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第2回 防災対策とシェアハウス

震災から3ヶ月が過ぎましたが、被災地の復興は今なお遅々として進んでいない状況が伝えられてきます。その一方で、政局をめぐる与野党の攻防は依然として迷走を続けており、国民としては何とも頭の痛いお話です。国が頼りにならないからこそ、有名無名の個人や民間企業による支援活動がより重要性を帯びることになります。シェアハウス業界でも、震災直後の3月から、被災者に住居の提供を申し出る事業者がいくつも現れています。これらを純粋な善意による支援と称賛するか、商魂たくましいと見るかは人それぞれですが、ひとつ、忘れてはならないことがあります。

それは、シェアハウスが、現時点では必ずしも厳密に法整備された存在ではない、という事実です。こう申し上げるとやや語弊がありますが、たとえば、2008年に起きた「大阪個室ビデオ店放火事件」をご記憶でしょうか。当時、野放し状態であった「個室ビデオ店という名の簡易宿泊施設」は、あの事件をきっかけとして全国的に規制が強化され、消防法違反などで摘発される店舗が続出しました。
同じように、急速に増えつつあるシェアハウスの、どこか1件ででもこのような深刻な被害をもたらす事故や事件が発生すれば、それはたちまちシェアハウス業界全体に飛び火します。コンプライアンスを遵守している優良シェアハウスまで、いわれなき風評被害を受けることにもなりかねません。こうした事態を避けるためには、個々のシェアハウス事業者が自覚を持って運営に取り組むことが必要です。被災者を受け入れるにせよ、もし同情から安易に既存のハウスの空室に入居させるようなことをすれば、ハウス内の秩序を混乱させ、思わぬトラブルの原因となるおそれもあります。既存のハウスへの入居であれば、被災者であるなしに関係なく、従来通りの基準で人物本位の審査を行うこと。また、被災者支援を目的とするのであれば、新しくそのためのハコを用意し、その目的のためのシステムを作ることです。それはおそらくシェアハウスのノウハウを応用したものになるでしょうが、あくまでもシェアハウスとは別の賃貸住宅となるはずです。

いっぽうで、被災者以外の人々の防災意識も高まってきています。6月8日には、住宅購入を予定している層の震災による意識の変化を示す調査結果が2社からそれぞれ発表されました。
有楽土地(株)の行った意識調査では、62%が震災前後で住宅選びのポイントが変化したと回答しており、個々のポイントとしては「高台等、地盤の安全性」が25%で、「通勤等の交通の利便性」(同24%)を抑えて1位。また「防災面の充実度」が21%で3位となり、震災前の調査からほぼ倍増しました。この結果について、同社では「震災前は住宅選びのポイントとして、環境や眺望など生活の豊かさや利便性が重視されていたが、震災後には地盤の安全性や防災面の充実度に変化した」と分析しているようです。
(株)ホームアドバイザーの実施した調査では、75.4%が震災後の住宅の災害対策への意識について「高まった」と回答しています。また、震災をきっかけに住宅購入の意欲が「下がった」と回答した人は38.4%、逆に「購入意欲が高くなった」と回答した人は14.2%となっており、将来的な住まい方のスタイルについても意識の変化が見られました。

もちろん、これらの調査結果は、震災のショックが生々しいこの時期特有の傾向ということができます。たとえば「通勤の利便性」より「地盤の安全性」が重視される、といった極端な傾向は今後、ショックが薄れるにつれてふたたび変化していくことでしょう。しかし、一度芽生えた防災意識は、薄れはしても決して消滅することはありません。それは賃貸であっても同じことで、家賃や立地などの優先順位に変化はないかもしれませんが、それらに加えて「安全性」「防災対策」などの要素が、大なり小なり入居者の物件選びのものさしになってくることが予測できます。特にシェアハウスの場合、古民家のリフォームなど耐震性能に不安のある物件も少なくありません。万一、今後震災等でそうしたシェアハウスが被災した場合、前述したようにシェアハウス業界全体に波及するおそれもじゅうぶんに考えられます。こうした現状を踏まえ、これからのシェアハウスが備えるべき防災対策について、真剣に考える時期にきているのではないでしょうか。

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