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第37回 メディア報道とシェアハウスその3

ちょうど1年前に書いた本コラムの冒頭が、2014年5月5日早朝、東京都心部で震度5弱を観測する強い地震が発生したというものでした。今年もここ数日、日本各地で有感地震が連続して発生していますが、国内よりもむしろ海外の大地震に注目が集まっています。4月25日に発生したネパール地震(M7.8)に続き、パプアニューギニアでも5月5日午前11時44分頃、M7.4の地震が発生しています。ちなみに、パプアニューギニアでは4月30日にM6.7、5月1日にM6.8の地震が起きたばかり。こうした世界各地の地震を前兆として、インターネット上では「5月11日に大地震が起こる!?」との“予言”がまことしやかにウワサされているそうですが……。

それはさておき――昨年のコラムでは、地震の話題の後、シェアハウスをめぐるメディア報道に関する話題を取り上げましたが、今回も偶然ながら同じ展開になります。まずは、かつて「脱法ハウス問題」をくり返し報道し、アンチ・シェアハウス派の急先鋒であった毎日新聞の記事から。

「シェアハウス:注目集める『猫付き』 保護猫の居場所確保」( http://mainichi.jp/select/news/20150429k0000e040164000c.html )というタイトルです。例によって主要部分を引用してみましょう。
「猫と一緒に住みたい1人暮らしの人向けに『猫付きシェアハウス』という物件が登場し、注目を集めている。通常は一つの住宅を複数の人が共有して住むものだが、そこに複数の猫も『同居』する。飼い主の高齢化による飼育困難などで行き場を失い、殺処分を前に保護された猫(保護猫)たちで、猫の保護団体と不動産業者が協力して運営する。住人は猫の命を救う居場所作りにも貢献できる。(中略)
 このシェアハウスを発案したのは、猫の殺処分ゼロを目指し、東京近郊の保健所や動物愛護センターなどから猫を保護する活動を行うNPO法人『東京キャットガーディアン(以下、TCG)』(豊島区)の山本葉子代表(54)だ。これまでにも猫と触れ合える開放型のシェルターや猫付きマンションなどを手がけ、年間約700匹の保護猫を新たな飼い主へ譲渡している。(中略)
 猫付きシェアハウスの第1弾は昨年9月に誕生した。TCGの活動に賛同する不動産会社『リビングゴールド』(杉並区)が物件を購入し、管理する。代表の藤堂薫さん(45)は『入居者のほとんどが猫を飼うのが初めて。猫と一緒に住める環境を整えることで、入居者は猫の習性を知り、世話を体験でき、実際に自分に飼えるかどうかも判断できる』と話す。
 このシェアハウスの広さは約40平方メートル。個室3部屋に加え、住人の共有部分としてリビングと台所などの水回りがある。そこに女性3人と猫4匹が生活する。猫たちは推定4〜5歳。不適切な飼い方によって飼い主の手に負えなくなるほど増えてしまった『多頭飼育崩壊』の現場から救い出された。各個室のドアには猫用ドアが付いており、猫は室内を自由に動き回れる。住人の一人、女性会社員(31)は『夜寝ている間に、猫たちに囲まれていることもあります』と幸せそうだ」(毎日新聞 2015年04月29日 09時45分)
 一読しておわかりのように、内容自体は、よくあるシェアハウスのコンセプト紹介記事に過ぎません。しかし、この記事が「毎日新聞に掲載された」ということには大きな意味があります。論旨はどちらかといえば「猫」が主役で、「シェアハウス」はその背景的な扱いではありますが、かつて毎日新聞でこれほど好意的にシェアハウスが取り上げられたことがあったでしょうか? これは、毎日新聞の「転向」と捉えることができそうです。

その一方で、上記の記事が毎日新聞に掲載される数日前、シェアハウスについてかつての毎日新聞を思わせる論調で取り上げている記事を、まったく別のところで見かけました。これはフジサンケイグループに属する出版社、扶桑社の発行する『週刊SPA!』に掲載されています。
「生活苦のため38歳でシェアハウス暮らし『精神的にも苦難の道』」( http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150426-00839680-sspa-soci )という、タイトルだけでも内容は推して知るべしでしょうが、こちらも一部引用してみます。
「インフレに賃金上昇が伴わなかった結果、日本では年収500万円の平均所得層にも『生活苦』が及んでいる。SPA!が年収500万円サラリーマン1011人に実施したアンケート結果によると、45%が『昨年よりも生活が苦しい』と回答。なかでも、固定経費である住居費は最も生活を圧迫しやすい。アンケートでも、78%の人が『家賃が重荷』と回答しており、生活苦の現状を浮き彫りにしている。(中略)
負担を少しでも軽くするために家賃の安い郊外に移住するという手もあるが、独身者であれば、住み方を抜本的に変えて家賃を下げ、都心に住み続けるという手段もある。入居者数70人という北千住のシェアハウスに引っ越した福留裕一さん(仮名・38歳)もその一人だ。(中略)
 風呂・トイレは付いているものの、部屋は3畳一間。ビジネスホテルを改装した同ハウスにはシアタールームや入居者が交流できる広めのリビングも完備されている。
『シェアハウスでは「今日、肉じゃが作ったので暇な人集まれ〜」みたいなノリがあるって入居時に管理人から言われ、これは食費が浮いていいな、と思ったんです。でも、よく考えたら38歳のオジサンが20代の若者の輪に入るには相当の勇気が必要。交流する勇気もなく、今では3畳の狭い部屋に引きこもって寝るだけです。早くここから出たいのですが、給料が上がる見込みもない。一生この暮らしかと思うと、夜も眠れなくなりますね』(中略)
『入居者同士のグループLINEがあって、その中で仲良くなることもあります。ただ、大半は「俺のシャンプーを勝手に使うな」「誰か化粧水使ったでしょ」とかのケチくさい話ばかり。学生が多いので、仕方ないとは思うのですが、38歳にもなって僕も同じレベルの人間なんだな、と思うと悲しくなってきます』アラフォーになってのシェアハウス暮らし。金銭的な苦しさの果てには、精神的な苦難の道が続いている」(週刊SPA! 4月26日〔日〕13時51分配信)

 シェアハウス=貧困という一方的な決めつけは、いかにもセンセーショナリズムが売りの同誌ならでは、という感じですが……考えてみれば、少し以前までの毎日新聞はこういう低俗週刊誌レベル(?)の論調を堂々と展開してきたわけです。それを思えば、上記の「猫付きシェアハウス」記事に見られる毎日新聞の転向は、業界にとっては決して悪くない兆候といえるかもしれません。
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