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7月下旬の参院選大敗後も留任の姿勢を崩さなかった石破総理大臣でしたが、9月7日付けで辞意を表明することになりました。同日の記者会見で石破氏は「アメリカの関税措置をめぐる対応に区切りがついた」などとして内閣総理大臣を辞任する意向を明らかにし、自民党ではこれに伴い、ただちに総裁選を実施することになりました。9月16日現在、高市早苗経済安全保障担当大臣、小泉進次郎農林水産大臣、茂木敏充元外務大臣ら数名が総裁選への出馬を表明しており、9月22日告示、10月4日投開票のスケジュールが正式決定として発表されています。これから告示当日までの間に水面下での調整が行われ、候補者が絞り込まれることになりますが、現状、どの候補も一長一短――というより、「帯に短し襷に長し」の感があり、おそらくは次期政権も短命に終わることになるでしょうが……外交政策上からも、内政の都合からしても、一日も早い政権の安定化が望まれます。自民党に限らず、党利党略だけに腐心する既存の政治家たちにどこまで期待できるものか――まだまだ当面は先行きに明るさの見えない状況が続くことになりそうです。
とはいえ――暗い未来予想図に絶望していても何も始まりません。少しでも将来に明るい材料を探すためにも、今月も直近のニュースから気になる話題をいくつか拾い上げて参りましょう。まずは、首都圏の地上波ローカル放送局であるTOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組『堀潤激論サミット』で9月15日に放送された「高齢者の新たなライフスタイル、みんなで暮らすことで介護予防にも…注目を集める“高齢者シェアハウス”とは?」(
https://s.mxtv.jp/tokyomxplus/mx/article/202509150650/detail/ )という話題から。全国ネットの番組ではなく、1都3県にお住まいの方でも視聴できない地域もあるためか、リンク先では番組の詳しい内容を画像と記事で紹介しております。以下、一部抜粋して引用いたします。
「■政府も推進する高齢者シェアハウス
今、介護施設でも老人ホームでもない高齢者の新しいライフスタイル“高齢者シェアハウス”が注目を集めています。忍び寄る超高齢化社会を前に政府も『高齢者シェアハウス構想』と銘打ち後押ししています。
しかし、共助の強化だけで超高齢社会を乗り切れるのでしょうか。『高齢者シェアハウス』は介護問題の切り札となりうるのか、共助の限界と制度の在り方を有識者が徹底議論します。
コラムニストの河崎環さんは、高齢者シェアハウスについて『高齢になってからシェアハウスに入るのは勇気がいるような気がするが、私たちが今後直面する社会的な課題』と率直な感想を語ります。
一方、弁護士の島田さくらさんからは『老人ホームや特養(特別養護老人ホーム)との違いが気になる』との意見が。これに高齢者住まいアドバイザーの満田将太さんは『老人ホームなどは“介護”が前提で入居者の年齢層が85歳〜90歳と高い。しかし、高齢者シェアハウスは元気な高齢者(が対象)なので年齢も70代前半と若い。元気な期間をみんなで楽しく生活することで介護予防にもなる』と解説。
加えて、『高齢者シェアハウスは需要があるが、今まで供給されていなかった。というのも、高齢者の住まいは介護が前提だったから。国が作ることで供給が増えれば(高齢者と)うまくマッチングすると思う』と話す傍ら、『入居時は元気だけど、その後介護が必要になったら(シェアハウスを)出なければいけないのはつらい。そういった問題が5年後、10年後につきまとう』と課題も示唆します。(中略)
■高齢者シェアハウス住居人の生の声
(中略)満田さんによると高齢者シェアハウスは特に地方で需要があるとか。なぜなら、地方は過疎化が進んでいるから。さらに、『地方に行けば行くほど、介護券などを使っていない方が多い。要は家族で介護をしようという意識が強い』と満田さん。
ジャーナリストの風間晋さんも『都心部と地方の状況は全く違っていて、高齢者シェアハウスというものの受け止め、それを使ったビジネスも別物だと思う。そのギャップは大きい』と懸念します。
今回、番組では都内にある高齢者シェアハウスを取材。そこは一軒家に6人の高齢者が暮らしており、共有のリビング、キッチンのほか、個人部屋も完備。居住者に話を聞いてみると『(一人暮らしだと)誰にも会わないこともあるが、誰かがいるということだけで安心感がある』と好評です。
高齢者シェアハウスを運営しているサンクチュアリ株式会社の松岡代表は、政府の構想について『僕にとっては嬉しいこと。ただ、シェアハウスの暮らしが小規模老人ホームのようになってしまうのはどうかと思う。施設ではない、地域に溶け込むような自然な暮らし、自由な時間・行動がキーポイントになってくると思う』と言います。さらには、『いきなり施設はハードルが高いので、まずはここで“みんな暮らし”をして気持ちの整理をすることで、より人生が楽しめると思う』と話していました。
現場の声を聞き、満田さんは『共助というのは介護の前段階であり、やはり介護を共助で行うのは大変。シェアハウスもあくまで介護の前段階で、共助という仕組みはすごく合っている。税金が入った公助と共助をうまく使い分けて、(介護が必要な高齢者を)順次移行させる仕組みは大事』と理想を語ります。
■高齢者シェアハウスで介護人材不足も解決!?
介護についてはもうひとつ大きな問題として『人材不足』があります。介護職員数は増加傾向にあるものの要介護認定者も増え続けているため、必要とされる人材の確保ができていません。厚生労働省の試算では全国で必要とされる介護職員数は2040年度には272 万人に増える見込みで、57 万人が不足するとみられ、政府は介護職員の処遇改善や外国人材の受け入れ、環境整備など人材確保対策に取り組むとしています。
この問題に満田さんは『今、国は“地域包括ケア”といって地域で介護する方向に移行している。施設介護ではなく介護予防に力を入れていて、独居の方や老老介護をしている方にシェアハウスに住んでもらい、介護予防をすることが国の大きな根幹にあると思う』と推察。
そして、満田さんは高齢者シェアハウスの課題を改めて整理し、3つのポイントを挙げます。まずは“介護が必要になった際の対応や管理”。『介護が必要になったときにそのまま高齢者シェアハウスに住めるのかという問題がある。国の構想のように介護施設を併設しそこに移行したり、提携施設に入る仕組みなどがないと不安で誰も入居しなくなってしまう』と案じます。
2つ目は、“国などによる補助金の制度”。『高齢者シェアハウスは安さがメリット。介護者を受け入れれば介護収入などが入るが、(高齢者シェアハウスは)そうはいかない。国がどれだけ支援できるかが重要』と満田さん。
そして、3つ目に“普及”を挙げ、『高齢者の住まいは介護や認知症などネガティブなイメージが強い。そうした中で高齢者シェアハウスは明るい話題だと思うので増えていくことはすごくいいこと』と強調します。
■高齢者シェアハウスのあるべき姿とは?
最後に高齢者シェアハウスはどうあるべきか。議論に参加したコメンテーター陣が提言を発表します。
まず河崎さんは、政府が考えている『3年間で100ヵ所』という目標に対し『作ることはできるかもしれないが普及させて意味のあるものにする、周知することは難しいのではないか』と憂慮。一方で『私は今50代で予防介護世代。(この世代は)人数は多いが介護人材は少ない危険な世代。そこが予防介護世代として知識を蓄え、高齢者シェアハウスを介護に入る前のブリッジとして意識するのがいいと思う』と言います。
島田さんは、“自立しつつ共助”と双方がリンクすることのメリットを伝えていくべきとし、『元気な方が大変な人の手伝いをするとか、(高齢者が)誰かを助ける役割であるのも大事』と主張。
そして、満田さんは“明るい老後のイメージを提供”。『国がやる意味は、イメージをつけてあげること。老後の住まいは暗いイメージがあるが、こういうシェアハウスもあると選択肢を広げ、老後の住まいに関する選択を早めに動くことを推進するのが国の役割』と力説します。
キャスターの堀潤は、今回の議論を踏まえて『今、災害対応や高齢化社会に対応した“フェーズフリー”という考え方で地域を作っていくというのがある。みんなが集まって一体運用で暮らしやすい、そんな複合的な計画の中に高齢者シェアハウスがあることが必要かなと感じた』と感想を述べていました」
堀潤氏は元NHKアナウンサーで、現在は市民投稿型ニュースサイト「8bitNews」を主宰しているジャーナリスト。冠番組である『堀潤激論サミット』は、TOKYO MXで2023年4月3日から放送している討論番組で、もともとは朝の情報番組『堀潤モーニングFLAG』の1コーナーであったのがレギュラー番組に昇格し、この日は敬老の日に因んで先日(当コラムでも前々回に取り上げた)政府主導の「高齢者向けシェアハウス」のテーマを掘り下げています。民放にありがちな、知性派のお笑いタレントをメインキャスターに据えた報道バラエティとは一線を画した番組作りで、一般受けはしないかもしれませんが、毎回興味深いテーマに挑んでいます。
続いて、少し前の話題になりますが、8月15日付の『デイリー新潮』に掲載された「“金持ち以外は郊外へ”は危ない…東京に迫る『ジェントリフィケーション』の影 ひと足早く欧米で起きていたこと」(
https://www.dailyshincho.jp/article/2025/08151102/ )という記事。『デイリー新潮』は、その名が示す通り『週刊新潮』を発行している新潮社の運営するニュースサイトで、基本的な論調は『週刊新潮』と同様のスタンスになります。例によって、一部抜粋して引用して参ります。
「不動産経済研究所の発表によると、2025年上半期の東京23区の新築マンションの平均価格は過去最高の1億3064万円を記録。住居費の高騰は賃貸物件も例外ではなく、都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)では、3LDKのファミリー向け物件の平均賃料が40万円を超えている。日本総合研究所の調査部で主席研究員を務める西岡慎一氏は、こうした住宅価格の高騰が、ゆくゆくは都市の多様性を損なうことになる、と警鐘を鳴らす」
ここまでがリード文で、以下、本文となります。
「■住宅価格押し上げの根本的要因は『産業構造の変化』にある
東京都心のマンションはもはや、『普通のサラリーマン』には買えなくなった。そう言われるようになってから、どれぐらい経つだろうか。中低所得者が郊外などの“セカンドベスト”物件に目を向ける中、都心のマンション価格はますます値上がりし、一向に下がる気配を見せない。
『価格高騰には、複数の要因が複雑に絡み合っています』
そう解説するのは、日本総合研究所の調査部で主席研究員を務める西岡慎一氏だ。
『まず、世界的な資材価格の上昇や人件費の増加が建設コストを押し上げています。また、円安の進行で日本の不動産価格の割安感が強まっており、ファンドを中心に海外からの資金流入が増えていることも不動産市場を加熱させています』(西岡氏)
ただ、価格高騰の根本的な要因は、これら以外にもあると西岡氏は指摘する。
『近年、情報通信、金融、不動産、専門サービスといった高付加価値サービス業が一段と集積し、都市としての魅力が増しています。コロナ禍を契機としたデジタル化の加速やインフレ経済への移行がこの流れを後押ししており、これらの産業に従事する高所得層が増加しているのです』(同)
(中略)
『東京圏では、年収1000万円を超える層が160万人を超えており、共働き高収入世帯や高度外国人材が都心の住宅市場を席捲しつつあります』(同)
■社会の分断を招く『ジェントリフィケーション』
住宅価格の高騰は、かつては多様な所得層が共存していた地域の風景を一変させつつある。
『富裕層向けの高級マンションや商業施設が次々と建設され、中低所得層は郊外への居住を余儀なくされています。長年親しまれてきた商店街や地域コミュニティは姿を消し、社会的多様性が失われていく。この現象は「ジェントリフィケーション」と呼ばれ、欧米諸都市では長年にわたり社会問題として議論されてきました』(西岡氏)
『ジェントリフィケーション』は、日本語では『高級化』『富裕化』『階級浄化』などと訳される。
『ニューヨーク、サンフランシスコ、ロンドン、パリといった大都市では、1990年代からIT・金融産業が台頭し、2010年代にはデジタル化の進展で経済のサービス化が加速しました。これに都心部の再開発やグローバルマネーの流入が加わって、住宅価格が押し上げられ、富裕層や外国人投資家が住居を買い占める一方、それ以外の層が郊外へ追いやられました』(同)
■多くの政党が外国人による不動産取得規制を公約に掲げた参院選
こうした社会の分断は単なる経済問題にとどまらず、階層間の対立に発展。抗議デモが多発するなど社会不安を招き、さらにはポピュリズム勢力が台頭する温床になったとも指摘されている。
『これまで比較的政治情勢が安定してきた東京も、欧米が辿ってきたこうした道筋に足を踏み入れつつあります』(西岡氏)
奇しくも先の参院選では、多くの政党が外国人による不動産取得規制を公約に掲げ、議論が盛り上がったが、西岡氏は
『住宅市場の分断が進めば、さらに社会的な亀裂が深まる可能性は否定できません』
と警鐘を鳴らしている。(後略)」(デイリー新潮編集部)
なお、引用したリンク先の元記事でも、これ以上に詳しい内容についてはさらなるリンク先へ飛ばされており、西岡氏の意見に関してはそちらをご確認ください。西岡氏の警告する暗黒の未来予想図(?)が本当に現実化するかどうか、するとしても具体的にいつのことになるかは、現時点では正直わかりませんが、「最悪を想定して、そうならないように備えておくこと」は決して無駄にならないと思われます。
続いてご紹介するのは、「次世代不動産エージェントファーム」をキャッチフレーズとする株式会社TERASSが9月2日付で同社の公式サイト『TERASS』にて発表した「住宅購入検討者に関する意識調査」の結果についてのプレスリリース。「家探しのストレス、都心在住者・高年収世帯ほど大きく」―住宅購入を検討している一都三県在住カップル・ファミリー層向けの意識調査結果―(
https://terass.com/news/qb6s5q2kj15n )というタイトルが付けられています。同調査は一都三県に居住し2年以内に住宅購入を検討している、世帯年収500万円以上、20〜50歳代のカップル・ファミリー層を対象とし、有効回答は1,097人。居住地域については、「都心」(東京23区内)、「郊外」(1都3県の郊外。具体的には東京都の市部、神奈川県の横浜市・川崎市、埼玉県のさいたま市・川口市・草加市・戸田市・和光市・朝霞市・新座市・蕨市、千葉県の市川市・浦安市・習志野市・船橋市・松戸市・柏市・流山市)「地方」(郊外以外の市部)としています。
同調査によると、物件探しに対してどの程度ストレスを感じているか? の問いでは、「とても感じる」17.8%、「ややストレスを感じる」49.8%、「あまり感じていない」25.5%、「まったく感じていない」6.9%という結果になりました。ストレスを感じているとの回答が最も多かったのは年収1,000万〜1,500万円の都心居住者(前出の西岡氏によれば東京圏に160万人超)で、「とても感じる」と「やや感じる」の合計が80%に達しています。同社は、「都心では予算が高くても物件価格に届かず、資産価値やエリアへのこだわりも強い傾向にあるため、複数の住居タイプを並行検討する層も多い。そのため負担が増大している」と分析しています。また、住宅購入を検討しているエリアについて聞いたところ、都心居住者・高収入世帯ほど都心部を希望する人が多いことがわかりました。住宅検討者が現実的に検討している金額は平均6,138万円。エリア別に見ると、都心居住者では7,056万円、郊外居住者は6,138万円、地方居住者は4,746万円となっています。
購入したい物件タイプは、全体のトップが「新築戸建住宅」(71.6%)。以下「新築マンション」(57.4%)、「既存(中古)戸建住宅」(38.6%)、「既存マンション」(37.4%)となっており、年収1,000万〜1,500万円の都心在住者に限定して見てみると、いずれの住居タイプも検討に入れている人の割合が高く、複数の住居タイプを並行検討していることが明らかになりました。同社では「限られた条件の中で理想の物件を探すためには、選択肢を広げざるを得ず、情報収集や比較作業に多くの時間・労力を費やすことが、ストレスの大きな要因になっている」と分析しています。
ところで――この「住宅購入検討者の意識調査」というテーマについて、わざわざ当コラム内で取り上げたことに関して、疑問を感じた読者の方も中にはいらっしゃるかもしれません。シェアハウス転用物件の購入ならともかく、居住用の物件購入者の意識を知ったところで、シェアハウス大家さんには何の得もないのではないか? そんなふうにお考えになるかもしれません。しかしながら、このテーマはシェアハウス大家さんにとっても、じつは決して無関係ではないのです。というのも――直近の当コラムでたびたび指摘しているように、シェアハウス入居者の大半が経済的・社会的な居住困難者となりつつある昨今、シェアハウスは、かつて多くのシェアハウス大家さんが志していたはずの「生活にゆとりある都心生活者が、自由意思で選ぶことができる、多様な住まい方のスタイルの一つ」ではなくなりました。今やシェアハウスは「生活困窮者が、それでも都心部に住み続けるための唯一無二の選択肢」になったと言えるでしょう。その意味で、同調査の主な回答者である「新築戸建住宅の購入を現実的に検討可能な」「年収1,000万〜1,500万円の都心在住者」の悩みなど、大多数のシェアハウス入居者から見れば「持てる者の贅沢な悩み」と映っているかもしれません。だとすれば、こうした持てる者と持たざる者の「意識の分断」がさらに進行していくことで、前出の「ジェントリフィケーション」なる現象も現実味を帯びてくるわけです。聞き慣れない専門用語で、ピンとこないかもしれませんが、もし、西岡氏の警告するように、都心部の治安の悪化が現実のものとなれば、シェアハウス大家さんにとっても大きな損失につながることになります。無論、世の中の大きな流れを変えることはできないとしても、事前の想定があるのとないのでは、いざという時の対応が変わってくるはずです。
最後に、イベント情報の告知をご紹介しておきましょう。2025年10月24日、東陽町駅より徒歩2分の「goodoffice 東陽町」においてシェア型賃貸合同サミット「シェア活2025」(
https://sharekatsu.com/ )が開催されるとのことです。これは「シェア型賃貸市場の先端を走るゲストを迎え、次の時代に求められるシェア型賃貸の市場戦略・運営ノウハウを同業者同士でシェアし合い市場を共に盛り上げる、業界唯一の事業者交流勉強会」と銘打ち、主催者およびゲストスピーカーによるスピーチとアフター交流会&懇親会であるとのことです。詳細について興味のある方、参加をお考えの方は上記リンク先をご参照ください。