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第58回 アンケート調査とシェアハウス

ここしばらく、北朝鮮は連日のように周辺諸国への挑発行動をくり返しています。7月に2度の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を強行し、8月10日にはグアムを標的とする中距離弾道ミサイルの配備計画を発表。8月29日早朝には日本上空をミサイルが通過したことで、国内にJアラートが鳴り響く騒ぎになり、9月3日にはついに地下核実験を強行しその成功を発表しました。ここまで何度も警告を発しながらも静観の姿勢を貫いてきた米トランプ政権ですが、東アジア情勢はいよいよ一触即発のキナ臭い雰囲気が漂って参りました。

さて、あいかわらず毀誉褒貶の激しい国内のシェアハウス事情ですが、先日、ひさびさにかなりショッキングなニュースが報じられました。元は8月27日付の「財形新聞」の記事で、以下はライブドア・ニュースに転載されたものになります。
「シェアハウスに住みたくない8割、住民同士のトラブル懸念 日本法規情報調査」( http://news.livedoor.com/article/detail/13528985/ )今回は後述する意図から、特に全文を引用することにしてみます。

「少し前に数人の男女が一つの家で一緒に暮らす恋愛ドキュメンタリー番組がテレビで人気を博していた。そこで『シェアハウス』という言葉を初めて聞いたことがある人も多いのではないだろうか。シェアハウスとは、住む人誰もが使用できる共有スペースを持った賃貸住宅だ。安い家賃や光熱費の低下、賑やかさなどのメリットがある一方、多くのトラブルが起こる可能性がある。
 日本法規情報は、自社が運営するサイト『法律問題・法律手続き法律相談サポート』『不動産問題・不動産トラブル訴訟相談サポート』『弁護士事務所相談サポート』にての運用情報やアンケート調査を元に、シェアハウスに関するアンケート調査を行った。
 まず最初の質問は、シェアハウスに住みたいか?これには、シェアハウスに住みたくない人は84%、住みたいという人は16%と、住みたくないと考えている人は全体の8割を超える結果となった。
 住みたくない理由を尋ねると、『住人同士のトラブルが起きそうだから』『プライベート空間が少なそう』(それぞれ27%)、『他人と住むことに躊躇してしまう』(20%)、『共同生活に自信がない』(19%)、『その他』(7%)となった。住人同士のトラブルやプライベート空間の少なさがデメリットの5割以上を占めた。
 自分自身や周囲の人の、シェアハウスでのトラブル経験の有無を問うと、『自分や周囲の人がシェアハウスでトラブルに遭ったことがある』(38%)、『遭ったことがない』(62%)という結果になった。4割近くの人が、シェアハウスでのトラブルを身近に感じていた。
 シェアハウスでのトラブルの実態についても詳しく調査している。調査の結果、『住人同士のトラブル』(43%)、『ルール違反』(24%)、『盗難』(12%)、『プライバシー侵害』(7%)、『雑音』(5%)となった。
 生活スタイルや性格の不一致などによる住人同士のトラブルが約半数を占めていた。数人が生活を共にするシェアハウスでは住人同士の関係性が何よりも重要と言えそうだ。(2017年8月27日 22時38分 財経新聞)」

如何でしょうか? 正直、書かれている内容についてはおおむね理解できるものの、かなり「今さら感」のある記事だと思った方もおられるのではないでしょうか。また、それ以前に「『財形新聞』? 聞いたことないなぁ……」と思われた方も多いと思います。そこで、まずはこの「財形新聞」について調べてみました。Wikipediaの記載によると、これは株式会社財形新聞の発行するWeb新聞で、本社は東京・丸の内で登記されているものの、これはバーチャルオフィスとのこと。つまりは、実体のない会社であることがわかります。Wikipediaの「財形新聞」の項目を作成した人間は、どうやら同紙に対してあまり好意的ではないらしく、以下のような文章が目につきます。
「記事本文末尾に記載のライターが独自の文体や形式で記事を投稿しているため、文体や形式があまり統一されておらず、バラつきが見られるのが特徴である。また、ライターによっては、企業のプレスリリースの本文のコピー・アンド・ペースト(コピペ)に近い文章のものもある。さらに、ライターにより、記事の内容が重複している場合がある」「トップページには、通信社などから配信される、政治・経済・スポーツに関連したニュースの写真が掲載される。この写真は、数日間に渡って更新されない場合もある」「当該所在地は株式会社ファーストコネクションが運営するバーチャルオフィスとなっている」云々。無論、これだけでは「だからこの新聞はデタラメだ、ウソだ」と決めつけることはできません。そこで、次にこの記事のソースであるプレスリリースの発信元(=調査主体)について調べてみました。

記事中に「日本法規情報」とあるのは、新宿区に本社を置く日本法規情報株式会社という社名の企業で、その業務内容は「法律・財務・税務などの領域における専門家(弁護士・司法書士・行政書士・税理士・公認会計士・ファイナンシャルプランナー)の、相談サービス業界が持つ課題を解決し、相談サービス提供者と相談者の溝を埋めることを目的とした、サービス・商品・企画・アウトソーシング・コンサルティングを行う」とあります。何やら堅苦しいイメージですが、どうやら「法テラス」や「弁護士ドットコム」の同業者らしいのですが、2004年創業という歴史のわりには一般の知名度はイマイチのようです。なお、同社がプレスリリース配信サービスの「PR TIMES」を通じて配信した大元の記事も「朝日新聞デジタル」のサイトで確認することができました。

「『相談サポート通信 相談者実態調査』シェアハウスに住みたくないと考える人が8割と多数派。浸透してきたシェアハウスだが、住民同士のトラブルに懸念あり。
配信元:PR TIMES 2017年8月25日」( http://www.asahi.com/and_M/information/pressrelease/CPRT201754851.html

これによると、同社は運営する複数のサイトの運用情報やアンケート調査を元に、定期的に法律関連の話題に対して意識調査を行い発表しており、同リリースは「シェアハウスに関するアンケート調査」ということで発表されています。調査期間は2017年6月30日〜2017年7月14日、男性370人・女性417人の計787人から回答を得たということです。

こうした背景から読み取れることは……。
まず、回答者は(一般には知名度の低い)同社の運営サイトを普段から利用しているか、少なくとも知っている人間――言い換えれば、法律上の悩みを持つ人間だということです。この人たちは、実際にシェアハウスに住んだことがあるかもしれません。そして、上記のようなトラブルを実際に体験していたかもしれません。その意味で、アンケートの信憑性は確かに高いのかもしれませんが……その反面、回答者のほとんどが「自分自身や親しい人間がトラブルに巻き込まれたことのある人たち」で占められているのだと考えれば、「シェアハウスに住みたくない人が84%」という結果になるのは当たり前ではないでしょうか? 逆に、「シェアハウスに住んでいてもそうした住民トラブルとは無縁であったり、少なくとも自分自身が困ったことのない人たち」を対象に回答を集めたとすれば、まったく逆の結果が出るのではないでしょうか……?
要するに、もともとの回答者に一定の偏りが認められる以上、その結果を一般化して「世の中の8割以上の人がシェアハウスに住みたくないと考えている」と結論づけるのはいささか無理がある、ということです。もちろん、データはデータとして大いに参考にするべきでしょうが、少なくとも、ショッキングな数字を鵜呑みにして気に病む必要はありません。

ただし、シェアハウス運営をめぐる状況が楽観できないのは事実のようで、あいかわらず、個性や特徴をアピールしようとするあまり「尖ったコンセプト」を前面に打ち出したハウスの話題が目につきます。最近でも「ライトノベルに囲まれた環境でプロを目指せるクリエイターズシェアハウス」や、「保護猫と暮らすシェアハウス」、「『旅する暮らし』を日常から体感できる『旅するシェアハウス』」といった、キャッチーではあるものの、ややもすると地に足がついていないようにも見えるコンセプト型シェアハウスが隆盛です。さらに、以前当コラムで取り上げた「LGBT支援」と同系統の「多様な性にやさしいシェアハウス」などの話題も見られ、ますます百花繚乱の体を成しています。正直なところ、あまりに「尖りすぎ」「狙いすぎ」なコンセプトは失敗したときのリスクも大きいと思いますが、もし成功すれば、シェアハウスの秘めた潜在的な可能性を発掘することができるかもしれません。
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