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第50回 大手資本とシェアハウス

10月12日午後、東京都内で約58万6000戸が影響を受けた大規模な停電が発生しました。西武新宿線が数時間にわたりストップするなど、各方面に甚大な影響を与えた停電を引き起こしたのは、埼玉県新座市にある東京電力施設内の火災であり、その原因は、ケーブルの経年劣化による自然発火ではないかと見られています。翌13日には、このケーブルが敷設されてから約35年間経過しており、その間一度も交換されていなかったという事実が発覚。打音検査は定期的に行われていたそうですが、今年6月に実施された前回の調査時には、異常は発見できなかったということです。これほど広範囲に影響を及ぼすことはないでしょうが、戸建住宅やマンションなどにも電力設備があり、電気を使用する機器は室内外にあふれています。これから冬にかけては、各家庭での電力使用量も増え、空気も乾燥して火災のリスクが高まります。シェアハウス大家さんとしても、所有物件の設備機器の老朽化には十分注意するようにしましょう。

さて、当コラムでは数年前から「シェアハウスのニッチな市場への大手資本の参入」をことあるごとに警告してきました。前回のコラムでも、家電メーカー最大手のグループ会社による「家電マーケティングの強みを活かしたシェアハウス」の事例をご紹介しましたが、先日、ついに旧財閥系の業界最大手デベロッパーに連なる住宅販売会社までが名乗りを上げました。同社は「不動産建物・空家等の有効活用した実例」という形でこの事実を公表しています。それによれば、同社はこのほど、東京都世田谷区の築60年の下宿をリフォームし、オーナーの要望した「留学生や若者を応援するシェアハウス」を実現したとのこと。このハウスは、「和」や「着物」をモチーフに、長押や柱などの造作と真壁のスタイルを生かして、そこに華やかな日本の伝統色やパターンをプラス。内装に関しては、某インテリアデザイン会社とのコラボレーションにより、日本の伝統文化を若い世代向けにアレンジした「渋カワスタイル」(=渋くてかわいいスタイル)をテーマにインテリアをリフォームし、異なる個性を持つ4つの部屋に仕上げたということです。……もちろん、このケースではたまたまオーナーの要望がシェアハウスだったというだけで、本質としては「空き家活用」「古民家再生」というテーマの取り組み事例なのですが、同社は今後も注文住宅事業によって培った住まいづくりのノウハウを駆使し、オーナーの要望に対応するオーダーメイドのリフォームプランを提案していく方針を打ち出しています。今回の事例を見たオーナーが「シェアハウス化」に傾けば、将来的にこういうケースが増えてくることも十分に考えられます。

いっぽう、大手資本の系列としてはもっとも早い時期からシェアハウス事業に本格参入している某社では、先日、公式サイトを全面リニューアルしています。同社はもともと大手電力会社系の不動産事業会社でしたが、数年前に大手私鉄グループの傘下に加わり、リノベーション事業を中心に、独自ブランドの「シェア型賃貸住宅」の企画・管理・運営を手がけています。今回リニューアルされた新サイトでは、「シェアハウスでのリアルな暮らしを届ける」をテーマに、入居検討者だけでなく、現入居者や元入居者も対象にした情報や暮らしのようすなどを発信。新たにブランドスローガンを掲げ、ブランドステートメントを制定するとともに、物件紹介画面なども刷新され、検索機能の拡充を図っています。さらに、公式インスタグラムのアカウントを開設し、新たなコンテンツを増やしていくことで、単なるリーシングサイトではなく、ユーザーとの「コミュニケーションツール」の役割も目指しているとのこと。これに加えて、従来のパソコンからスマホでも簡単に利用できるマルチデバイス対応に仕様を変更するなど、本格的な刷新が図られています。これまでは大手資本系列とはいえ、単体でのネームバリューに欠ける面のあった同社ですが、中小・零細事業者に過ぎないシェアハウス大家さんにとっては脅威となりそうです。

こうした中で、首都圏に20棟前後のシェアハウスを展開している中堅シェアハウス会社が、神奈川県の三浦海岸に「シェアハウス初のリゾートマンション」をオープンしたことが一部で話題になりました。バブル期の乱開発で日本各地に建てられた高級リゾートマンションが、その後のバブル崩壊により買い手が付かないまま捨て値同然で放置されている例は枚挙に暇がありません。その中でも首都圏との交通アクセスの良い立地に建てられた物件をリフォームすれば、同社のこの事例のように「自宅に住みながらリゾート気分を満喫できるシェアハウス」として再生することも、あるいは可能であるかもしれません。同社の試みが成功するかどうかは今のところ未知数ですが、都心部での物件価格高騰を踏まえると、一つの可能性を示唆しているように思われます。

なお、最初にご紹介した旧財閥系列の住宅販売会社の取り組みにもあったように、「古民家再生」はシェアハウス業界においても一つの潮流として定着しつつあります。こうした中で、来たる10月29日には(一社)全国古家再生推進協議会による「古家再生全国大会〜関東スペシャルセミナーVol.2〜」が開催されます( https://eipo.jp/zenko-kyo-or-jp/seminars/view/3648 )。同セミナーは年に1度開かれるイベントで、今回は同評議会顧問の三木章裕氏による講演のほか、税理士による「古家投資での融資の活用について」の解説、パネルディスカッション「初めての古家再生投資について」、さらに関東や関西、中部地区の各プランナーからの事例の紹介なども行なわれる予定となっています。会場は東京・八重洲、日時は29日14〜17時、定員は50名。参加費5000円がかかりますが、興味のある方は参加されてみてはいかがでしょうか。大手資本の参入で、今後ますます経営が厳しくなっていくシェアハウス大家さんにとって、一発逆転のヒントが掴めるかもしれません。
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