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第44回 民泊ビジネスとシェアハウス

明日、2月16日よりいよいよ日本史上初の「マイナス金利政策」が現実のものとなります。こうした背景にあって、世界経済の先行き不安感から東京株式市場では日経平均株価が急落し、2月10日には1万6000円割れ、11日の建国記念日を挟んで12日には約1年4ヶ月ぶりに1万5000円台を割り込みました。株価は週明けの15日には反発し、ふたたび1万6000円台を回復しています。また、一時は1ドル110円台前半まで急騰した円高も114円前後まで戻しました。日経平均も円高も、市井のシェアハウス大家さんにとっては一見縁遠い話と思われがちですが、日銀のマイナス金利政策については「これで銀行が融資に積極的になり、資金調達が容易になる……!?」と歓迎する向きも多いことでしょう。ただし、マイナス金利政策については、中長期的にはデメリットも見込まれており、今回の株価乱高下や円高も、その影響ではないかという指摘も一部にはあります。年度替わりを控えて、新規物件購入や設備投資などをお考えの大家さんもいらっしゃるでしょうが、目先の損得に惑わされないよう、くれぐれも慎重になることをお勧めいたします。

さて、2月12日、東京・大田区では全国に先駆けて「民泊」施設の初認定が行われました( http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160212/k10010406921000.html )。昨年末頃からしばしば耳にするようになった「民泊」という単語ですが、これは「旅館業法に定められたホテルや旅館など『正規の宿泊施設』以外での旅行者等の一時的な受け入れ」を意味します。受け入れ先としては一般的な民家のほか、アパート・マンション等の空室を利用するケースも多く、「友人・知人宅に泊めてもらう」などの無償での受け入れから、有償での受け入れまできわめて幅広い範囲で適用されています。有償での民泊には、2008年からサービスを開始した「Airbnb(エアビーアンドビー)」というポータルサイトがあり、同サイトには現在、192ヶ国3,3000都市において80万件以上の物件が登録されています。日本国内では2015年末までにAirbnbに8,000件超の物件が掲載されており、直近半年間でほぼ倍増したといわれています。この背景には、2020年東京五輪開催を控えて日本を訪れる海外からの旅行者が急増していること、そしてその受け入れ先となるホテル等の正規の宿泊施設が圧倒的に不足していることなどが挙げられます。さらに、Airbnbのサービスを利用して、投資目的の貸し手が多数参入したことも指摘されています。2015年11月には、厚生労働省と観光庁が民泊に関して有識者による「『民泊サービス』のあり方に関する検討会審議会」を設置し、同会の活動を通じて、民泊施設について「旅館業法や不動産賃貸業・建築基準法など、各法律上で実状に沿ったものにしていく」という形で検討を進めてきました。

こうした中での、今回の大田区の認定は、現在民泊施設認定を検討中の京都市、東京・港区、新宿区、渋谷区をはじめ、全国自治体の貴重なサンプルケースとして注目されています。「『民泊』施設を初認定 東京・大田区」と題する記事を一部引用してみましょう。
「外国人観光客が急増するなか、東京・大田区は12日、特区を活用したいわゆる『民泊』を行う宿泊施設として申請のあった住宅などを初めて認定しました。これによって宿泊者の安全確保や近隣住民への周知などのルールを定めた民泊が、全国に先駆けて始まることになりました。(中略)
今回、認定された物件は、平屋の一戸建てとマンションの一室で、いずれも、部屋の広さが25平方メートル以上で、宿泊者が緊急時に英語で話せる連絡先が用意されていること、それに、近隣の住民に事前に周知することなどの条件を満たしているとされました。管理する会社では、認定された物件を自社が運営するインターネットのサイトに掲載し、定員4人の一戸建ての場合1泊1万5000円から2万円で、今月15日から宿泊者の予約を受け付けるということで、一定のルールを定めた民泊が全国に先駆けて始まることになりました。(中略)
民泊への関心が高まっている一方で、これまでに大田区に申請があったのが2件にとどまっていて、背景には、さまざまな条件があることや国が特区とは別に民泊を認める制度について議論を進めていることが挙げられます。(中略)
大田区が先月開いた事前の説明会には、予想を上回るおよそ200人が参加し民泊への関心の高さをうかがわせましたが、準備には時間や費用がかかることが申請が2件にとどまっている理由とみられています。また、大田区で認められた民泊は、旅館業法の規制を受けない特区を活用したものですが、国は現在、旅館業法で認められていない民泊について、全国で統一した基準を作って許可制にする準備を進めています。こうした国の議論の行方を見たうえで、検討したいという事業者もいるということです」(NHK NEWSWEB 2月12日 15時24分)

今後も、外国人観光客の増加とともに民泊の需要はますます高まっていくことが予想されており、その受け皿のひとつとしてシェアハウスの利用という可能性が指摘されています。なにしろ、シェアハウスでは「バックパッカーの受け入れなど、もともと外国人入居者に対する敷居が低い」「短期間での入退去が容易」等々、アパート・マンションなどの一般賃貸に比べて民泊施設としての諸条件を備えていますから、法整備による裏付けさえ整えば、明日からでも対応可能というハウスも多いはず――とはいえ、現時点では法律による枠組みができていませんから、くれぐれも勇み足は禁物です。

なお、(一社)東京都マンション管理士会( http://www.kanrisi.org/index.html )の都心区支部ではきたる2月28日、京橋区民館にて「マンションにおける民泊対策セミナー」を実施する予定です。入場無料で定員は55名、参加対象はマンション管理組合の役員、組合員または管理会社職員となっています。タイトルからもわかる通り、シェアハウスにフォーカスしたセミナーではありませんが、民泊受け入れの可能性を探るためにも、興味のある方は参加されてみてはいかがでしょうか。
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