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第29回 シェアハウスを取り巻く環境その7

12月13日から14日にかけて、菅直人首相の決断による「法人税5%引き下げ」の話題が巷を賑わせました。日本経団連・日本商工会議所といった財界の大御所は、これを企業の国際競争力強化、ひいては景気の回復につながると、諸手を挙げて歓迎ムードのようです。失政続きの現政権としては、ひさびさにポイントを稼いだ、と言いたいところですが……すでに各方面から指摘されているように、財源確保のメドが立っていない中での引き下げ強行は、見切り発車というよりフライング、つまり明らかな「ルール違反」であるとの見方もあります。現に、財界では菅首相の決断を歓迎しつつも、政府の提唱する景気回復策としての国内投資・雇用創出にはあまり積極的ではないようですし、特に中小企業では、その傾向が顕著であると思われます。5ヶ月ほど前になりますが、法人税の実効税率引き下げについて(株)帝国データバンクによる企業の意識調査が行われました。このとき、企業の7割超が実効税率を「引き下げるべき」と回答していた一方で、じっさいに引き下げが行われた場合、引き下げ分を何に充当するかという質問に対しては、1位「内部留保」25.6%、2位「借入金の返済」16.8%となっていました。企業の立場からすれば当然の回答ですが、こうした現状を踏まえて今回の政府施策を鑑みると、経済効果という点では即効性が見込まれず、むしろ個人増税による消費の冷え込みや、財源不足をあがなうための必然的な国債の濫発を招くだけのような気もします。法人化されているオーナーさんはともかく、他に本業を持つサラリーマン大家さんの場合、今回の実効税率引き下げによる恩恵は、あまり期待できないと思った方がよいかもしれません。

さて、不動産市況の動向に注目してみると、(財)東日本不動産流通機構が12月10日に発表した東日本レインズにおける「2010年11月度Market Watch」では、首都圏中古マンションについて、前月に引き続き「成約価格上昇(11ヶ月連続)」「新規登録件数増(8ヶ月連続)」「成約件数減(7ヵ月連続)」という状況を示しています。特に平均成約価格は1年前に比べて200万円以上の上昇となっており、とりわけ東京都では350万円以上の急上昇を示しています。この、月当たり30万円近い値上がりを見れば、右肩上がりの好調な市場であり、売り急ぐのがバカバカしくなってきそうですが、もちろんここには数字のマジックがあります。ヒントは新規登録件数の増加。同じ1年間に新規登録件数は首都圏全体で約1,900件の増加ですが、このうち1,200件以上を東京都が占めています。ここで思い出されるのが、1年ほど前の駆け込み需要です。政権交代直後から住宅ローン減税の見直し・大幅縮小がささやかれていたこともあり、ちょうど値崩れしていた新築マンションを購入する人が急増しました。彼らのうちの何%かがローンの負担などからこれを手放すと、どういう現象が起きるか? 市場には、築年数が浅く、設備も新しく、しかも好立地の中古マンションが出回ることになります。増加した1,200件のうち、何割かはこうした新築同様の高額物件であり、減少傾向にある成約件数の大部分がこれらの高額物件に集中していると考えれば、平均成約価格の月当たり30万円近い値上がりも納得できるでしょう。

ちなみに、12月14日に(株)不動産経済研究所が発表した11月度の「首都圏のマンション市場動向」によると、新築マンションについても供給・契約率・価格が前年同月比で上昇し、在庫数が前月末比で減少、即日完売物件が4棟出るなど、まずまずの好調ぶりを見せています。しかし、今後の景気動向次第では、このうちの何%かが1年後には中古マンション市場に出回り、ふたたび数字のマジックを形成する一因となっているかもしれません。

次回もこのテーマを続けて参ります。
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