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第51回 結婚とシェアハウス

11月24日早朝、東京23区内で初雪が観測されました。11月の初雪は1962年以来、54年ぶりの早さ。前夜からの雨がみぞれに変わり、通勤時間帯にははっきりとした大粒の雪となって降り積もりました。雪はその後、雨やみぞれに変わりながらも午後2時過ぎまで続きましたが、夕方までには上がり、交通量の激しい都心部では、一夜明ければもはや痕跡も残っていませんが……例年になく早い時期での初雪は、この冬の厳しい寒さを予感させます。まだここ一両日は、特に早朝などには路面凍結の恐れもあり、注意が必要です。また、12月に入ればさらなる降雪も予想されますから、今年は早めの冬支度を心がけておいた方がいいでしょう。

さて、当サイトが開設されてからすでに7年以上が過ぎ、当コラムも連載開始から5年半余りになりますが、その間に、シェアハウスという住まい方はとにもかくにも日本に完全に定着しました。もはや一過性のブームではなく、住文化の一つの形態として世間に認知されているものと考えていいでしょう。それを象徴するかのように、シェアハウス生活をテーマとした文芸作品が、フィクション・ノンフィクションを問わず、さまざまな場所で発表されております。その一つに、「幻冬舎plus」というサイトで連載中の「結婚してもシェアハウス!」というブログがあります。作者は『シェアハウス わたしたちが他人と住む理由』(2012年 辰巳出版刊)などの著書のある阿部珠恵氏。阿部氏は、夫婦2組+阿部氏を含む独身アラサー5人+19歳1人の10人によるシェアハウス暮らしを綴っており、これまでの連載では「(シェアハウスに住んでいるから)彼氏はもういらない!?」的な、ややもすると10年以上前のベストセラーである『負け犬の遠吠え』(酒井順子著 2003年 講談社刊)を思わせる論調も見られました。ところが、この11月2日に「結婚相手を募集します!〜結婚してもシェアハウス!もいいかも?という男性のご応募をお待ちしております〜」( http://www.gentosha.jp/articles/-/6640 )というブログ記事が掲載され、さらに続く11月24日には「『結婚してもシェアハウス』OKな旦那を募集したら、25人も応募がきた件」( http://www.gentosha.jp/articles/-/6789 )なるブログ記事が……! いわば、独身アラサー女性である阿部氏の公開婚活レポート、というところですが、この展開はなかなか興味をそそられます。ブログ上で赤裸々にプライベートを公開する姿勢には作者のライター魂を感じさせますが、そのこと自体については賛否両論あることでしょう。阿部氏がどれほど魅力的な女性であるかという問題はさておき、「結婚してもシェアハウスに住むことがOK」と考える男性が、短期間にこれほどの人数が集まったという事実は、世の中の男性の意識が明らかに変わってきていることを示唆しています。ちなみに、応募してきた25人中、シェアハウス居住経験者は8人ということで、3分の2はシェアハウス未経験者であったとのことです。
阿部氏のこの「婚活」が今後、どのように展開し、どう決着するか、そして実際にゴールインしたとして、その後の結婚生活がどうなっていくかについては、いずれご本人から同ブログにて報告されることでしょうが……そうした野次馬的な興味はともかく、ついつい考えてしまうのは「これが男女逆であったらどうなのだろうか?」ということです。一般的な婚活でも、女性より男性の方がカップル成立は難しいとされています。また、女性は男性より「家」に対するこだわりが強く、たとえ出会いの場がシェアハウスであったとしても(つまり、男女ともにシェアハウス居住経験者であったとしても)、結婚後は夫婦ふたりだけで暮らしたいと望む傾向があります。それだけに、もしシェアハウス住まいの独身男性が「結婚しても引き続きシェアハウスに住んでくれる女性」を募集したとして、仮にどれほど魅力的な男性であっても、はたしてシェアハウス未経験者を含む女性がこれほど応募してくるものかどうか……? そう考えると、ブログタイトルである「結婚してもシェアハウス!」が新しい価値観として世間に認知されるまでには、まだまだ時間がかかりそうに思われます。

いっぽう、シェアハウスの日本における定着ぶりを示す指標として、地方市場への普及ということがあります。前回の当コラムでは「リゾートマンションのシェアハウス化」というニュースを取り上げましたが、11月21日付の「山陽新聞デジタル」では、「星形住宅をシェアハウスに改装 広島・福山市立大生がデザイン」( http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161121-00010010-sanyo-l34 )という記事が掲載されました。一部抜粋してご紹介しましょう。
「広島県福山市港町の福山市立大の学生が進めていた、伊勢丘団地にあるスターハウス(星形住宅)のリフォームが完了し、学生向けのシェアハウスに生まれ変わった。興味のある学生に住み心地を確認してもらうため、11月から宿泊体験会を開いている。年明けから入居が始まる予定。
スターハウスは築約45年の5階建て住宅。3階の1室(約40平方メートル)をシェアハウスに改装した。学生グループ5人が『角のないあたたかい空間』をテーマにデザイン。壁には光を優しく反射するしっくいを用い、壁の上部を開けることで天井がつながった開放的な空間にした。三つの個室や共用リビング、台所などを備え、3人が共同生活を送れる。
 体験会はこれまでに3組約10人が参加。11月14日は設計に携わった学生ら4人が泊まり、広さや動線などを確認した2年女子学生(19)は『プライバシーの確保が少し気になったが、部屋は優しい雰囲気で暮らしやすそう』と話していた。(中略)
 スターハウスは旧日本鋼管(現JFEスチール)の企業団地として高度経済成長期に建設。上空から見ると星形をしたユニークな形状が特徴。全国的に更新期を迎えており、各地で解体が進んでいる。(後略)」
(山陽新聞デジタル 11/21〔月〕 21:02配信)
これも前回のリゾートマンション同様、「既存施設のリフォーム再利用」というテーマであり、広義の「空き家問題対策」としてシェアハウスの可変性に着目したものといえるでしょう。さらに、学生グループによるデザインということで、若い才能を活用した事例としても注目されます。

ただし、このケースのように地方市場でのシェアハウスの広がりが話題になる背景には、長らく続いてきた東京市場への一極集中の反動、特に都心部での物件価格高騰の影響という面も見逃せません。東京カンテイが11月24日に発表した「三大都市圏・主要都市別/中古マンション70?価格月別推移(2016年10月)」( http://www.kantei.ne.jp/release/PDFs/c201610.pdf )でも、首都圏の中古マンションの平均価格が10ヶ月連続上昇となっており、不動産市場の好況とともに、いわばその間隙に喰い込むことで利益を上げてきたニッチ産業であるシェアハウス事業者にとっては、いささかやりづらい状況になってきているのも事実です。

シェアハウス文化の定着とともに、利用者側のニーズもさまざまな広がりを見せていることから、事業者側も、若い世代の積極的な登用や、アイデアの採用について真剣に検討してみる時期に来ているのかもしれません。
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