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第21回 脱法ハウス問題とシェアハウスその2

先日行われた参院選は、大方の予想通り自民党の圧勝で幕を閉じました。多くのマスメディアが指摘しているように「消極的支持」――つまり、他に支持すべき政党がないため結果的に自民党に票が集まった、という側面もあるようですが、いずれにせよ、これで来年4月の消費税増税は不可避となったとみていいでしょう。アベノミクス効果も当初の神通力をすでに失い、TPP参加交渉会合も大詰めを迎えるなか、日本経済は大きな分岐点に立たされています。残された8ヶ月余りの日々をいかに有効に活用するかが、すべての国民に課せられた課題といえそうです。

さて、今回は前回に引き続き、「脱法ハウス問題」について取り上げてまいります。前回の時点ではまだ「マンボー」が槍玉に挙げられていた程度でしたが、その後、「脱法ハウス」というくくりで断続的にさまざまなニュースが報道されています。7月12日には、一般社団法人「マンション管理業協会」と公益財団法人「マンション管理センター」の業界2団体に対し、建築基準法違反の疑いのある物件についての情報提供を求め、同14日の時点で問題の脱法ハウスに類似する31物件を抽出。さらに、同日付の毎日新聞では次のような報道がなされました。ニュース記事はリンク先の保存期間が短いので、ふたたび引用にて紹介していきましょう。

「東京都江戸川区のマンションの一室で浮上した『シェアハウス』改築計画が実行に移された場合、消防法令に抵触し、マンション全体が大規模な消防設備の導入を迫られる可能性の高いことが東京消防庁などへの取材で分かった。改築に伴い、持ち主か管理組合が数千万円規模の導入費用の負担を余儀なくされるとみられる。同庁は『無届けで改築すれば結果的に消防法違反となるケースがあると知っておくべきだ』と指摘している。
 江戸川区のケースでは東京・銀座のシェアハウス運営業者が改築を主導。3LDK(63平方メートル)を共用スペースと12の極小の専有スペース(1.5〜3.2畳)に分割して貸し出す。業者は今年5月、懸念を示す組合に『違法性はない。これまで問題になったことはない』などと主張。『設置義務のある火災警報器は各室に一つずつ付ける』と説明していた。
 ところが、組合が消防に確認したところ、改築されると現在受けている消防法施行令の『共同住宅の特例』の適用から外れる可能性が高いと分かった。(中略)
 東京消防庁予防課によると、共同住宅で1戸の内部を極小の個室に切り分けて別々に貸すと、個室一つ一つを『1戸』と捉え直すことになる。これらが全て要件を満たさないと、共同住宅全体が特例から外れることになり、江戸川区のマンションも『シェアハウス化』によって消防設備の設置義務が生じる可能性が高い。
 しかも、延べ500平方メートル(都内は耐火構造でなければ200平方メートル)以上の共同住宅に必要な自動火災報知設備は、全ての部屋に感知器を設け、管理人室などに置いた受信機で集約する高額なシステム。運営業者が取りつけるとしている簡便な火災警報器とは異なる。
 組合役員の一人は『大変な負担だ。持ち主側が全額負担するとしても改築してほしくない』と不安そうに話した。同庁予防課は『一般論として特例から外れるかどうか、新たな設備が必要となるかどうかはケース・バイ・ケース。改築で間仕切りを変更する場合は必ず消防署に届け出てほしい』としている。(毎日新聞 2013年07月14日 11時09分)」

当コラムでも以前からたびたび指摘してきましたが、「一部の不心得者」が問題を起こせばシェアハウス業界全体に影響が波及する、という事態がいよいよ現実のものとなってきました。東京消防庁や国交省では、この「消防法違反」を前面に押し立て、これまでグレーゾーンにあった個々のシェアハウスに対して厳しい司法のメスを入れようとしています。次に紹介するのは7月19日付の同じ毎日新聞の報道です。

「居室が極端に狭く火災時に危険な『脱法ハウス』を巡り、国土交通省は19日、建築士や不動産業者、建設業者が設計や仲介、工事に関与することを禁じる通知を関係団体に出した。建築基準法違反が疑わしいと知りながら関与した場合、処分や罰則の対象になるとしている。国交省は実態調査を進めているが、『これ以上増える前に芽を摘む必要がある』と予防的措置に踏み切った。
 国交省は通知で、オフィスや倉庫と称して人を住まわせたり、マンションの一室や戸建て住宅を多人数が住めるよう改築したりした脱法ハウスは、建築基準法違反の疑いがあると指摘。情報を得た場合、速やかに自治体に伝えるよう求めている。
 その上で、建築士が設計に関与した場合、建築士法で懲戒処分の対象になると強調。違法性が疑われるのに借り主に告知せず紹介した不動産業者も宅建業法違反の可能性があるとした。建築基準法違反で自治体などから工事停止命令を受けても従わない建築業者も、処分の対象となると警告している。
 国交省は『現場に近い建築士や建設業者にはいち早く情報が入るはず。安全確保のため責任を果たしてほしい』としている。(毎日新聞 2013年7月19日(金) 21時03分)」

そして今日、7月25日の報道では、文京区音羽のマンションで「37平米の3LDKに6人が住まう」シェアハウスが「規約を無視した無断改築」として取り上げられました。同マンションでは管理規約に「ルームシェア禁止」と明記されていたらしいのですが……現時点では情報量が少ないため、この問題の是非を判断することは避けておきましょう。しかし、懸念していた通り、もはや「一部の悪質業者」だけの問題ではなく、「シェアハウスそのもの」が悪者扱いされる風潮がなってきています。すべてのシェアハウス大家さんにとって、当面はやりにくい状況が続くものと覚悟しなければなりません。
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