など)』『セクハラ(性的な発言やわいせつ行為など)』など、代表的なカスハラに該当する行為を挙げ、一般的な対応例をアドバイスした。」
一読しておわかりになるように、必ずしも賃貸住宅管理業者だけに限定しない幅広いテーマを扱ったフォーラムとなっていますが、これは一つには、同業界における特徴としていささか前近代的(いわゆる「昭和的」)な就労環境が根強いという傾向が如実に表れているようです。そして、このことから、シェアハウス大家さんを含めた賃貸住宅オーナーの、管理業者への対応についても、改めて見直してみる必要がるかもしれません。
最後に、前々回の当コラムで告知した「シェア活2025」というイベントの結果について、主催者発表によるプレスリリースが発信されていましたので以下に触れておきます。「業界唯一のシェア型賃貸サミット『シェア活2025』、全国100名が集結。コリビング・シェアハウス市場の“次の波”を議論(
https://mainichi.jp/articles/20251114/pr2/00m/020/251000c )というタイトルで、詳細についてはリンク先をご参照ください。主催者発表だけに「良い話ばかり」という面もありますが、話半分として聞いても、なかなか興味深い「明るい話題」がいくつか出てきました。たとえば「登壇テーマを深掘りするディスカッションやコラボ相談が自然発生し、『学びだけでなく、“同業者仲間との出会い”を持ち帰れた』という声が多く寄せられました」とか「アンケート結果では、平均満足度8.9点/10点満点中を記録」とか……。そして、報告書の最後は「株式会社グッドルームがまとめた海外市場データによると、コリビング賃貸の市場規模は今後1000兆円規模に拡大する可能性が示されています。
かつては20代単身者中心だったシェアハウス市場が、現在ではファミリー層や海外ノマドワーカー向けへと急速に多様化している。また、物理的な設備充実だけでなく、入居者同士の“交流設計”が入居期間の長期化と安定運営につながることがパネルディスカッションの議論の中で強調されました」としめくくられ、多事多端な現代社会において「シェアする」という考え方が未来を切り開く希望の光となっていることが強調されています。
国際情勢の緊張やGDPのマイナス成長など、多くの材料が日本の将来に暗い影を落としていますが、暗闇の中でも一筋の光明を見出すことができれば、人間は明日への希望を手放さずに済むことができるでしょう。たった一人のシェアハウス大家さんにできることなどささやかなものかもしれませんが……それでも、せめて今自分に何ができるかを考えてみることはできるのではないでしょうか。