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第27回 規制緩和とシェアハウス

今年もまた、春の風物詩というべき「地価公示」の季節がやってまいりました。3月18日の国土交通省発表によると、平成25年1月以降1年間の地価変動率は、住宅地・商業地ともに全国平均では6年連続の下落となったものの、下落幅は前年より大幅に縮小されています。そして、三大都市圏では、住宅地・商業地とも6年ぶりに上昇に転じました。

これについて、国交省では「低金利や住宅ローン減税といった政策面での需要の下支えや、景況感の改善による住宅需要拡大が相まって、住宅地・商業地ともに全都道府県での下落率縮小や上昇転換の動きにつながった」と分析しています。住宅地の上昇率上位8地点はすべて東北地方の被災地であり、商業地では名古屋駅周辺で進行中の大規模再開発の影響で周辺地点の上昇が目立ちます。これらに比べて上昇率では目立たないものの、もともと地価相場の高い東京23区では、そろそろ地価上昇の影響が深刻になりつつあります。住宅地では利便性が高く住環境に優れた都市部の上昇基調が顕著になり、商業地では都市中心部の高度利用や再開発が進んでいるエリアでの上昇基調が強まっています。シェアハウス大家さんにしてみれば、現に保有している不動産の資産価値が高まるのは大歓迎でも、今後新たに不動産を取得することを考えると、地価上昇も痛しかゆしといったところでしょう。

いささか懸念材料といえるのは、今回の地価公示を受けての不動産業界内の反応が「政府の金融政策の成果」として全面的に支持する一方で「今後も一層の政策支援をお願いしたい」とやや他力本願ともいえるコメントが目立つところでしょうか。むろん、大手デベロッパーや業界団体のトップといえども単体でできることなどたかが知れているのでしょうが、もう少し「自分たちの力で何とかする」という姿勢を見せてほしい気がします。

さて、政策支援の恩恵など望むべくもないニッチ産業であるシェアハウス業界ですが、ここにきてようやく、「朗報」がもたらされることになりました。すでに皆様もご存知でしょうが、一連の「脱法ハウス問題」に端を発して昨年9月に国交省が提示していた、いわゆる「寄宿舎ルール」が、3月24日についに撤回されることになったのです!

この「朗報」を、皮肉にも昨年の「脱法ハウス問題」以来一貫してアンチ・シェアハウスの論調を展開してきた毎日新聞が報じています。「<シェアハウス>寄宿舎並み規制を撤回へ 国交省」というタイトルのこの記事を、例によって全文引用してみましょう。

「国土交通省は、事業者が管理して複数人を住まわせる『シェアハウス』などに適用する『寄宿舎』の規制緩和に乗り出す方針を固めた。建築基準法施行令の改正を検討する。同省は昨年9月、狭く危険な『脱法ハウス』への対策として寄宿舎基準を一律適用するよう自治体に通知したが、事務所や倉庫と称して細かく仕切った施設に住まわせるケースだけでなく普通のシェアハウスも規制対象となるため、廃業の続出などが懸念されていた。
 寄宿舎には一般の住宅より防火性能の高い間仕切り壁を設けることなどが義務付けられており、東京都内は条例で『火災時に各室の窓から下りて避難できるよう敷地内に数メートル幅の空き地を設けること』なども求めている。シェアハウスの多くは戸建て住宅を再利用していることからこうした規定を満たさず、業界では通知の日付を取って『9・6ショック』と呼ばれるなど波紋が広がっていた。
 火災が相次いだグループホームなどの社会福祉施設も寄宿舎扱いだが、規模に関係なく2015年4月からスプリンクラー設置を義務付ける一方、太田昭宏国交相は今月の参院予算委員会で、これに合わせて間仕切り壁などの規制の緩和を検討していると表明。17日の参院国土交通委員会で『シェアハウスも今回の緩和の検討対象に含まれる。安全確保を大前提にどのような緩和が可能か検討する』と述べた。
 具体的には、建物の規模が小さいことや避難が容易な構造となっていることなどを条件に、寄宿舎に求められる基準を全て満たさなくても認めるよう施行令を改正するとみられる。新たな基準作りについて、外部有識者らによる会議を設置することも検討する。
 昨春に『脱法ハウス』の問題が報道されて以降、同省は今年1月末までに疑いのある1603物件を調査。結論の出ていない785件を除く818件のうち671物件(82%)で違反が見つかっている。同省によると、違反戸数は約1万戸に上ると推計される。(毎日新聞 2014年03月24日 15時04分)」

文面からこれを書いた記者の私情がにじみ出てくるような、なんともモヤモヤする記事になっています。文末の一節は、今回の報道とは直接関係のない情報であり、これを結論に持ってくるのは明らかに意図的な印象操作でしょう。上記の記事中にはご丁寧にもわざわざ「【脱法ハウス】記者が暮らした1・6畳の空間を写真特集」などというリンクを貼っているほどですから……。

ただし、今回寄宿舎ルールが公式に撤回されたといっても、もともと「遵法ハウス」を運営されているシェアハウス大家さんにとっては本来関係のない話です。これからも、これまで通り法律を遵守し、健全なハウス運営に取り組んでまいりましょう。
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