関東甲信越地方では去る7月19日、気象庁から梅雨明け宣言が発表されました。これに先駆けて、都心部では15日頃から連日のように最高気温35度を超える猛暑日が続き、22日現在で熱中症による救急搬送者は東京都だけで578人を数えています。さらに、24日夜に南大東島に最接近した台風12号は、沖縄本島を通過した後、九州の西を抜けて日本海を北上するコースが予想されています。これに伴い、西日本では局地的な大雨や強風が予想され、東日本では台風の運んできた暖かい空気の影響で猛暑が予想されています。今後も当面、猛暑や台風の季節が続きますので、シェアハウス大家さんとしては、日頃から個々の管理物件の安全対策を見直しておくことをおすすめいたします。
さて、いよいよ8月1日から、経団連加盟の大企業で2016年春新卒採用の選考活動が解禁されます。来春の就職戦線はリーマンショック以前の水準を回復したとされ、いわゆる「売り手市場」の中で、企業では優秀な人材をひとりでも多く確保せんものと、あの手この手で積極的な採用活動を展開しています。また、就活生側も安定志向が強く、大企業志望者が圧倒的に大多数を占めることから、地方から上京してくる就活生は例年になく多くなってくるものと予測されます。これを受けて、地方の大学は国立、私立を問わず、東京にサテライトキャンパスを設けて就活生を支援する動きが広がっており、さらに地方から上京した大学生を支援する民間の新サービスも誕生し、話題となっています。以下は、J-CASTニュースの報道記事(
http://www.j-cast.com/2015/07/20240165.html )からの引用です。
「(前略)地方の大学生にとって、就職活動で上京するのは容易ではない。『午前中に会社説明会に出て、次の説明会が午後5時。帰りの夜行バスが午後10時なので、スーツケースをコインロッカーに預け、バスに乗る前にデパートやファミレスのトイレで着替えることになる。その間、カフェを3軒くらい回ってエントリーシートを書いたり、時間をつぶさないといけない』(関西在住の女子大生)。地方の大学生にとっては、会社説明会や面接を受ける移動時間を調整する『拠点』の確保が一苦労という。(中略)
地方から上京した学生に『就活シェアハウス』を提供する会社も登場した。『地方のミカタ』というユニークな名前のこのベンチャー企業は、京大院出身の岩本洋樹社長(26)の就活経験から誕生。『私も東京と地元の往復を繰り返し、節約のため夜行バスで往復したり、ネットカフェに宿泊したが、好ましい環境でないと感じた。地方と東京の就活生の格差を埋めなければいけないという思いから、2014年5月に会社を設立した』という。
共同生活となる就活シェアハウスの利用者からは『住み始めて3週間になるが、この値段でこの立地条件の物件に住めるのは、ここだけだと思う』(沖縄県出身の男子学生)などの声が寄せられている。(後略)」(2015/7/20 11:30更新)
東京の大企業の就活支援だけではありません。逆に、地方において地域活性化や地元文化の継承なども視野に入れた就活支援を掲げているシェアハウスも現れはじめています。こちらはNHKの東北NEWS WEBの記事(
http://www3.nhk.or.jp/tohoku-news/20150720/5790551.html )からの引用です。
「新たに漁業を志す若者の住まいを確保することで漁業の担い手不足を解消しようと空き家を活用して作られたシェアハウスが石巻市などに完成し20日、公開されました。
このシェアハウスは三陸沿岸で漁業の担い手の育成に取り組む団体などが石巻市と女川町で空き家を改築して整備したものです。このうち石巻市北上町に完成したシェアハウスは、震災後に空き家となっていた築40年ほどの住宅を活用したもので3人が住むことができます。1部屋はおよそ8畳ほどの広さで、壁が白く統一されて清潔感があるほか、共有のリビングやキッチンも備え付けられています。
これらのシェアハウスではすでに入居の受け付けを始めていて家賃は、同じ広さのアパートの半額以下だということです。
入居を予定している塩釜市出身の30歳の男性は、『復興に貢献したいという思いで漁師を目指すことにしました。漁業にかかわる仕事があっても住む場所がなく転々としていたので、見つかって良かったです』と話していました。
シェアハウスを運営する『フィッシャーマン・ジャパン』の阿部勝太さんは、『次の世代に水産業を残していくためにも、まずは住んで働いてみてもらって、漁業の面白さや浜の魅力などを体験してもらいたいです』と話していました」(2015年07月20日 19時46分更新)
これは、前回の当コラムで紹介した「空き家対策」に加え、震災被災地の復興支援という側面もあります。東日本大震災の直後には、都心部などで被災地から避難してきた人たちを受け入れた一部のシェアハウスが話題となりましたが、このように世の中の動きに合わせて、さまざまな角度から「シェアハウスだからこそできること」を見つけ、迅速かつ柔軟に対応していくこともシェアハウス大家さんには求められます。「社会貢献」という言い方をすれば大上段に構えることになりますが、より率直に言えばこれは「ビジネスチャンス」です。たとえば、就活シェアハウスを経験した地方の就活生たちは、その後、就職が決まって再度上京してきたとき、住まいとしてシェアハウスを選択する可能性があります。そうなれば、目先の短期的なニーズだけでなく、将来的なニーズを見込むこともできるのです。さらに可能性を言えば、彼らの口コミによって、同郷の友人や後輩たちの世代にまでシェアハウスの魅力が広まることも……。
たしかに、就活生を受け入れるとすれば賃料設定を低めにしたり、せいぜい1〜2ヶ月程度の短期間での利用が多くなるなどの目先のマイナス要素も考えられます。しかし、未来のシェアハウス利用者を増やすという活動は、いずれ近い将来、大きな見返りとなって返ってくるかもしれません。やや表現は悪いですが、「エビで鯛を釣る」――そんなふうに考えれば、考えられない選択肢でもないのではないでしょうか。