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第43回 2016年とシェアハウス

皆様、あけましておめでとうございます。本年も当コラムをよろしくお願いいたします。年明け直後の1月1日0時47分、岡山県北部で震度3を観測する地震が発生しました。テレビで「行く年くる年」などをご覧になりながら、新春早々の地震速報テロップに憂鬱な気分を味わった方も少なくないのではないでしょうか。さらに4日未明には、インド北東部のインパールでマグニチュード6.7の大地震が発生。正確な被害状況は不明ですが、隣接するバングラディッシュと合わせてかなりの死傷者が出ているとのことです。昔から「天災は忘れたころに……」云々といいますが、どうも、最近は忘れるヒマもないくらい頻発しているような気もします。今年も気を引き締めて防災対策に取り組んで参りましょう。

さて、ここ数日「シェアハウス ニュース」といった語句でWeb検索すると、真っ先に出てくるのが昨年暮れに発覚した「大阪切断遺体事件」。自称イラストレーターの容疑者が、逮捕当時暮らしていたマンションに引っ越す前に契約していたというシェアハウスから、切断された遺体の一部が発見されたという猟奇的な事件です。報道によれば、容疑者の契約していた2階の部屋の押し入れの中に細かく切断された両手足が隠され、さらに1階共有部分にある台所の物入れからも遺体の一部が見つかったといいますから、今後事件がすべて解決したとしても、もはやこの物件での営業再開は不可能でしょう。シェアハウス大家さんとしてはこの上ない災難ですが、事件の余波は1物件・1オーナーだけの問題にはとどまりません。当コラム内でも再三指摘しておりますが、たまたまある1軒のシェアハウスで起こった異常な事件が、他の無関係なシェアハウスを巻き込んだ風評被害に発展するきっかけとなることも考えられるからです。今のところ、事件の現場となったシェアハウスそのものに焦点を当てた報道はほとんど見当たりませんが、いずれ週刊誌などで面白おかしく取り上げられると見て間違いありません。容疑者のハウス内での暮らしぶり、被害者や他のシェアメイトとの関係性などの報道を通じて、またまたシェアハウスに対する見当違いのバッシングに火が付くことも容易に想像できます。

我々としては「今回はたまたまシェアハウスが現場となっただけで、現場がアパートでもマンションでも一戸建てでも同じ事件は起こりうるし、現実に、いくらでも起こっている」と主張したいところですが……必ずしも正論が通るとは限らないのがこの世の中です。

ちなみに、事件の影響とは無関係だと思われますが、前述の「シェアハウス ニュース」という検索ワードからはこんな記事も拾い上げられました。

「『ハーフの子を産みたい!』と外国人向けシェアハウスに群がる日本女子の貞操観念」と題するAll Aboutの記事( http://news.biglobe.ne.jp/trend/0105/aab_160105_9681653031.html )で、家賃負担に耐えかねて引っ越しを考えたというフリーランスの女性記者が、「こうなったらシェアハウスにでも住もうか?と思い、友人に話を聞いてみたのですが……」とその顛末を語っています。その「友人の話」の中にタイトルの「ハーフの子を産みたい」という主旨の発言があり、最終的には「(前略)共有スペースを使うことをストレスに感じたり、人間関係や恋愛のごたごた、ウワサ話もダイレクトに降りかかってくるのがシェアハウスの現実。単純に家賃削減の目的のみで入居するのは危険な場所です。ということで、私は普通のアパートに引っ越しました。」(All About 1月4日(月)23時45分 美濃羽佐智子)というオチがつけられています。一読して公の報道ではなく、個人的な感想文の類ですが、こういった文章は個人のブログ記事などにもいくらでも見つけることができます。それらが多くの人の目に触れることで、シェアハウスに対する偏見に満ちた世論が醸成されていく……何ともやりきれない話です。

そんな中で、4日の毎日新聞朝刊に「家族2016 シェアハウスを研究する久保田准教授に聞く」と題する興味深いコラム( http://mainichi.jp/articles/20160104/k00/00m/040/048000c )が掲載されていました。語り手である日本大学文理学部の久保田裕之准教授は、『他人と暮らす若者たち』という本の著者で、自身も11年間シェアハウスで暮らしているとのことです。同コラムでは、毎日新聞にしては珍しくシェアハウスに対する好意的な論調を展開しています。一部抜粋して引用してみましょう。

「(前略)学生や大学院生に聞くと、『ドラマで見た』とか『友だちがやっている』などと答えます。また、社会人でも、『家賃をただ安くしたいだけ』でなく、『1人で住むより広くて良いところに住みたい』といったニーズや、海外でシェアを経験した人、『ちょっと面白そうだ』と新しいものに関心を持った人たちがシェアハウスに傾いたようです。この十数年の動きです。
 一方、高齢者層では、グループホームやグループリビングなど、1人暮らしや高齢夫婦だけの生活に不安や不便を感じた人たちが、一つの建物で生活し、時に介護サービスを共同購入する事例で既に実績があります。家族ではなくても助け合える、支え合える、ということは十分言えるでしょう。過去を振り返ると、他人と絶対シェアしないような社会がむしろ特殊で不思議だったのです。(中略)
 家族なら安心できるというのが一般的な考え方ですが、現実には家族内でも犯罪になるような問題が起きています。家族の理想とシェアの現実を比較すると、大差ないのではないかというのが実感です。(中略)
 子育てについては、昔は家族以外の人が子どもの面倒をみるという光景は当たり前でした。(中略)
 今後シェアが広まっていけば、家族への一極集中から解放されていくだろうし、家族は数ある支え合いの選択肢の一つでしかなくなる、という言い方がしっくりくるでしょう。(中略)
 家族社会学では、人は家族形成の前後に孤立すると指摘されています。『生まれた家を出て結婚するまで』と、『子どもが巣立って配偶者と死別した後』です。その二つの世代層で、共同的な住まい方が模索され、広まってきたのは偶然ではないと思います。」(毎日新聞2016年1月4日 03時51分〔最終更新 1月5日 16時37分〕)

もちろん、これにしても久保田准教授の個人的な見解に過ぎないのかもしれませんが……とかく両極端に走りがちな日本の世論において、こうしたシェアハウス擁護論が、かつて「脱法ハウス問題」の火付け役となり、バッシングの急先鋒であった毎日新聞紙上に掲載されたということには意義があります。世間の無理解による風評被害に対しては、こちらも理論武装して、毅然とした態度で堂々と反論して参りましょう。
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