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第30回 違法貸しルームとシェアハウス

7月22日に関東甲信越地方は梅雨明けとなりました。しかし、梅雨が明けたといってもあいかわらず大気の状態は不安定で、24日夕方からのゲリラ豪雨では首都圏に大雨洪水警報が発令され、一部の鉄道路線が運転を見合わせ、東京・千葉・埼玉の一都二県約7100軒で停電が発生しました。かと思えば、翌25日からは埼玉の熊谷などで最高気温36度を超える猛暑日が続き、春先に出された冷夏予想とは裏腹の厳しい夏の到来を体感させています。梅雨明け以前からすでに熱中症による被害も少なからず報告されていますが、今後はより一層の注意が必要です。シェアハウス大家さんの皆様におかれましては、ご自身やご家族はもちろん、ハウス住人の熱中症対策にも注意を喚起するようにしましょう。

さて、昨年9月のいわゆる「寄宿舎並み規制」に関連して、国土交通省の住宅局建築指導課では「違法貸しルーム」の立入調査を続けてきましたが、去る7月25日にその調査結果(http://www.mlit.go.jp/common/001048601.pdf) が発表されました。これは、2014年6月末時点までに国および地方公共団体に通報があった物件に対する調査で、調査対象物件数は1934件となっています。このうち、調査が完了しているのは1211件で、その81%を占める986件について建築基準法違反が判明しており、同法に違反していない物件はわずか76件でした。なお、建築基準法違反が判明した物件に対しては住宅局建築指導課による是正指導が入りますが、上記のうち是正指導準備中は40件、是正指導中は905件、すでに是正済みは41件となっています。ちなみに、調査対象物件のもっとも多い東京都は1489件と全体の約77%を占め、このうち943件が調査完了。約86%の810件が建基法違反で、この約92%の742件が是正指導中でした。

このような調査データを公表されてしまうと、まるで「シェアハウスの8〜9割は建基法違反に該当する」と言わんばかりですが……もちろん、そんなことはありません。何故なら、立入調査が行われたのは「もともと“建基法違反が疑わしい”として通報のあった物件」ですから、調査の結果、違反と判断された物件の割合が高くなるのは当然のこと。「シェアハウス全体の8〜9割」ではなく、あくまで「通報されたシェアハウスの8〜9割」ということになります。「寄宿舎並み規制」については、今年3月に国交省サイドから事実上の「規制緩和」のコメントが発表されており、その後も、法律不遡及の原則(実行時に合法であった行為を、事後に定めた法令によって遡って違法として処罰することを禁止すること)を適用することで、建基法制定以前に建てられた古民家を改造したシェアハウスが、寄宿舎並み規制の適用外と認められたというケースもあります。ただし、この事例は、事業者であるシェアハウス大家さんが自治体や消防署と何度も協議を重ねた結果勝ち取ったものだとのこと。したがって、所在する市区町村などの自治体、さらにはその担当者によっても、対応に差が出てくることを覚悟しなければなりません。もしも融通の利かない自治体や担当者にぶつかった場合、上記の例とまったく同じ条件でも建基法違反物件として是正指導の対象となる恐れがあります。

その一方で、国交省では増加する空き家問題の対策として、空き家となっている一戸建てなどの住宅を賃貸流通に仕向けるべく、新たな賃貸借契約の指針を3月に策定しています。これは「所有者が修繕を行わないで相場よりも安く賃貸し、入居者は自己負担で修繕や自分の好みの模様替えを行う」というもの。住宅局住宅総合整備課のコメントとしては「空き家の所有者には他人に賃貸するという選択肢があり、入居者には新しい賃借のやり方があるということを知ってもらうことで、双方の潜在的なニーズに働きかける」ことが指針の狙いであると説明していますが、安全面ひとつとっても、こうしたやり方が一般に拡大していくとはとうてい思えません。

なお、7月22日に(株)矢野経済研究所が発表した「住宅リフォーム市場に関する調査結果2014」(http://www.yano.co.jp/press/pdf/1271.pdf) によると、2013年に6兆9606億円(前年比12.4%増)だったリフォーム市場は、消費税増税を受けて2014年には約6.8兆円(同約2%減)となり、その後は次第に盛り返しを見せ、2020年には約8兆円まで拡大する、と予測しています。同調査ではリフォーム市場拡大の条件を、「新成長戦略」をはじめとする国の政策の後押しや、住宅ストック数の増加といった社会的要因に加え、リフォーム事業者の提案強化による単価アップなどによって市場が大きく活性化した場合、と定義していますが、もうひとつ、国による規制緩和の実施、あるいはせめて、規制がこれ以上強化されないことなども、無視できない要素といえるでしょう。
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