9月14日に行われた民主党代表選では、おおかたの予想を覆す大差で菅直人現首相が再選を果たしました。昨年9月の政権交代からわずか1年で首相が3人替わる、という茶番劇を見ずに済んだのは幸いでしたが、結果的に大差がついたとはいえ、国会議員票に限っては412P対400Pという僅差での決着であったこともご承知の通り。菅首相再選を受けて、同日さっそく1ドル82円台に高騰した円相場は、翌15日に財務省と日銀が介入したことで85円台までの回復を見せましたが、まだまだ当面は予断を許さない状況が続きそうです。
さて、今回からは少し目先を変えて、不動産市場を取り巻く社会環境や経済の動向について、シェアハウスにフォーカスした切り口で論じていきたいと思います。これまでにも当コラムで何度か触れてきましたが、シェアハウスの社会的な認知度はますます高まっている一方、既存のアパート・マンションにおける賃貸経営はいよいよ苦戦を強いられています。これらの不動産オーナーや不動産投資家が、こぞってシェアハウス市場に参入してくれば、これまでとは比較にならないほど競争が激化することは間違いないでしょう。すでに、その予兆はあちこちに現れているのです。
たとえば、
(財)日本不動産研究所(JREI)が9月13日に発表した
「住宅マーケットインデックス2010年上期」の調査結果によれば、分譲マンションの価格は、都心5区の大型タイプ(80平米以上)の新築が前期比25.3%増、中古が同18.8%増となったのを筆頭に、すべてのタイプで価格が上昇しています。その一方で、同調査では賃貸マンションの賃料がすべてのタイプで下落していることも指摘しています。
また、9月8日に
(株)ファーストロジックが発表した
2010年8月期の「投資用・居住用不動産の市場動向」でも同様の結果が出ています。同社のデータによれば、投資用1棟物件の表面利回りはRC造マンションで9.06%(前月比▲0.07ポイント)SRC造マンションで9.38%(同▲0.81ポイント)。投資用区分所有マンションの表面利回りでは9.99%(同▲0.14ポイント)となっており、物件価格の上昇で投資用マンションの表面利回りが低下している現状が如実に表れています。
こうしたなかで、
国土交通省が9月9日に発表した
「住宅着工統計による再建築状況の概要(平成21年度分)」を見てみると、再建築による住宅戸数は、全体では前年比1.29倍とまずまずの堅調。しかし、利用関係別の再建築の割合で見ると、持家が同0.90倍と微減なのに対し、貸家は同2.27倍、寮・社宅などの給与住宅は同1.39倍となっており、貸家に建て替えられた住宅戸数が大幅に増加していることが分かります。貸家のほとんどはマンションかアパートでしょうが、これだけ利回りが悪化している現在、シェアハウス化を検討している、あるいはすでにシェアハウス化に踏み切った物件も決して少なくないものと思われます。一般賃貸の利回りが軒並み低下していくなかで、利益率の高いシェアハウス事業への参入は今後さらに拍車がかかることが予測されます。
次回も引き続き、シェアハウスをめぐる環境について考えていきたいと思います。