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第49回 不動産市況とシェアハウス2016

9月5日午前の東京株式市場は、日経平均株価が6月1日以来約3ヶ月ぶりに1万7000円台を回復しました。ここしばらくは円高傾向で1ドル=100円前後で推移していましたが、先週末発表された8月の米国雇用統計では、市場の事前予想をやや下回ったものの、米国株価は上昇し、円安・ドル高傾向にシフトしており、1ドル=104円台まで回復しました。これを受けての日経平均株価上昇と見られています。今後、9月20〜21日に予定されている米国の連邦公開市場委員会(FOMC)における利上げ判断や、同日に行われる日銀金融政策会合などの結果を睨んで、まだまだ値動きが続くことが予想されていますが、当面は円高リスクが後退したとの見方も強く、日経平均株価は年内に1万8000円台を突破するだろうとの予測も出ています。少なくとも、来たるべき来年1月の米国大統領選挙までは、市場は比較的好況を維持するものと考えていいでしょう。

さて、全体的に上向きの景気動向の中で、不動産市況の最近の動きはどうなっているでしょうか。去る8月31日には、国土交通省から2件の指標が発表されています。
まず、「不動産価格指数(住宅)」および「不動産取引件数・面積(住宅)」ですが、これは2016年5月分の結果( http://tochi.mlit.go.jp/wp-content/uploads/2016/08/43475cc1f3cafd8dbd0b9b5958ccf210.pdf )となります。不動産価格指数は2010年平均を100とする指数で、住宅総合指数は107.5(前年同月比2.3%上昇)。内訳は住宅地が99.2(同0.8%上昇)、戸建住宅が99.6(同0.8%下落)と小幅な変動に留まりましたが、マンション(区分所有)は128.1(同6.4%上昇)と大幅に伸びており、2013年からじつに39ヶ月連続でのプラスとなっています。マンションに関しては、東京都で131.2(同8.9%上昇)、南関東圏(埼玉・千葉・東京・神奈川)では125.4(同7.0%上昇)となり、さらに名古屋圏(岐阜・愛知・三重)で125.3(同5.5%上昇)、京阪神圏(京都・大阪・兵庫)で130.3(同9.1%下落)となっています。こうして見ると、京阪神圏のみ前年から大幅下落となりましたが、これは前年度の上げ幅が大きすぎたため。大都市圏を中心に、マンション価格は安定して高値で推移していることがわかります。さらに、不動産取引件数・面積は、全国の戸建住宅で1万2,919件(同1.9%上昇)、取引面積302万7,685平米となりました。マンションでは1万3,646件(同8.3%上昇)、取引面積75万9,226平米となり、マンション市場の堅調ぶりが際立つ結果となりました。

続いて、同日発表された2016年7月度の建築着工統計( http://www.mlit.go.jp/common/001143226.pdf )ですが、新設住宅着工戸数は8万5,208戸(同8.9%増)となり、再び増加に転じています。新設住宅着工床面積も691万8,000平米(同6.2%増)と増加し、利用関係別では、持家が2万6,910戸(同月6.0%増)と6ヶ月連続増加、貸家は3万7,745戸(同11.1%増)と9ヶ月連続の増加となりました。分譲住宅は1万9,897戸(同9.1%増)と再び増加しており、このうちマンションは7,863戸(同5.9%増)と3ヶ月ぶりに増加。一戸建住宅は1万1,863戸(同12.1%増)と、9ヶ月連続で増加していることがわかります。

さらに、8月30日に(一財)建設経済研究所と(一財)経済調査会経済研究所が発表した「建設経済モデルによる建設投資の見通し」(2016年8月)( http://www.rice.or.jp/regular_report/pdf/forecast/moderu20160831.pdf )によると、2016年度の民間住宅投資は、相続税節税対策等で増加するものと予測されています。これは同年1〜3月期の国民経済計算(四半期別GDP速報)を踏まえ、2016〜2017年度の各投資見通しを予測したもので、建設投資は、2016年度が51兆5,300億円(前年度比1.1%増)、2017年度が49兆3,000億円(同4.3%減)と予測されています。このうち、政府建設投資については、2016年度が21兆4,300億円(同0.6%減)、2017年度が19兆4,300億円(同9.3%減)と、いずれも減少の見通しとなっているため、2016年度の増加予測は民間住宅投資によるものとなっています。民間住宅投資が増加するとの予測は、相続税の節税対策や金利の低下を根拠としたもので、こちらも2017年度には減少するものと見込まれています。住宅着工戸数も、2017年度には減少が予測されており、いずれにしても、現在の上向き傾向はそう長くは続かないものと見ておいたほうがよさそうです。

また、(一社)不動産証券化協会(ARES)と早稲田大学大学院川口研究室の協同調査による「第22回不動産投資短期観測調査」( http://www.ares.or.jp/investigation/pdf/tankan-22.pdf )によると、不動産投資関連314社中77社から有効回答を得て集計した結果、最近の業況については「良い」が73%、「さほど良くない」が27%、「悪い」が0%となっており、不動産市況に関しては「良い」が89%、「さほど良くない」が11%、「悪い」が0%となりました。業況・不動産市況のいずれも「良い」が過半数を超え、特に不動産市況については約9割が「良い」と回答するなど、ポジティブな見方が支配的でした。これに対して、半年後の業況の予測については、「良い」64%、「さほど良くない」36%、「悪い」0%となり、不動産市況に関しても「良い」75%、「さほど良くない」25%、「悪い」0%となり、「悪い」とする予測は依然として0%ながら、やや成長が鈍化するとの予測結果となっています。細かく見ていくと、不動産の仕入れ価格は、現状が「上昇」80%、「もちあい」20%、「下落」0%に対して、半年後の予測については「上昇」52%、「もちあい」45%、「下落」3%となり、上昇は落ち着くという見方が4割を超えていました。さらに、売却価格に関する半年後の予測では「上昇」45%、「もちあい」54%、「下落」1%となり、現在これほどの好況下にありながら、なおも半年後には不安要素を感じていることがわかります。

こうしたなかで、シェアハウス業界とも関連が深く、不動産業界の中でも比較的伸びしろが大きいと見込まれているのが「高齢者向け施設」です。8月31日に(株)帝国データバンク(TDB)が発表した「有料老人ホーム・サ高住の経営企業実態調査」( https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p160807.pdf )の結果によると、老人ホームおよびサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)事業を主業とする企業は1,503社を数えています。さらに、従業として老人ホーム・サ高住事業を行う企業が1,011社あり、こちらは主力事業別にみるとサービス業(728社)が72%、不動産業(81社)が8.0%と、広義のサービス業が中心となっていることがわかります。2000年の介護保険制度開始以降、有料老人ホーム等の介護事業者は増加基調にあり、また、高齢者住まい法の改正に伴い2011年10月からスタートしたサ高住の登録制度により、企業の新規参入には拍車がかかっています。TDBでは今回の調査結果に対して、「問題を抱える事業者は少なくない」としていますが、調査対象とした企業のうち約4割が他業種からの参入企業であることや、増収企業が半数を超えることなどから、「国内でも数少ない成長産業である」と分析しています。

「他業種からの新規参入」といえば、先日、家電メーカー最大手の某グループに連なるマーケティング会社が、「家電マーケティングの強みを活かしたシェアハウス」を千葉県に竣工したことが話題となりました。これは女性専用シェアハウスで、同グループの家電製品の納入や共用施設を併設して差別化を図っているとのこと。シェアハウスが一般化していくに伴い、今や他業種からの参入も当たり前になりつつありますが、畑違いとはいえその資本力はやはり脅威です。シェアハウス経営を本業とするからには、こうした畑違いの分野の動向に対しても警戒を怠らないほうが良いでしょう。
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