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第45回 地価公示とシェアハウス2016

かれこれ30年近くも昔、バブル期のトレンディ・ドラマ全盛時代から人気のある街として知られてきた「吉祥寺」。都心部の勤務先へはほどよい通勤距離にあり、駅周辺に広がるお洒落な街並みも魅力とされています。先日、アットホーム(株)が「10年以上東京都内に住み続けている人」を対象に実施した、都内の好きな駅前や嫌いな駅前についてのアンケート調査( http://athome-inc.jp/wp-content/uploads/2016/03/2016030701.pdf )でも、好きな駅前の1位として「吉祥寺」が選ばれています。ところが、これとほぼ同時期に発表された、(株)リクルート住まいカンパニーの「2016年版みんなが選んだ住みたい街ランキング関東版」( http://www.recruit-sumai.co.jp/data/sumitaimachi2016kanto.pdf )によれば、それまで3年連続1位だった「吉祥寺」に代わって、「恵比寿」が1位に浮上したとのこと。同社はこの理由について、「恵比寿」の交通の利便性に加え、今年4月に駅ビル新館が完成するという話題性も寄与したものだろうと分析しています。シェアハウス大家さんにとって、人気のある「住みたい街」やその周辺に物件を所有することは、入居者を集め収益性を上げるのに間違いなく重要なポイントですが、そうした街では売りに出る物件は少なく、価格も高くつきます。新規物件取得の費用対効果を考えれば、「次に来るトレンド」をいち早く察知する情報収集力もさることながら、目先のトレンドに左右されない安定した魅力を持った街をチョイスする立地選定眼が求められます。

さて、今年も恒例の「地価公示」の時期がやってまいりました。3月22日に国土交通省が発表した「平成28年地価公示」( http://tochi.mlit.go.jp/chika/kouji/2016/00.html )では、前年1月からの1年間の地価変動率が、リーマンショック以来8年ぶりに全用途平均で上昇に転じたことが話題となりました。住宅地に関していえば、全国平均では0.2%下落とあいかわらず厳しい状況ながら、三大都市圏では0.5%上昇と前年の0.4%上昇をわずかに上回っています。ちなみに、三大都市圏では工業地も軒並み上昇、とりわけ商業地は前年の1.8%上昇を大きく上回る2.9%上昇と、直近3年間で上昇基調を強めています。こうした現状について、国交省では「住宅地は、全国的な雇用情勢の改善や、住宅ローン減税等の施策による需要の下支え効果があり、地価は総じて底堅く推移。商業地については、外国人観光客の増加などによる店舗・ホテル需要の高まりや、主要都市でのオフィス空室率の低下などによる収益性の向上を背景に、不動産投資意欲が旺盛になった」と分析しています。

今回の地価公示を受けて、業界団体や大手不動産会社のトップがいかなるコメント( http://www.re-port.net/news.php?ReportNumber=46841 )を寄せているかを見ていきましょう。
まず、(公社)全国宅地建物取引業協会連合会の伊藤博会長は「地方中枢都市で三大都市圏を上回る上昇が見られ(中略)政府の地方創生への期待と着実な進展が感じられる」と評価しており、今後の展望についても「マイナス金利による史上最低の住宅ローン金利、宅建業法改正等による中古住宅流通に係る諸施策の具体化などを背景に、本会としても(中略)市場活性化の下支えとなるようインスペクション、瑕疵保険制度などの普及啓発を行う。さらに、新たに創設された空き家の譲渡に係る特別控除の活用など中古住宅流通市場の活性化への取組みを通じて日本経済成長に寄与していきたい」と意欲を見せています。
また、(一社)不動産流通経営協会の田中俊和理事長は「今回の公示価格は不動産流通業界の実感に近い。レインズの取引件数は前年に比べ2桁アップとなっており、足元の不動産流通市場は好調だ。今後も、土地等の不動産取引は、日銀のマイナス金利による住宅ローンや貸出金利の一層の低下、住宅購入に対する優遇措置や景気の回復により拡大基調が継続するものと見込まれる」と見通しの明るさを強調しています。
これに対し、(一社)不動産協会の木村惠司理事長は「海外経済の動向等、一部に不安定な要素も見られる中、デフレからの脱却と持続的な成長につなげていかなければならない。引き続き、経済成長の重要な原動力である都市の国際競争力を高め、国全体の経済を牽引するとともに、内需の柱である住宅投資を活性化し、住宅市場を安定的に推移させていくことが不可欠だ」とやや辛口のコメント。
さらに、(公社)全日本不動産協会の原嶋和利理事長は「住宅地・商業地の用途の別なく昨年よりも改善の基調にあることは歓迎される。(中略)今後、住宅地の地価によい影響が出ることを期待したい」と期待を寄せつつも、「その一方で、人口減少とともに来年度の消費税増税の影響が回復傾向を示す現在の地価動向に対して、どのように及ぶか、一抹の不安もある」と警鐘を鳴らしています。

大手不動産会社からのコメントでは、三井不動産(株)の菰田正信社長が「(首都圏のマンション市況について)顧客の購入マインドは依然として高い。特に顧客のニーズに対応した物件の販売は好調であり、今後も市場は概ね堅調に推移していくとみている」、三菱地所(株)の杉山博孝社長が「地価の回復の兆しをよりはっきりと感じることができるようになった。(中略)駅近など利便性の高い物件をはじめ首都圏・関西圏を中心に需要は引き続き旺盛で堅調に推移している」と、さすが二大巨頭にふさわしく、余裕すら感じさせるコメントです。

これに対して、住友不動産(株)の仁島浩順社長は「一方、足元では、円高・株安基調に転じ、景気の先行き不透明感が強まっている。建設費の高止まり傾向が続くなど、不動産市況を取り巻く環境は依然として楽観できない情勢だ」、野村不動産(株)の宮嶋誠一社長は「今回の地価公示のトレンドは、最近の不動産取引動向を反映したものとなっており、今後は上昇傾向にあるマンション販売価格や、高止まりしている建築費の動向について引き続き注視していく必要があると考える」、東京建物(株)の 佐久間一社長は「景気全体としては穏やかな回復基調が続いているものの、株式、為替相場の不安定な動きや新興国経済の先行き不透明感など、一部に弱い動きも見られる」等々、それぞれ現在の好況を実感しつつも、先行きの見通しに関しては必ずしも楽観できないという姿勢を崩していません。

ちなみに、冒頭でご紹介したアットホーム(株)が(株)三井住友トラスト基礎研究所と共同で発表している2015年第4四半期(10〜12月)の「マンション賃料インデックス」( http://www.athome.co.jp/contents/chintai/report/m_index_kohyo1603.pdf )によれば、全国主要都市の総合賃料指数(2009年第1四半期を100とする)は、東京23区の102.55(前期比0.28増)をはじめ、今回の地価公示で地価上昇率がもっとも顕著であった札幌市は106.07(同0.24増)、ほかにも仙台市が115.63(同0.19増)、京都市が106.09(同0.30増)、大阪市が107.97(同0.08増)、福岡市が102.25(同0.31増)など、地方都市でも100を突破しているところが目立ちます。また、これも冒頭で触れた(株)リクルート住まいカンパニーの「2015年首都圏新築マンション契約者動向調査」( http://www.recruit-sumai.co.jp/data/20160322_vcm2015shutoken.pdf )によれば、東京23区における新築マンションの購入割合が増加しており、平均購入価格は2001年の調査開始以来最高額となる4,975万円を記録したとのことです。

地価公示に関する有識者コメントに見られた通り、賃貸・売買の両面で不動産市場が上向いていることを裏づける数値ですが、それだけに、一部の有識者が控えめに述べている懸念も現実味を帯びてきます。まもなく新年度を迎えますが、今後もこうしたトレンドの推移にはより一層神経を研ぎ澄ませていく必要がありそうです。
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