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第22回 脱法ハウス問題とシェアハウスその3

観測史上初めてといわれた記録的な猛暑がようやくやわらいだかと思えば、9月に入って、このところ不穏な天候が続いております。西日本を中心に集中豪雨や台風の接近に伴う被害が相次ぐなか、関東地方はそれでも比較的好天に恵まれていましたが、2日午後2時過ぎに埼玉県越谷市および千葉県野田市で竜巻が発生。ニュース画像をご覧になって衝撃を感じた方も多いと思いますが、住宅の屋根が吹き飛び、家屋が損壊する大きな被害をもたらしました。埼玉県・千葉県の集計によれば、重傷者2名を含む負傷者67名、建物の被害は547棟にのぼったとのこと。さらに4日午後1時過ぎには、栃木県内の矢板市・鹿沼市・塩谷町などで竜巻とみられる突風が発生し、3名が負傷、建物120棟に被害が出たといいます。被災地にお住いの皆様には心よりお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興をお祈りいたしております。

さて、荒れ狂っているのは天候ばかりではありません。このところシェアハウス業界を荒れ狂っている「脱法ハウス問題」は、依然として沈静化の気配もなく続いております。ここ最近は、アルバイトや来店客によるTwitterなどへの不適切行為の投稿問題、いわゆる“バイトテロ”の話題が盛り上がっていたこともあって、「脱法ハウス問題」の報道は一時期ほど見かけなくなりましたが、これは何ごとにも飽きっぽいマスコミの体質にすぎず、その後もさまざまな続報がもたらされています。

たとえば、8月2日には大阪市で首都圏以外では初の「脱法ハウス」が「摘発」され(嫌な言葉です)、市が立ち入り調査をしたというニュースが報道されました。続いて8月5日には、新宿区上落合にある女性専用シェアハウスの「元住人」として発達障害のある女性を取材し、いわゆる「貧困ビジネス」という視点からシェアハウス全般を俎上にあげようという記事が書かれています。そして、8月22日に報じられたのが次のニュースです。
「東京都港区麻布十番の分譲マンションの管理組合が、7階フロア(85平方メートル)を8人用シェアハウスに改築した所有者を相手取り、使用禁止を求める仮処分を22日にも東京地裁に申請する方針を固めた。フロアを所有する東京・日本橋の不動産業者は、施設の安全性などを確認しようとした区の立ち入り調査を拒んでおり、組合側は『建築基準法令違反が強く疑われる』と不信感を募らせている。マンションのシェアハウス化を巡る司法判断は初となる。
 マンションのルールを定める区分所有法は『住人の共同の利益に反する行為』を禁じる。権利を主張する所有者と組合の同種のトラブルは相次いでおり、裁判所の判断が注目される。
 マンションは築約30年で7階建て(16戸)。7階は元々1戸で占めており、今年4月に日本橋の業者が競売で落札した。業者は組合の反対を押し切り、7月末までに8室への改築工事を完了。既に入居者の募集も始めている。組合は『不特定多数の人に貸せばトラブルが起きやすくなり、マンションの平穏を害する』として争う構えだ。
 業者は、各室が7平方メートル以上確保し、窓もあることなどから『法令違反はない』と主張。工事完了後に管理規約を改正してシェアハウス化を禁じたのは『特定の所有者を狙い撃ちにして不利益を与えるもので、無効だ』としている。
 一方、組合の通報を受けた東京消防庁麻布消防署と港区建築課が8月6日に合同立ち入り調査をしようとした際、業者は消防のみ受け入れて区については拒否した。組合は『やましいことがないなら受け入れれば良い』と指摘。同区建築課は『実態として消防より権限は弱く、入居者の了承が「壁」になる。内部を現認しなければ調査は進められない』と困惑する。
 業者側は取材に『答えられる者がいない』としている。(毎日新聞 2013年08月22日 07時20分)」

すでにお気づきの方も多いと思われますが、前回・前々回にさかのぼるこれら一連の記事は、ほとんどが毎日新聞、それもほぼ特定の記者1名によって執筆されております。おそらくは彼が最初に取材した「脱法ハウス」の印象が悪すぎたためでしょうが、シェアハウス全般に対してやけに悪意ある表現が目につきます。もちろん、必ずしも彼が世論の代表ではありませんから、それほど気に病むこともないのかもしれませんが……。これも毎日新聞によると、8月26日には大阪市が2件の脱法ハウスに行政指導を行い、8月30日には大阪市から市民に対して脱法ハウスの情報提供を呼びかけています。

こうした動きの中で、日本シェアハウス・ゲストハウス連盟(http://www.jgho.org/) は8月14日、シェアハウス開設・運営を行う業者全体に向け、ガイドラインを公表しました。同連盟は2006年に発足した任意団体で、東京を中心に名古屋・大阪・京都などから34の業者が加盟しているそうです。これまで特に目立った活動は見られませんでしたが、今回の脱法ハウス問題を契機に国交省とのパイプを強化し、業界の代表として名乗りを上げようというのでしょうか。いっぽう、一般社団法人日本シェアハウス協会(http://japan-sharehouse.org/) では8月20日より、同協会の「認定ハウス登録之証」発行事業をスタートしました。この2つの基準がそれぞれ違っていることについて、上記の毎日新聞記者はまたまた揶揄気味に取り上げていますが……いずれにせよ、狭い業界内で主導権争いをしている場合でもないでしょう。シェアハウス大家さん一人ひとりが、これからのシェアハウス運営について考えていかなければならない時期にきているのです。
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