当コラムでは便宜上、シェアハウス以外の、アパート・マンションといった居住用賃貸物件を「一般賃貸」と呼んで区別していますが、じつは、法的な意味でシェアハウスと一般賃貸の間に明確な線引きはありません。というより、シェアハウスに関する法整備はまだまだ未発達であり、いわば法的な裏付けがきわめて曖昧なまま運用されているというのが実態です。したがって、一般賃貸に対する法規制の動きがあれば、それはそのままシェアハウスにも適用されると考えた方がいいでしょう。
さて、一般賃貸における最近の動きとしては、去る10月5日、いわゆる「
めやす賃料表示制度」がスタートしています。これは
(財)日本賃貸住宅管理協会(日管協)の主導により、大手を中心に複数の不動産関連企業を巻き込んで普及を進めているものです。同制度は「借主が賃貸借期間中に支払う金額をわかりやすく示す」をコンセプトに、「賃料」「共益費・管理費」「敷引金」「礼金」「更新料」などの4年分の合計から1ヶ月当たりの金額を算出して表示する、というもの。わかりやすく言うと「消費税の総額表示」みたいなものでしょうか。家賃以外に発生するさまざまな諸費用をあらかじめ明示しておくことで、借主との訴訟などのトラブルを避けるのが狙いとみられています。
近年、高裁での賃貸住宅の更新料を「無効」とする判決が相次ぎ、年内に予定される最高裁での判決が注目を集めているのはご存知の通り。一部のマスコミ報道では、現在サラ金業界を吹き荒れている「過払い訴訟ブーム」の賃貸住宅版を予測する声も出ているようです。たしかに、これまで何十年にもわたって徴収してきた更新料を、過去にさかのぼり利子をつけて返還するよう求められれば、ほとんどの大家さんが破産するしかなくなります。そうなることが見えているだけに、最高裁もよもや、そこまでうかつな判断を下すことはないと思われますが……。
ただし、大家さんの中には、賃貸経営の前提として礼金や更新料による収入を見込んでいる方も少なくありません。こうした方々は今後、利回り設定や銀行への融資返済計画を見直す必要が出てくるでしょう。また、不動産会社にとっても、更新料の一部は更新事務手数料として収入源のひとつになっていますから、こちらへの影響も懸念されます。
日管協が「めやす賃料表示制度」を導入した背景には、借主と貸主との信頼関係の回復への期待があったようですが、めやす賃料の算出法や制度の実効性には疑問が残ります。特に「賃料など条件の改定がないと仮定」し「4年間賃借した場合」というくだり。実際問題として、4年もの間賃料改定をまったく行わないということは考えにくいですし、そもそも4年間同じアパート・マンションに住み続ける例も決して多くはないでしょう。日管協ではポスターやステッカーなど各種グッズを用意して、同表示制度の普及・拡大に努めていく模様ですが、一朝一夕にはこれを業界スタンダードとすることは難しいのではないでしょうか。
一方、10月28日には
(株)ニッセイ基礎研究所による恒例の「
不動産市況アンケート」の結果が発表されました。過去3年間の比較では、「現在の景況感」に改善が見られるなど最悪期は脱したものの、「6ヶ月後の見通し」については依然として慎重な見方が大勢を占めているようです。景況感にせよ見通しにせよ、こうした業界アンケートは将来の予測という意味ではたいした参考にはならないかもしれませんが、サラリーマン大家さんにとっては、多くの不動産専門家たちの現時点での市場感覚を知り、共有できるというメリットがあります。こまめにチェックされることをおススメします。
次回もこのテーマを続けさせていただきます。