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第9回 地価公示とシェアハウス

民主党執行部ではここ数日、消費税増税を焦点とする論議が戦わされていますが、あいかわらず党内の意思統一さえほど遠い状態にあります。野田首相に至っては「消費税増税で景気が良くなる」「TPPはビートルズ」などと意味不明の迷言を吐きちらすばかりで、いよいよ解散総選挙に向けた最終段階に入ってきたようです。とはいえ、このままなしくずし的に「話し合い解散」から「大連立」というシナリオはカンベンしてほしいところ。どちらへ転ぶにしろ、今度こそは国民の民意を反映した新政権の誕生を祈るほかないようです。

さて、今年も例年通り、3月22日に国土交通省から「平成24年公示地価」が発表されました。今年度の最大の注目は、いうまでもなく東日本大震災と福島第一原発事故の影響でしょう。発表によると、昨年1年間の地価変動率(全国平均)は「住宅地」が▲2.3%(前年度▲2.7%)、「商業地」が▲3.1%(同▲3.8%)となっており、2008年のリーマン・ショック以降4年連続の下落となりました。とはいえ、下落幅は昨年以上に小さくなり、全国33都道府県で下落率が縮小しています。三大都市圏では、下落幅はおおむね▲1%台にとどまっており、ほぼ底を打ったと見てよさそうです。考えてみれば、もともと震災前までの地価動向はゆるやかながら回復の気配を見せていました。震災のため、昨年度前半には下落幅が拡大したものの、後半からは復興需要に支えられ下落幅はむしろ縮小傾向にありました。住宅地では、【フラット35】Sの金利優遇策や、住宅エコポイントなどの各種施策による需要の下支えにより、特に住環境が良好な地点や交通利便性の高い地点での地価回復が目立ちました。これに対して、商業地の需要はあいかわらず弱含みでしたが、耐震性に優れた新築大規模オフィスビルへの移転需要、REITによる不動産取得、商業地のマンション用地への利用などの動きがみられました。
(株)帝国データバンクの調査によると、2011年の企業の本社移転件数は全国で1万621社にのぼり、過去5年間で最多となっているとのことです。こうした需要により、商業地の地価もおいおい回復基調に向かうものと予測されます。ちなみに、住宅地の地価変動率を見ていくと、上昇幅の大きい上位10地点中9地点までが、宮城県の中にあって津波の被害を免れた高台の住宅地。逆に下落幅の大きい地点は上位10地点中3地点が宮城県の被災地で、5地点は液状化の被害が大きかった千葉県浦安市の住宅地でした。国交省では今回の結果について「大震災の影響で不動産市場は一時的に停滞したが、被災地を除き比較的早期に回復傾向を示している」と評価していますが、その一方で「円高、欧州債務危機等の先行き不透明感による影響もみられる」とも捉えています。

この今年度の地価公示について、業界団体や企業の経営トップがそれぞれコメントを発表していますが、いずれも「下落率の縮小傾向」や「震災からの復興の現状」に対しては一定の評価をしながらも、消費税増税をはじめとする昨今の政府の施策に対しては、疑問や批判、あるいは要望が多く目につきました。たとえば、(社)全日本不動産協会理事長の川口貢氏は「大震災から1年が過ぎても、経済、雇用等の環境は厳しく、未だ復興の先行きは不透明である」とコメントし、政府の復興施策に対して苦言を呈しています。また、(社)不動産協会理事長の木村惠司氏は、消費税率の引き上げを「先送りできない課題」と認めつつも、「住宅は豊かな国民生活の基盤であり、価格が極めて高額であることから、消費税率の引き上げにあたっては、住宅取得時の負担をこれ以上増やさない措置がとられるようお願いしたい」と強調しています。
(社)全国宅地建物取引業協会連合会会長の伊藤博氏も「(消費税税率の引き上げ法案に対して)国民の住宅取得時の負担をこれ以上増やさないように、他団体とも連携を図りつつ、関係方面に対する提言活動を展開している」と牽制しており、(社)不動産流通経営協会理事長の袖山靖雄氏も「国内外の経済の下振れリスクが継続している状況に鑑み、政府における予算・税制・金融等による継続的な政策支援を要望したい」と釘を刺しています。また、民間企業では、住友不動産(株)代表取締役社長の小野寺研一氏が「市場はおおむね震災前の水準に戻りつつあり、この回復感が今後の地価公示にも反映されてくるだろう」とプラスに評価していますが、そのうえで「年明け以降、株価は上昇に転じたが、景気の先行き不透明感は払拭しきれていない。景気回復とデフレ脱却のため地価の安定は不可欠であり、政府には住宅需要刺激策の継続、拡充を期待したい」と注文をつけています。

国交省といい、これらの業界団体といい、一介のシェアハウス大家さんから見れば「雲の上の存在」のように感じられるかもしれませんが、上流でのわずかな変化が、下流へとやってくるまでに大きな変化に成長していることもあります。身近な変化に機敏に対応するためには、変化の「おおもと」を常日頃からチェックする習慣を身につけておくとよいでしょう。

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