第6回　復興とシェアハウス

あの東日本大震災から8ヶ月が経過しました。11月10日付の東日本大震災復興対策本部事務局の発表によれば、被災地では復旧が進み、避難所にいる避難者数は1,000人を割り込み、散乱ガレキは90％以上撤去されたとのことです。その一方で、依然として7万人以上の避難者が不自由な生活を送り、完成した仮設住宅のうち5,000戸以上が未入居のまま。寒さの訪れとともに、新たな問題点も浮上しており、冬場の電力使用ピーク時には再び電力供給不足が予測されています。じわじわと日本全国に拡大しつつある放射能汚染に加え、いつまた起きるとも知れない大地震への不安、迷走する政治経済の情勢など、まだまだ予断を許さない状況が続きそうです。今回は、震災の影響からの「復興」をキーワードに、不動産市場の動向について取りあげていきましょう。

まず、11月18日に（財）土地総合研究所は「不動産業業況調査（2011年10月実施）」の結果を発表しました。これは三大都市圏および地方主要都市において不動産業を営む企業を対象に、「住宅・宅地分譲業」「不動産流通業（住宅地）」「ビル賃貸業」の業種ごとに経営状況のアンケートを行い、指数化したものです。これによると、現在の経営状況は「住宅・宅地分譲業」「不動産流通業（住宅地）」が前回調査時（2011年7月実施）より悪化、「ビル賃貸業」はわずかに改善されたとはいえ▲30ポイント台での推移にとどまっています。さらに、3ヶ月後の経営の見通しはすべての業種で悪化しており、不動産業全般において先行きの厳しい業況が予測されます。ただし、「住宅・宅地分譲業」については『用地取得件数』が前回の▲5.6ポイントから10.0ポイントへとプラスに転じたほか、『在庫戸数』が減少し『販売価格の動向』がマイナスながら若干改善されるなど、いくつか明るい材料もみられるようです。

続いて11月21日、CBRE（シービー・リチャードエリス（株））はプレスリリースとして「東日本大震災に関するアンケート調査（第2回）結果」を発表しました。第1回調査は4〜5月に実施され、今回はそのフォローとして大震災と「企業の拠点戦略」および「不動産投資戦略」についてのアンケートが行われました。これらは東京のオフィスビルを対象とした調査ですが、プロの不動産投資家の現状分析や投資判断は、シェアハウス大家さんにとっても参考になると思います。たとえば、大震災でほとんど被害のなかった「都心部」では、前回調査に引き続き8割以上が『強気』または『やや強気』と回答しています。これはまあ当たり前としても、建物の老朽化が懸念される「周辺部」では『強気』と『やや強気』を合わせて前回の39％から58％へ増加。さらに、津波や液状化などのリスクを内包する「湾岸部」でさえ、『強気』『やや強気』が21%から33%に増加しました。CBREではこうした結果について「実際の被害が軽微であったことや、時間の経過によりリスク調査・検討が進んだことなどが投資スタンスに反映されたもの」と分析しています。さらに、震災の影響の深刻度に関しては『ほとんど影響はない』および『想定よりも影響は小さい』との回答の割合が67%を占め、これに『想定通り』を加えると94%に達することから、当初想定されていたさまざまな影響はほとんど顕在化しなかったものとみられます。

また、11月22日には、国土交通省による「主要都市の高度利用地地価動向報告（地価LOOKレポート）」が発表されました。これによると、調査対象150地区中11地区で地価の上昇が見られ、東日本大震災以前の2010年第4四半期以来3期ぶりに上昇地区数が2ケタに達しました。また、地価が横ばいの地区も増加し、調査対象地区の48％に当たる72の地区が上昇・横ばいを示しています。一方、下落した地区もすべて3％未満の下落幅にとどまり、3％以上の大幅下落を示した地区は3年9ヶ月にゼロとなりました。これについて国交省は「震災の影響が薄れつつあることを背景に、前回より落ち着きを増している」という見解を示しています。ちなみに、東京圏（1都3県）で地価の上昇を示しているのは神奈川県川崎市の元住吉地区と武蔵小杉地区のみ。その他の地区はいずれも横ばい、または3％未満の下落となっており、比較的安定して推移しています。当面は、地価の急激な乱高下によって物件取得に影響が出るようなことは考慮しないでよさそうです。

ところで、当コラムは今回が年内最後の更新となります。少々気が早いかもしれませんが、2011年のさまざまな反省点を振り返りつつ、きたるべき2012年への準備も怠らぬようにしましょう。