2013年はけっきょく、例の「脱法ハウス問題」を引きずったままで暮れていくことになりそうです。人の噂も75日――ひと頃に比べれば、さすがにこのところ少し下火になってきた感はありますが、その分話がややこしく、厄介なことになってきたように思われます。
たとえば、11月17日の「毎日フォーラム」に掲載された記事では、9月6日の国交省通知文にある、いわゆる「寄宿舎基準」をテーマに、以下のような論調で報じています。原文は長いので要点だけ抜粋してみましょう。
「『脱法ハウス』にとどまらず、例えば、4LDKの一戸建て住宅を間仕切り変更しないまま4人用のシェアハウスとしたようなケースでも『寄宿舎』と認定されることになった」
という前提条件を改めて明文化した上で、
「居室に採光窓を設けなければならない」「防火上主要な間仕切り壁を準耐火構造とし、天井裏に達するようにしなければならない」
「3室以下かつ100平米以下の空間を一つの区画とみなし、隣の区画や廊下と隔てる壁の防火性能を上げなければならない」
等々の、厳格な基準が定められたことで、
「あるシェアハウス運営業者は『7部屋ほどの一戸建てを改修するのに500万〜600万円はかかる』と試算した」
さらに、東京都建築安全条例の「窓先空地」の規定を引き合いにだし、
「都心部の住宅は隣家と密接して建っていることが多く、窓先空地のない物件をシェアハウスとして使用し続けようとすれば全面的に建て替えるしかない。運営業者からは『現実的ではない』と悲鳴が上がる」
といった調子で続いています。
今回の記事では、これまでの毎日新聞系の報道に一貫して見られた「シェアハウス=脱法ハウス=悪」的な決めつけがなく、どちらかといえばシェアハウス事業者に対して好意的な書き方になっており、行政の非を鳴らしているのが特徴です。
「『単身世帯率の上昇、空き家の増加といった社会問題の解決にシェアハウスはまさに「ドンピシャ」のはず。時代に逆行した規制だ』。あるベテラン業者は強い口調で国交省の方針を非難した」
「東京23区内のある自治体幹部は、これまで一戸建てを転用したシェアハウスの窓先空地が確保されていなくても黙認してきたことを明かし」
「一方、同省が所管する独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)の『ハウスシェアリング制度』を利用した物件は、『申込時にシェア相手と知人関係にある』との理由から『寄宿舎には当たらない』と認定されていることが判明し、民間業者の不公平感をあおっている」
等々、一転して国や自治体を悪者にした論調が目立ちます。とはいえ、一方的にシェアハウス側を悪者にしてきたこれまでのスタンスと同様に、こうした論調も大手マスコミの常套手段ですから、必ずしも無批判に歓迎するわけにはいきませんが……。
一方、11月23日付の毎日新聞紙上では、これに対する行政側の対応も報じられています。
「東京都は来年度、低所得者や高齢者など住宅を自力で見つけにくい『住宅弱者』をサポートする『居住支援協議会』を設置する方針を固めた。居室が狭く危険な『脱法ハウス』を巡り、国土交通省が今年9月に規制策を示したことで、施設からの退去者が多く見込まれることなども踏まえた措置。関係団体と連携し、スムーズな物件紹介を目指す。
2007年制定の住宅セーフティーネット法は、低所得者▽高齢者▽被災者▽障害者▽一人親世帯−−などの「住宅確保要配慮者」の住まい探しについて自治体ごとに支援協を設置できると定めている。住宅・福祉部局の他、不動産関係団体や社会福祉法人などの居住支援団体で構成し、情報を共有する。今年9月時点で全国の40自治体(30道県、10区市)に設置され、都内では豊島と江東、板橋の計3区にある。
(中略)
支援協設置を求めてきた『住まいの貧困に取り組むネットワーク』の稲葉剛世話人は『脱法ハウスなどから追われる人が安定した住まいを確保できるよう、開かれた議論で実効性ある対策を練ってほしい』と注文を付けた。(毎日新聞 2013年11月23日 09時50分〔最終更新 11月23日 11時42分〕)
ちなみに、上の記事中にも登場する「住まいの貧困に取り組むネットワーク」では、来たる11月30日(土)、「現代の居住貧困と居住支援」(
http://housingpoor.blog53.fc2.com/blog-entry-207.html) と題するシンポジウムを開催します。興味のある方は足を運ばれるのもよいでしょう。
一方的な上からの「締め付け」に悲鳴を上げているシェアハウス大家さんも多いと思われますが、だからといって拱手傍観しているわけにもいきません。行政や業界団体の動きをリアルタイムでチェックし、対応が後手後手に回らないようにすることが肝心です。