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第113回 人口減少問題とシェアハウス

6月13日夜の記者会見において、岸田総理が衆議院解散総選挙の時期について「国会の会期末にかけての情勢をよく見極めたい」と表明したことを受け、与野党の間で波紋が広がっております。今国会の会期は21日まで、残すところわずか1週間。これまでずっと「今は、解散は考えていない」とくり返してきた総理が言い回しを変えたことで、「野党側の内閣不信任決議案の提出をけん制する狙い」とも、「解散の可能性に含みを持たせた」とも言われていますが、野党側は「衆議院解散と不信任案提出とはまったく別の問題だ」と対決姿勢を見せている一方、与党内でもこのタイミングでの解散総選挙には反対意見が根強く、会期末までは水面下のせめぎ合いが続くものと見られます。政治家同士の腹の探り合いなど、下種な興味を持ち合わせていないほとんどの国民にとっては無関心なのではないかと思いますが……日本列島では、このところ台風の影響などにより各地で記録的大雨が観測されているほか、5月以降地震が頻発していることもあり、いつ土砂災害などの大規模な自然災害が起こっても不思議のない状況です。万が一にも、解散総選挙による政治的空白期間に、何らかの自然災害が起こるような事態にはならないよう、天に祈るよりほかはありません。

さて、いざ解散総選挙ということになれば、現政権が提唱している「異次元の少子化対策」とやらが争点の一つとなるのは間違いないでしょう。年頭会見で岸田総理がこのフレーズを用いてからというもの、何かと社会的注目を集めているのが、昨今の「人口減少問題」です。厚生労働省は6月2日「令和4年人口動態調査」の確定値を発表し、「出生数は 77万 747人(前年比 4万 875人減少)」「死亡数は 156万 8961人(前年比12万 9105人増加)」等の数値が明らかになりました。すでに、これに先立つ2月28日発表の同・速報値の発表を受けて、人口減少問題は一気に身近な喫緊の問題として注目を浴びています。4月12日に総務省が公表した「人口推計(令和4年10月1日現在)」( https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2022np/index.html )および同26日に厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口(令和5年推計)」( https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2023/pp2023_PressRelease.pdf )などにより、日本の総人口は12年連続の減少となっていること、2070年の日本の総人口は8700万人と、2020年時点の69.0%にまで減少し、総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)は2020年の28.6%から2070年には38.7%に上昇すると予測されることなどが警告されています。ここ最近のニュースに限っても、「山梨県が全国初の人口減少緊急宣言」〔6月9日「日本海新聞」〕( https://www.nnn.co.jp/articles/-/62488 )、「京都市から若者と子育て世代が離れていく理由」〔6月13日東洋経済オンライン〕( https://toyokeizai.net/articles/-/678117 )、「人口減対策に注力 静岡市長が所信表明『定住増必要』」〔6月14日「中日新聞Web」〕( https://biz.chunichi.co.jp/news/article/10/63099/ )等々、複数の自治体が危機感を表明しており、今や地方行政における一種のトレンドとなった感さえあります。
かつて、不動産業界では「総人口の減少は、必ずしも世帯数の減少とイコールではない」すなわち「人口が減少しても、世帯数は増加傾向にある以上、今後も一定の不動産需要は見込める」という意見が主流を占めていました。このこと自体は、特に首都圏などの人口密集地においては、あながち間違いとは言えませんでした――少なくとも、かつては……。今や、この考え方は通用しなくなりつつあります。加速する人口減少が、世帯数にも影響を及ぼしつつあります。前出の国立社会保障・人口問題研究所は、すでに2018年の時点で「世帯数の増加は2023年にピークを迎え、以後減少に転じる」と警告していました。すなわち、今年がまさにその「節目の年」に当たります。過疎化する地方のみならず、東京都をはじめとする首都圏の人口密集地においても空き家対策が本格化しているのは、その一つの証左でしょう。考えてみれば――否、考えるまでもなく、人口が減少していけば、いずれ遠からず世帯数も減少に転じるのは自明の理。総人口のみならず、世帯数までも減少に転じれば、不動産需要は急速にしぼんでいくことが予測され、すでにその兆候は顕現化しつつあります。バブル期における「土地神話」――不動産価値は(半永久的に)上昇し続ける、という、今となっては絵空事としか思えないような「信仰」が大真面目に信じられてきたように、「世帯数は増加し続ける=不動産需要はなくならない」という「信仰」もまた、絵空事であったという事実が白日の下にさらされようとしているのです。

こうした現状を踏まえて、改めて直近の業界動向を見て参りましょう。6月12日、(公財)東日本不動産流通機構が発表した「2023年5月度首都圏不動産流通市場動向」( http://www.reins.or.jp/pdf/trend/mw/mw_202305_summary.pdf )によると、首都圏の中古(既存)マンションの成約件数は2ヶ月連続で前年同月を下回り、1平米当たりの成約単価は37ヶ月連続、成約価格は36ヶ月連続で前年同月比上昇となりました。すなわち、まるまる3年もの間、既存マンション価格はひたすら上昇し続けているわけです。これに対して、新規登録件数は5ヶ月連続、在庫件数は16ヶ月連続で前年同月を上回っています。ちなみに、既存戸建ての場合、成約件数は17ヶ月連続で前年同月を下回り、成約価格は31ヶ月連続で前年同月を上回っています。マンション・戸建てともに、価格が高騰して成約が減り、市場に在庫がだぶついている状況がますます顕著になってきました。なお、これが全国的な傾向であることは、同じ6月12日に(公財)不動産流通推進センターが発表した「全国の指定流通機構における2023年5月の既存住宅の成約動向」( https://www.retpc.jp/wp-content/uploads/reins/bukken/bukken2305.pdf )と見比べてみても明らかでしょう。

一方、新築市場については、少々興味深い2つのデータが発表されています。上記した既存住宅の市場動向とは調査目的や調査方法がまるで異なるため、単純に数値を比較するわけにはいきませんが、こちらはこちらで参考になると思われます。
まずは6月8日、(株)不動産経済研究所が発表した「首都圏マンション 戸当たり価格と専有面積の平均値と中央値の推移2022年」( https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/549/mdn20230608.pdf )について。これは首都圏1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)における「新築分譲マンションの戸当たり価格および専有面積の中央値を集計し、平均値と比較した結果」のデータになります。同研究所ではこれまで、「2016年11月」「2019年8月」に同様の調査を行っており、今回が3回目の調査でした。これによると、年間ベース(1月〜12月)における新築マンションの価格推移は、集計を開始した2013年以降ほぼ一貫して上昇基調にあり、この間、前年比で下落したしたのは平均値で2回、中央値で1回のみ。各年の平均値と中央値の差は、2013年には「581万円」であったのが、小幅な増減をくり返しつつ、2022年には「820万円」となっています。同研究所では「施工費や用地費の上昇、都心エリアの高級マンションやタワーマンションの積極供給、郊外部でも駅近など立地を厳選する傾向が強まったことが価格上昇の要因」と分析しています。ただし、平均値の上昇に比べると、中央値の上昇はより緩やかなものとなっているようです。ちなみに、ややわかりにくいのですが、年間ベース(1月〜12月)のほかに年度ベース(4月〜翌3月)での集計も行われており、これによると2022年度(22年4月〜23年3月)の戸当たり価格では、平均値と中央値の差が「1475万円」という数値になっています。集計期間をわずか3ヶ月ずらしただけで655万円もの大差が生じているのは、「3月に都心エリアで高級・高額住戸の供給が多くなったことで平均値が大幅に上昇、中央値の差がより広がっている」と同研究所では分析しています。さらに、「今後も、都心やその周辺エリアで高額な大規模タワー案件の供給が数多く見込まれることから、価格は高値傾向が続く見込み。平均値と中央値の差も1000万円以上を維持する可能性が高い」と予測しています。なお、専有面積については平均値が中央値を下回る傾向にあり、また、全体として年々圧縮傾向にあることがデータに現われています。すなわち、価格の高騰を受けて専有面積は狭くなり(広すぎる物件は価格も高くなりすぎて買い手がつかないため)、特に平均値を引き下げるような(比較的買い手のつきやすい低価格帯の)狭小物件の供給が増えてきていることがわかります。

同じ6月8日には、(株)東京カンテイによる「2023年5月の主要都市圏別・新築小規模木造一戸建て住宅の平均価格動向」( https://www.kantei.ne.jp/report/index.html )が発表されています。こちらはまた、「敷地面積50平米以上100平米未満、最寄り駅からの所要時間徒歩30分以内もしくはバス20分以内。木造で土地・建物ともに所有権の物件」を対象とするきわめて限定的な調査であり、単純に「新築戸建て」のデータとして上記の「新築マンション」あるいは「既存戸建て」のデータと数値を比較することはできませんが、ごく大づかみに傾向を把握する上では参考になるかもしれません。これによると、首都圏の平均価格は2ヶ月連続で前月比上昇。ただし、内訳を見ると東京都と神奈川県が下落し、千葉県と埼玉県が上昇したもので、上昇幅は首都圏全体で前月比わずか0.3%となっています。近畿圏は前月比横ばい、中部圏は前月比1.4%上昇となっています。小規模木造住宅に限定した調査データではありますが、新築戸建てに関してはあまり目立った変化は起きていないと言えるかもしれません。

当月に限らず、このところシェアハウスに関する話題としては、残念ながらあまり目新しいニュースは入ってきていません。せいぜい、東京・豊島区の特定非営利活動法人が「住まいを失った若者が自分の住まいを確保できるまで短期間居住できる個室シェルター」を都内に5室開設し、入居者の受け入れを開始した――というプレスリリース記事が目につく程度です。社会的には意義ある取り組みといえるかもしれませんが、ビジネスモデルとしてシェアハウス大家さんが参考にできるものではなさそうです。
5月8日の「コロナ5類移行」から1ヶ月余り、「コロナ禍」は急速に過去の出来事となりつつあり、街ではマスクを外して出歩く人びとの姿が日に日に増えてきています。その一方で、補償を打ち切られた飲食店の倒産件数が過去最大を記録するなど、日本経済は混迷の度合いを深めています。決して大げさな話ではなく、現在は社会が変革を迎える過渡期に当たる重要な時期に差し掛かっているのかもしれません。人口減少問題もまた然り、新たな時代に生き残るためには、これまで以上に幅広い視野から情報収集と分析に努めることが求められています。
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