「三本の矢」でおなじみ、安倍政権の推進する経済政策「アベノミクス」ですが、さすがに半年近くも言われ続けておりますと、この言葉もプラスの意味だけでなく、マイナスの意味で使われるケースも増えてきたように思います。その典型的な例が、4月頃から騒がれ始めた「消費税還元セール禁止」問題。最終的にどのような結論に着地するのかわかりませんが、政府の意図は何であれ、少なくとも周囲に無用の誤解や混乱を招いた罪は免れません。「消費税還元」などの用語の使用禁止という、たんなる“言葉狩り”で終わるのではないかという懸念も指摘されており、中長期的に見れば安部政権にとっての瑕疵となりうることも予測されます。もちろん、野党各党の足並みが揃っていない現状では何ほどのこともないでしょうが……。
さて、将来はともかく、現時点ではアベノミクス効果によって景況感の上向きが続いています。直近に発表されたいくつかの指標をチェックしていきましょう。
まず、国土交通省が4月30日に発表した2012年度の「建設工事受注動態統計調査報告」(大手50社調査)と、2012年度および2013年3月の「建築着工統計」調査結果。前者は民間工事と公共工事、建築と土木のいずれもが2年連続の増加を示しています。民間工事では不動産業、卸売業、小売業などの非製造業が、公共工事では国の機関の増加が全体を牽引しているものと見られています。また、後者では「新設住宅着工戸数」および「新設住宅着工床面積」が3年連続で増加しており、特に2012年9月からは7ヶ月連続で増加中との結果を示しています。ただし、月別で注目したいのが「利用関係別」の統計で、持家については同じく7ヶ月連続で増加中なのですが、分譲住宅では一戸建てが増加しているのに対してマンションが大幅に減少し、その影響で7ヶ月ぶりに減少に転じていることがわかります。無論、目先の数値の増減に一喜一憂する必要はありませんが、マンションやオフィスビルなどの大規模建築物については、ある一定のラインを超えたとたんに市場は供給過多となり、空室率上昇 → 価格低下という負のスパイラルが待っています。その兆候を人よりもすばやく感じ取ることがリスク回避にもつながりますので、シェアハウス大家さんとしては、この種の市況情報に対しては常にアンテナを張っておくことが肝心です。
いっぽう、同じ4月30日には(一社)住宅生産団体連合会(住団連)が「2013年度第1回住宅業況調査結果」および、低層住宅に関する「経営者の住宅景況感調査」(4月度)結果を発表しています。前者は会員会社の支店・営業所・展示場の責任者を対象に、四半期ごとに住宅市場の業況感についてアンケート調査を実施しているもので、「戸建注文住宅」「低層賃貸住宅」両部門とも、総受注戸数・総受注金額のいずれもがプラスとなっています。ただし、顧客の動きや消費者マインドに関しては横ばい傾向が続いていることから、次の四半期のプラス見通しの根拠となっているのは、あくまで現場の景況感ではないかとの見方もできます。後者については、ちょうど1年前の当コラムでも取り上げていますが、同団体法人会員18社のトップに対して、戸建注文住宅、戸建分譲住宅、低層賃貸住宅、リフォームの4カテゴリについてアンケート調査したものです。こちらは、総受注戸数は8期連続、総受注金額は13期連続のプラスと順調な好況感を示しており、「政権交代を機に景気先行き不安が後退し、顧客マインドが改善している。(中略)消費増税前の駆け込みの本格化はまだ見えない」という指摘も見られるものの、全体的には「税制大綱公表後、消費税増税・住宅ローン控除等による来場・受注に影響が顕在化しつつある」「通年では過去最高を達成し好調」「アベノミクス景気による活性化」など、市場のプラス基調が継続しているとのコメントが多いようです。
消費税率が現行の5%から8%に引き上げられる2014年4月1日まで、残り1年を切りました。もともと、消費税率引き上げ法案自体は民主党の野田政権時代に可決されたものですが、法案成立当初は「実質2%以上の経済成長率の実現」というハードルをクリアできるかどうか疑問視する向きも多かったように記憶しています。そのことから考えると、これらさまざまな指標が示す現在の日本経済の景気回復ムードは、すべて消費税引き上げのための“お膳立て”にすぎない、という見方もできるのです。アベノミクスがその神通力を失うのも、もしかすると、それほど遠い日のことではないかもしれません。増税実施後には反動による景気の失速も予測されますから、シェアハウス大家さんも、現在の好況を貴重な準備期間と捉えておいた方が賢明ではないでしょうか。
第20回 脱法ハウス問題とシェアハウス |
新・今月の不動産コラム |
第18回 地価公示とシェアハウス2013 |
〜シェアハウス事業を企画から運営まで、トータルにサポート〜
運営会社:株式会社シェアスタイル | シェアハウス資産運用のご相談はこちら | シェアハウス管理物件のご紹介はこちら | 採用情報
Copyright © 2006-2015 ShareStyle Co.,Ltd. All Rights Reserved.
{$xoops_footer}>