不動産関連お役立ち情報  >  新・今月の不動産コラム  >  第40回 シェアタウン構想とシェアハウス

第40回 シェアタウン構想とシェアハウス

9月1日は「防災の日」。今から92年前の1923年9月1日に発生した関東大震災の教訓を踏まえて、この日は国や地方自治体から民間に至るまで、全国各地で防災訓練が実施されています。国土交通省が実施する「国土交通省防災訓練」は今回、政府全体としての首都直下地震を想定した総合防災訓練と連携し、さらに同日より運用開始した「統合災害情報システム(DiMAPS)」がさっそく活用されることになりました。また、この数日前の8月26日に開催された「南海トラフ巨大地震・首都直下地震対策本部」で取り上げられたばかりの「道路啓開計画」などを活用した机上訓練が実施されるなど、何やらものものしい雰囲気。国がこうして真剣に防災対策に取り組む姿勢を見せているのは、我々国民にとっては歓迎すべき事態ですが、それだけ震災のリスクが高まってきていると捉えた方がいいのかもしれません。シェアハウス大家さんにとっても、日頃の防災対策を見つめ直す良い機会ではないでしょうか。

さて、9月に入って早々、投資用不動産市場の8月度の調査結果が2社から発表されています。
まず1日には、不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」を運営する健美家(株)が、2015年8月度の「投資用不動産マーケットトレンド」( https://www.kenbiya.com/img/press/pre2015-09-01.pdf )を発表しました。これは、新規に登録された全国の投資用不動産(区分マンション、1棟アパート、1棟マンション)の物件数、物件価格、表面利回りを毎月集計しているものです。これによると、区分マンションでは表面利回り・物件価格ともに前月比で下落。1棟アパートは表面利回りこそわずかに上昇しているものの物件価格は下落。1棟マンションは逆に物件価格がやや上昇したものの表面利回りは下落しており、前月から引き続き低下基調が続いているとしています。
翌2日には、本コラムでたびたびご紹介している(株)ファーストロジックの2015年8月期「投資用不動産の市場動向調査」結果( http://www.firstlogic.co.jp/wp-content/uploads/2015/09/firstlogic_press_201509.pdf )が発表されました。こちらは8月1〜31日の期間、同社が運営する不動産投資サイト「楽待」に新規掲載・問い合わせのあった物件が調査対象となっています。上記の健美家の調査に対して、新規掲載物件だけでなく問い合わせ物件の集計も公表していますが、当月に関してはいずれも同じ動向を示しています。まず、区分マンションは表面利回りが下落、物件価格は上昇。1棟アパートも表面利回りが下落、物件価格が上昇。そして、1棟マンションでは、物件価格は上昇しているものの、表面利回りは下落しており、特に新規掲載物件の表面利回りは、過去最低の7%台を記録しました。
調査対象が異なるため、2社の発表内容はそれぞれ微妙に違っていますが、注目すべきは全体的な市場動向の低迷。とりわけ、1棟マンションの表面利回りは、物件価格の上昇と反比例して下落傾向が続いており、「買いにくく、儲かりにくい」図式となっています。不動産投資家にとって、当面は逆風の厳しい状況が続くものと考えられます。

こうした状況にあって、高利回りの期待できるシェアハウス事業に活路を見出そうとする業者が現れてくるのは、ある意味、市場原理の必然といえるでしょう。たとえば、UR都市機構九州支社は、福岡市南区の団地内において、ルームシェアを想定してリノベーションした賃貸住宅を竣工しています。これは「“オシャレを大切にできるシェアルーム”というコンセプトのもと、美容関係やアパレル関係への就労者など、ファッションに興味を持つ若年層をターゲットとしている」とのこと。ちなみに、同物件のある西鉄天神大牟田線「井尻」駅周辺では、多彩なコンセプトを持った民間のシェアハウス等が集積しつつあり、エリア内のシェアハウス等の居住者同士のコミュニティとして「井尻シェアタウン」プロジェクトが立ち上げられています。同物件もこの「井尻シェアタウン」に参加し、周辺のシェアハウスとともに「シェアする暮らし方」の魅力を発信していく方針だそうです。こうした地域ぐるみのコミュニティづくりである「シェアタウン」の構想は、2013年ごろ東京都練馬区で「練馬シェアタウン計画」がスタートしたのを皮切りに、2015年3月には慶應義塾大学SFC研究所の主宰するシェアタウン・コンソーシアムが産学連携プロジェクトとして茨城県笠間市にシェアタウン笠間ベースを立ち上げるなど、徐々に各地に広がりつつあります。なお、同コンソーシアムによると、シェアタウンとは「都市と地方を定期的に行き来するライフスタイル。 普段とは異なるコミュニティの中で、人と繋がり時間・経験・価値をシェアしている。その街に住むそれぞれの人が、それぞれが持つ何かしらを地域全体でシェアする構想を指す。例えば、家の一室が空いている人や使っていない庭や畑や田んぼを持っている人はそこをオープンスペース化して地域住民に無料で解放したり、普段はあまり使わない楽器やカメラや大工道具やアウトドアグッズとかがある人は、それをフリーレンタル化して地域住民に無料でシェアし合う。目に見える道具だけでなく、子育てや介護の負担を『余裕のある人たち』でシェアしあうこと」と定義しています。

いっぽう、「自己資金負担ゼロで空き家をシェアハウスに転用・再生して活用できるサービスプラン」を謳う業者も現れており、また「空き家不動産投資」の書籍も出版されるなど、シェアハウス事業への新規参入のハードルは今後ますます低くなることが予想されます。既存のシェアハウス大家さんにとっては、これは必ずしも歓迎できない事態でしょう。ただでさえ空室率に悩んでいるところへ、競合するハウスが増えれば、それまで以上に集客に苦労するようになるのは目に見えているのですから……。しかし、シェアハウス業界の発展を考えたとき、いたずらに「パイの奪い合い」に終始するのではなく、パイ全体を大きく成長させることも必要な努力だといえます。その意味で、個々のハウスがお互いにWin-Winの関係を築いていくことができる「シェアタウン」構想は、これからのシェアハウス事業者にとってひとつの可能性を示唆しているのではないでしょうか。
前
第41回 医療・介護サービスとシェアハウス
カテゴリートップ
新・今月の不動産コラム
次
第39回 就活支援とシェアハウス

ログイン

ユーザー名:

パスワード:


パスワード紛失


シェアハウス大家さん
倶楽部(無料)

シェアハウスで不動産投資に踏み出すサラリーマンやOLの皆様を応援する会員制プログラムです。ご登録いただくと各種不動産投資情報やサービスを無料提供致します。
入会申込(無料)