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第36回 年度替わりとシェアハウス

新年度がスタートしました。税制改正が実施され、自動車税の増税をはじめ、私たちの日常生活に直結する形で早くも影響が出始めています。4月1日の東京株式市場では日経平均株価が続落し、一時は3月12日以来約3週間ぶりとなる1万9000円台割れとなりました。これについては利益確定売りという季節要因があるとはいえ、今後の見通しについても「1万8500円程度までの調整はありうる」との見方も出ており、予断を許さない状況が続いています。そういえば前日の3月31日、安倍政権は「消費税増税の1年半延期を確定」という表現で正式発表していますが、そんなことは半年以上前から決まっていたことで、正しくは「1年半後の増税確定」と表現すべきでしょう。かえって誤解を生みそうな表現をわざわざ使用するあたり、逆に政府首脳の抱いている危機感が伝わってくるようです。

さて、国土交通省は3月25日、「不動産価格指数(住宅)」( http://tochi.mlit.go.jp/wp-content/uploads/2015/03/b464dc7845bf1dd3dafde9cbc03a5c47.pdf )の本格運用を開始しました。これは2012年8月から運用されていた不動産価格指数を「不動産価格指数の整備に関する研究会」での検討結果に基づいて改善したもので、2010年1〜12月までの算術平均値を100として指数化し、取引月から3ヶ月後に発表するというものです。これによると、2014年12月の全国の「住宅総合」の指数は102.5(前年同月比1.2%増)となり、「マンション」は115.8(同4.0%増)で22ヶ月連続のプラス。そして「住宅地」97.5(同3.0%増)、「戸建住宅」98.1(同2.0%減)となっています。東京都では、「住宅総合」106.3(同4.9%増)、「住宅地」104.6(同13.7%増)、「戸建住宅」97.3(同1.6%減)、「マンション」114.7(同4.9%増)となっており、戸建住宅の減少が目立っています。

一方、民間の調査機関である日本不動産研究所(JREI)は3月31日、2015年1月の「不動研住宅価格指数(既存マンション)」( http://www.reinet.or.jp/pdf/fudoukenjutakuhyouka/data01-20150331.pdf )を公表しました。こちらは2000年1月を100とする指数であり、調査対象は首都圏の既存マンション限定、調査月も違うため、単純に比較してもあまり意味がありませんが、首都圏総合で83.83(前月比0.32%減)と5ヶ月ぶりの下落、東京都でも91.00(同0.58%減)といずれも落ち込んでいます。前出の国交省の指数では「マンション」に新築・既存の区別がないことから、一部の高額な新築マンションが全体の価格をつり上げていると見ることができるでしょう。

この推測をある意味で裏付けるのが、同じ31日に国交省が発表した2015年2月の建築着工統計( http://www.mlit.go.jp/common/001085078.pdf )です。同月の新設住宅着工数は12ヶ月連続、新設住宅着工床面積は13ヶ月連続でいずれも減少していますが、分譲住宅ではマンションのみ3ヶ月ぶりに増加に転じており、しかも前年同月比23.3%増という大幅増加です。新築マンションの売れ行きの好調がさらなる着工を促し、同時に価格をつり上げているという図式が読み取れます。

これによって、いわば割を喰っているのが既存マンションをはじめとする中古住宅市場です。むろん、空き家問題はすでに十数年前から指摘されてきたことですが、ここへきて国交省も本腰を入れて対策に取り組み始めています。3月30日にとりまとめられた「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル報告書」( http://www.mlit.go.jp/common/001085066.pdf )は、2013年9月から1年半がかりで国交省が進めてきた中古住宅・リフォーム市場の拡大・活性化の取り組みの集大成です。同報告書では、(1)建物評価の改善と市場への定着、(2)良質な住宅ストックの形成とその流通を促進するための環境整備、(3)中古住宅市場活性化に資する金融面の取り組み、(4)戸建て賃貸住宅市場の活性化、(5)地域政策との連携、という5つの柱について、過去2ヶ年度におけるラウンドテーブルの議論を整理しています。このうち、シェアハウス大家さんに直接関係してきそうなのは(2)で、これについては「所有者等による住宅の適切な維持管理の促進」「インスペクション(建物検査)の普及」「中古住宅流通における事業者間連携の推進」「不動産ポータルサイトの役割」などのテーマについて検討されています。これらの議論を踏まえて、国交省では2015年度以降も継続して随時「既存住宅市場活性化ラウンドテーブル」を開催、関係者が相互に役割分担と連携を図りながら、中古住宅・リフォーム市場活性化に向けた取り組みを実行していくようです。

近年は「古民家再生」がちょっとしたブームになっており、古民家をシェアハウス化する試みも珍しくなくなってきましたが、建物自体に魅力のあるような古民家物件をはじめから狙って取得するのは素人には困難ですし、安全面や管理面での不安もあります。それよりは、ここで問題となっているような中古住宅市場にこそ活路が見いだせるかもしれません。
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