不動産関連お役立ち情報  >  新・今月の不動産コラム  >  第112回 市場動向とシェアハウス
シェハウス 「かぼちゃの馬車」再生 空き家活用支援事業 人気の駅ランキング 不動産流通市場動向

第112回 市場動向とシェアハウス

じつに4年ぶりとなる「行動制限のないGW」も終盤を迎えた5月5日午後、「令和5年石川県能登地方を震源とする地震」が発生しました。石川県珠洲市で最大震度6強が観測され、死者1名・負傷者30名の人的被害が出た大地震でした。被災地周辺ではその後も余震が頻発していますが、今回の地震の影響(と、断定してよいものかどうかはわかりませんが……)は、思いもよらない遠隔地へも及んだものと見えて、翌日以降、全国各地で中小の地震が相次いで発生しています。5月6日未明には、青森県東方沖を震源とするマグニチュード5.5の地震(最大震度4)。同11日未明には、千葉県南部を震源とするマグニチュード5.4の地震(最大震度5強)。同日昼過ぎには鹿児島県トカラ列島を震源とするマグニチュード4.4の地震(最大震度4)……。一つひとつを挙げてみれば、大騒ぎするにも値しない日常的な地震に過ぎず、目立った被害も出ておりませんが、こうも立て続けに発生すると、何やら地の底で不気味なものが蠢動を始めたような、落ち着かない気分にさせられます。これら頻発する地震が、数値上は高い確度で予想されている「東海地震」や「首都直下型地震」の前兆だとは申しませんが、そうした「災厄」はいつ起こっても不思議のないものだ……と、考えておいたほうがいいのかもしれません。

それはそれとして――今回も、直近の話題の中から興味深いニュースをいくつかご紹介して参りましょう。まずは、5月10日付けで「R.E.port」に掲載された「『夢追う若者向け』シェアハウスが好調」( https://www.re-port.net/article/news/0000072450/ )というタイトルのニュースから。当コラムでも何度か取り上げたことのある、福岡県の(株)三好不動産の話題です。以下、全文を引用します。
「(株)三好不動産が展開する若者向けシェアハウス『TOKYO<β>(トーキョーベータ)』。入居率は最高9割を超えるなど好調だ。
 同社は2020年末、米国の投資ファンドであるローン・スター・ファンドのAM会社ハドソン・ジャパン(株)と業務提携契約を締結。『かぼちゃの馬車』物件の再生に乗り出した。
 かぼちゃの馬車は『シェアハウス』をうたっていたが、共用部は手狭で最低限の水回り設備があるのみ。入居者同士が交流できるリビングもなかった。にもかかわらず賃料は周辺相場よりも割高で、多くの物件で空室が発生していた。その一方で、建物は築浅、個室でプライバシーが保たれている。物件の多くは最寄り駅から徒歩15分圏内に立地し、交通利便性も高かった。『物件のポテンシャルは必ずしも低くない。工夫すれば入居者を獲得できると考えました』(同社東京支店支店長・森岡 誠氏)。
 そこで、一部の物件を除き、旧ブランドの『女性専用』というコンセプトを撤廃。性別・国籍問わず『夢を追い上京する若者』を新たにターゲットに据えた。賃料は周辺相場よりも安価な3万〜6万円台に設定。全物件に家具・家電を完備した。
 手狭な共用部というウィークポイントを補うため、スマートロック、シェアモビリティ等の提携サービスを付帯。若者の夢を応援する施策として、クラウドファンディングの活用講座、セルフコーチングに関するプログラム等も用意した。さらに『気に入った場所が見つかるまで何度も転居できるように』(同氏)と、最短入居期間を3ヵ月に設定。トーキョーベータの他の物件への転居であれば、退去費1万円でいつでも住み替え可能とした。(2023年5月10日更新)」
なお、本文の末尾には「物件再生までの道のり、商品設計など詳細は(株)不動産流通研究所が発行する『月刊不動産流通2023年6月号』の『ココに注目!!』を参照」とあります。興味をお持ちの方は、リンク先から注文されることをお薦めいたします。三好不動産といえば、以前ご紹介した「令和のトキワ荘プロジェクト」をはじめ、さまざまな実験的な取り組みを推進しており、今や首都圏でも着実に知名度を上げている注目の企業です。同社の特徴は、畑違いとも思える異業種との積極的なコラボレーションにあることは以前も申し上げましたが、今回の記事では「入居率は最高9割を超える」と具体的な数値を記述しているなど、いよいよ結果のほうも伴ってきたようです。今後とも注目していきたい、今もっとも元気のある企業の一つと言っていいでしょう。

次に、5月9日付で東京都が発表した「『空き家活用支援事業』の事業者募集( https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/05/09/04.html )」という話題。当コラムでも何度か取り上げてきた、いわゆる「空き家問題」について、いよいよ東京都が重い腰を上げたようです。具体的には、きたる5月24日から、東京都が掲げる「政策課題解決型空き家活用支援事業」および「地域課題解決型空き家活用支援事業」の事業者募集を開始するとのことです(応募受付期間は6月23日までの1ヶ月間)。
このうち、前者は2022年に策定された“東京における空き家施策実施方針”を踏まえて、新たに、活用されていない空き家を「東京ささエール住宅」や子育て向けの住宅等、住宅政策の課題解決につながる用途に改修する取り組みを行なう民間事業者(グループ可、空き家を所有する個人も可)等を支援する――というものです。支援の内容は「空き家の改修費(=ハード経費)」として補助対象となる事業費の3分の2(上限額250万円。耐震改修工事を実施する場合はさらに200万円を上限に上乗せ可能)ということで、選定予定件数は6件。なお、事業期間は補助対象事業決定から2023年度末までとなっており、事業者から提出された事業提案書およびプレゼンテーションにより選定委員会が審査・選定するとのことです。
一方、後者はやはり“東京における空き家施策実施方針”を踏まえて、2023年度より新たに区市町村と連携して空き家の利活用を通じて地域の活性化や移住・定住の促進等、地域の課題を解決するための取り組みを行う民間事業者(グループでも可)等を支援するというもの。つまり、「個人」は対象外となっています。後者については、シェアハウス大家さんが直接関与する可能性は低そうですが、改修費に加えて「空き家の掘り起こし等=ソフト経費」に対しても補助率が設けられており、事業期間も補助対象者決定から5ヶ年と長期に及び、選定予定件数は4件となっています。いずれも、詳細については東京都のホームページに掲載されておりますから、興味のある方は前出のリンク先をご参照ください。

次に、5月10日付で不動産情報サービスのアットホーム(株)が発表した、「2022年度 アットホーム人気の駅ランキング 東京都編」( https://athome-inc.jp/news/ranking/station/ranking-station-tokyo-2022/ )について。これは、同社が運営する『不動産情報サイト アットホーム』で2022年1月1日〜12月31日の期間中、「物件詳細ページのPV数が多い駅順」のランキングになります。これによると、賃貸物件の総合1位は、東京都町田市にある「町田駅」(JR横浜線、小田急小田原線)とのこと。同駅は、「新宿駅」「横浜駅」のどちらへも約30分で通勤可能な交通の利便性に優れ、さらに駅周辺は大型商業施設や飲食店が集積する一大商業地を形成しています。以下、5位までのランキングは、2位が東京都三鷹市の「三鷹駅」、3位が東京都武蔵野市の「吉祥寺駅」と東京都世田谷区の「三軒茶屋駅」(東急田園都市線、東急世田谷線)、5位が東京都八王子市の「八王子駅」となっており、1位を除いてJR中央線沿線の各駅が上位を占める結果となりました。
また、売買物件では、総合1位が東京都葛飾区の「新小岩駅」。以下、2位が「町田駅」、3位が「八王子駅」、4位が東京都葛飾区の「金町駅」、5位が「三鷹駅」となっています。賃貸・売買とも、上位5位以内に23区の都心部に所在する駅名がまったく上がってこないのは、ここで言う「人気」の意味が「理想的」なイメージとしてではなく、きわめて「現実的」な選択肢として選ばれているということでしょう。敢えて言えば「妥協」の産物なのかもしれませんが、それだけ東京都の賃料(および物件購入価格)が高騰しているということが改めて実感されます。

その傍証となるのが、5月12日付で(公財)東日本不動産流通機構が発表した「2023年4月の首都圏不動産流通市場動向( http://www.reins.or.jp/pdf/trend/mw/mw_202304_summary.pdf )」です。これによると、同月の首都圏中古(既存)マンション成約件数は2,954件(前年同月比4.5%減)と、3ヶ月ぶりに前年同月を下回りました。都県別では、東京都1,559件(同6.6%減)、埼玉県322件(同3.3%減)、千葉県365件(同3.1%増)、神奈川県708件(同3.9%減)で、千葉県以外はすべて前年同月比減少となり、埼玉県は16ヶ月連続で前年同月を下回っています。1平米当たりの成約単価は2020年5月からまる3年間、36ヶ月連続で前年同月比プラスとなり、成約価格は2020年6月から35ヶ月連続の前年同月比プラスとなっています。さらに、新規登録件数は前年同月比21.3%増、在庫件数は同22.0%増の大幅増となっており、中古マンション市場には「売れない高額物件」がだぶついていることがわかります。
また、既存戸建てでは同月の成約件数は前年同月比10.0%減で16ヶ月連続前年同月を下回り、成約価格は30ヶ月連続で前年同月を上回っています。こちらもまったく同様の市場動向にあると言えるでしょう。

物件価格の高騰と在庫件数の増加は相関関係にありますから、このまま市場に中古物件があふれれば、いずれどこかの時点で価格は下落に転じるものと予想されます。ただし、その時には「暴落」というリスクも考慮しなければならないでしょう。その意味で、手持ちの不動産を売却しようとお考えの方にとっては、今は間違いなく逆風の時期。売買のタイミングを見誤れば、最悪、全財産を失うことにもなりかねません。リスクの高いキャピタルゲインを考えるよりも、今はインカムゲインに徹したほうが賢明だと言えるのではないでしょうか。不動産のシェアハウス化は、残念ながら万能の特効薬とはなり得ませんが、少なくとも有効性の高い選択肢の一つではあると考えていいと思います。
前
第113回 人口減少問題とシェアハウス
カテゴリートップ
新・今月の不動産コラム
次
第111回 需要回復とシェアハウス

ログイン

ユーザー名:

パスワード:


パスワード紛失


シェアハウス大家さん
倶楽部(無料)

シェアハウスで不動産投資に踏み出すサラリーマンやOLの皆様を応援する会員制プログラムです。ご登録いただくと各種不動産投資情報やサービスを無料提供致します。
入会申込(無料)