不動産関連お役立ち情報  >  新・今月の不動産コラム  >  第52回 2017年とシェアハウス

第52回 2017年とシェアハウス

皆様、あけましておめでとうございます。本年も当コラムをよろしくお願い申し上げます。1月4日に三重県伊勢市の伊勢神宮を参拝した安倍首相は、参拝後に開かれた年頭の記者会見において、2017年の政権運営について「本年も経済最優先」云々と語りました。このフレーズも、かれこれ5年連続くらいで聴いているような気もしますが……まあ、それだけ、じっくりと腰を据えて取り組まなければならない課題ということでもあるのでしょう。私たちも、そろそろ目先の景気動向に一喜一憂するのではなく、中長期的な展望に目を向けてみるべき時期に来ているのかもしれません。

さて、1月3日の朝日新聞デジタルでは、「空き部屋生かし民泊『もてなし楽しい』 ルールづくりへ」( http://www.asahi.com/articles/ASK134QJKK13ULFA003.html?ref=mixi )というタイトルで以下のような記事が掲載されました。一部抜粋してご紹介します。
「東京都内の一軒家。2016年12月25日朝、女性イラストレーター(40)の食卓を、中国の上海から来た男性銀行員(37)一家4人が囲んだ。男性は個人宅の空き部屋などを紹介する『民泊サイト』の米Airbnb(エアビーアンドビー)で女性宅を見つけた。(中略)
 女性は『おもてなしが楽しい』と話す。離婚後、幼い長女と2人で残され、生活に不安やさみしさを感じた。宿泊客を受け入れ、『東京を案内して気が紛れた』。この3年で100組超を受け入れ、今のところトラブルはない。収入は月当たり約20万円にもなる。
 エアビーに代表される『民泊』はシェアリングエコノミーの代表格だ。手軽に空き部屋を貸せて副収入になるとあって、日本でも都市部を中心に広がる。16年1〜10月にエアビーで国内に泊まった訪日客は300万人超。15年通年の2倍超だ。16年1〜10月の訪日外国人は2千万人超で1割強が利用したことになる。
 訪日外国人の増加にホテルの供給が追いつかず、今や民泊は無視できない存在だ。20年の東京オリンピック開催で、都市部を中心にさらなる宿泊施設不足が予想される。みずほ総合研究所の試算では、五輪に向け新たな宿泊施設ができても内外の宿泊客数を多めに見積もった場合、約3・8万室が不足するという。
 しかし現行の旅館業法では、無許可の一般の民家が、繰り返しお金をとって客を泊めることはできない。現在の民泊の多くが、事実上は違法営業の状態とみられる。さらに投資目的で借りたマンションで民泊の営業をしたり、客が頻繁に出入りして騒音などの苦情が出たりするケースも出てきた。
 旅館業法の規制を受けるホテルや旅館は、営業地域や設備などに様々な制限がある。民泊が客を奪うことへの抵抗は強い。同様の問題は欧米でも顕在化し、違法な民泊への取り締まりを強化する国も出てきた。(後略)」(朝日新聞デジタル 藤崎麻里、福田直之 2017年1月3日23時57分更新)
この朝日新聞デジタルという媒体は、結論の部分を有料記事化することで少しでも売上につなげようという編集方針のため、いささか尻すぼみな感のある記事になっていますが、別媒体ではもう少し踏み込んだ記事も書かれています。

金融関連の情報発信に定評のあるZUU onlineでは2016年12月29日、1年の振り返りを込めて「民泊やシェアハウスだけじゃない!2016年に注目された『賃貸』のカタチ」( https://zuuonline.com/archives/134172 )なる記事を掲載しました。ここでは「シェアハウスが婚活ハウスに? 大型シェアハウスのその後」との小見出しで、前年暮れに一部で話題になった「シェアハウス婚活」についても言及しつつ、次のように分析しています。
「(前略)2016年のシェアハウス投資については、いったん落ち着きを見せた感がある。都市部では供給過多との見方も出ているほどだ。大規模シェアハウスが『婚活ハウス』と呼ばれるようになったこともあり、入居希望者が若干落ちついた年と言えるだろう。
今後のシェアハウスは、ハイブリッド型に転換していかなければ利回りの確保は難しくなると予想する。そこで来年新設予定の「民泊新法」による180日限定の民泊営業をシェアハウスと併設してしまうという考え。
来年施行予定の民泊新法の内容によると、既にシェアハウスに住んでいる人を在宅管理人として登録すれば、届出だけで民泊が経営できるようになる。年間180日ということは月平均15日。一泊約7000円から10,000円で民泊できれば空室部分だけのシェアハウス転用は充分アリだ。(後略)」
この記事はyahooやexciteなど、さまざまな総合ポータルサイトから民泊系のまとめサイトなどに数多く転載されているので、ご覧になった方も多いと思われます。

その一方で、ビジネスとはまったく異なる視点からシェアハウスを取り上げている記事もまだまだ目につきます。ただし、その取り上げ方、スポットの当て方は、ここ数年で大きく変貌しました。たとえば、1月4日に小学館系の情報サイト『@DIME』に掲載された「経験や人脈をシェアできる『起業家シェアハウス』活用術」( http://dime.jp/genre/329322/?first=1 )という記事などは典型的でしょう。こちらはどうやら文中で紹介される某シェアハウス運営事業者の記事広告(タイアップ広告?)のようですが、ちょっと興味深かったのは冒頭に書かれた最初の一文。
「かつて大きな注目を集めた『シェアハウス』。(後略)」
なんと、いきなり過去形です。ついでに紹介すると、締めの一文は「ただ一緒に設備や環境をシェアする場所ではなく、深い人脈が広がることで、自分の視野を、より深く大きく広げる機会を多数得られる場所。それが、今ドキの『シェアハウス』といえそうだ。」
この記事を執筆した石原某氏というライターは、プロフィールを拝見すると「美容・健康・ダイエット・ライフスタイル全般」の記事を得意分野とするアラフォー女性とのこと。一応、BtoBマーケティング関連の記事なども手がけているようですが……。どうも、流行のトレンドに敏感な女性の脳内では、シェアハウスという存在はすでに「あ〜、なんか、昔、そんなの流行ったこともあったよね〜」的な位置づけになっているのかもしれません。

ちなみに、女性ライターによるシェアハウスの記事といえば、ザッパラスが運営する情報サイト「wotopi」に2016年12月13日で掲載された「東京は『何者でなくても生きていられる場所』地方出身女子が“進化系”シェアハウスを選んだのは…」( http://wotopi.jp/archives/46090 )という記事中にも「今どきのシェアハウス」という表現があり、具体的には次のような特徴を備えたものだと記述しています。
「おしゃれなカフェが併設されていたり、ホテルのような清掃サービスがあったりと、ハイスペックな物件が多くなってきています。そこでは、シェアハウスと同じように住人の交流を促す仕組みがありつつ、ひとりひとりのプライバシーも確保されるそう。」云々、と。こちらの記事を書かれた小田某氏は、得意分野が「芸能人・作家・著名人インタビュー、日本のTVドラマや海外ドラマ、映画について」という女性ライター。上記の記事中でも再三、TV番組の『テラスハウス』について言及(しかも「リアリティ番組」などという聞いたこともない表現で)していることから、何を根拠に語っているのかはおおよそ察しがつきますが……まあ、言いたいことは何となく伝わってきます。
要するに、もはや「シェアハウス」というだけでは女性にアピールする目新しさに欠ける――と、少なくとも女性ライターたちの目には映っているようです。

こうした風潮を受けてか、シェアハウスの企画・運営を手がける某社は2017年1月、女性専用シェアハウスとアパート合わせて3棟からなる、「コミュニティビレッジ」をオープンするとのこと。この「コミュニティビレッジ」とは、「同じ敷地に立つアパート、シェアハウスの入居者間のコミュニティを重視した物件」であり、「シェアハウスの1棟に17畳のコミュニケーションスペースを設け、3棟の入居者であれば誰でも利用できる共用スペースとすることで、入居者間の交流を促す」と謳っています。

思えば、ほんの10年ばかり前には「知る人ぞ知る……」という存在であったシェアハウスが、あっという間に「誰もが皆、知っている」存在になったのはいいのですが、いつの間にやら「流行遅れの過去の遺物……?」にまでなろうとしているようです。必ずしも最新の流行を追いかける必要はないと思いますが、入居者のニーズの変化を知っておくことは、将来的な集客力の維持・強化につながるものと思われます。
前
第53回 差別化戦略とシェアハウス
カテゴリートップ
新・今月の不動産コラム
次
第51回 結婚とシェアハウス

ログイン

ユーザー名:

パスワード:


パスワード紛失


シェアハウス大家さん
倶楽部(無料)

シェアハウスで不動産投資に踏み出すサラリーマンやOLの皆様を応援する会員制プログラムです。ご登録いただくと各種不動産投資情報やサービスを無料提供致します。
入会申込(無料)