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第28回 メディア報道とシェアハウスその2

GWも終盤の5月5日早朝、東京都心部で震度5弱を観測する強い地震が発生しました。東京23区で震度5弱クラスの揺れを観測したのは、2011年3月11日――あの東日本大震災以来のことだそうです。気象庁の発表によれば「震源地は伊豆大島近海、震源の深さは162キロ、地震の規模を示すマグニチュードは6.0と推定される。関東平野の地下深くに沈み込んでいる、太平洋プレートという岩盤の内部で起きたとみられ、想定されている首都直下地震とは震源が異なり関連性は低い。震源が深いため、余震はほとんど起きないとみられる」とのこと。幸い、それほど大きな被害も報告されていませんし、早い段階で「余震や津波の心配はほとんどない」と発表されたため、特に混乱をきたすこともありませんでしたが……早朝の大きな地震、ということで、あの阪神・淡路大震災を連想した人も少なくなかったのではないでしょうか。そして何より、以前からそれこそ“耳にタコができるほど”くり返し警告されてきた「首都直下地震」の脅威が、改めて現実味を帯びてきたと感じた方もいらっしゃるかもしれません。

さて、前回の当コラムで「国交省がいわゆる“寄宿舎ルール”を撤回」という報道を取り上げましたが、これに追随するように、シェアハウスを肯定的に取り上げている記事をさまざまなメディアで見かけるようになりました。また、前々回のコラムで「アンチ・シェアハウスの毎日新聞系に対して、シェアハウス擁護派の朝日新聞系」という図式をご紹介しましたが、ここへきて、毎日新聞系のスタンスこそ変わらないものの、朝日新聞系以外でもシェアハウス肯定派に回るメディアが増えてきたようです。

そのひとつ、5月1日付の外資系ニュースサイト『TechinsightJapan』の記事を一部引用してみましょう。
「家づくりサービスのSuMiKaが、夢のようなシェアハウスに住むwebクリエーターの男女3人を募集している。テレビ番組『テラスハウス』の人気もあり、若者の間で話題になっている『シェアハウス』だが、今回のそれは“webクリエーターのシェアハウス付き採用”を目的とした企画となっている。それだけに、家賃は0円という普通ではあり得ない待遇で、条件を満たす者には理想的なシェアハウスプランだ。SuMiKaが企画した今回のシェアハウスプランは、webクリエーター(デザイナー、マークアップエンジニア、サーバサイドエンジニア)の男女3人を採用するもの。同時にwebクリエーターが住みたくなるような“びっくりシェアハウスプラン”を用意している(後略)」
これなどは「クリエーター募集」という案件に絡んだ特殊なケースであり、「家賃0円」というフレーズからもわかるように、一般的なシェアハウスビジネスとは無関係と考えた方が良いのでしょうが、シェアハウスの話題性を前面に押し出した肯定的な内容の記事の例として紹介しました。

ほかにも、4月30日付の宮城県仙台市の地方紙『河北新報』の記事に、こんなニュースがありました。
「宮城県石巻市の中心商店街に、店舗の空き部屋を改修したシェアハウス『八十八夜』が誕生した。東日本大震災の被災地ボランティアらが気軽に借りられる住まいを用意し、若者の移住も促す狙い。完成を祝うイベントが29日にあった。利用は5月7日に始まる。
 シェアハウスは老舗茶店『高橋園』の2階部分で、中長期向けの個室2部屋と短期向けの相部屋(最大5人収容)。名称は茶店にちなんで茶摘みが始まる時期から発想し、コメを作るように手を掛けて育てていく思いも込めた。
 開設したのは、まちづくり団体『ISHINOMAKI(石巻)2.0』。ボランティア活動などで一定期間滞在する場合、通常の住宅賃貸契約は難しいことから、店舗などの空きスペース活用を発案した。
 今のところ個室に4人、相部屋に8人が申し込んでいる。昨年5月に八戸市から来て、IT関連の地域活動をしている嶋脇佑さん(24)は個室希望で『商店街の中で暮らせるのが魅力』と話した。
 石巻2.0の松村享子理事は『若者に住まいのニーズがあることは分かった。シェアハウスの空間を提供してくれる人を増やし、受け皿を整えたい』と語った(後略)」なお、この河北新報の記事を受けて、5月6日には朝日新聞にも関連するニュースが掲載されています。

さらに、リクルートの発行する無料住まい情報誌『SUUMO』のwebサイト「SUUMOジャーナル」では5月2日付で「川崎に完成した多世代型シェアハウス」についての紹介記事を掲載しています。この記事では、「一般にシングルが暮らすイメージのある『シェアハウス』。しかし、ここ最近になって『子育てシェアハウス』や『多世代交流シェアハウス』が続々と登場している。そこで気になるのは、住まいの様子やその暮らしぶり。オープン直後の現場に行き、物件が生まれた経緯や入居希望者の様子を取材してきた(後略)」という導入部からも察せられるように、シェアハウス大家さんにとってはやや今さら感のある内容ですが、一般向けのニュースとしてはまだまだ充分にバリューがあるということなのでしょう。

このように、シェアハウスに関するメディア報道は質量ともに間違いなく増加傾向にありますが、同時にそれは諸刃の剣でもあります。1年前の「脱法ハウス問題」のような逆風が、いつまた吹き始めないとも限りません。万一のときに巻き込まれないためにも、日ごろからメディア報道の風向きには注意を払っておくのが賢明でしょう。
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