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第61回 2018年とシェアハウス

皆様、あけましておめでとうございます。本年も当コラムをよろしくお願い申し上げます。

昨年末からこの年明けにかけて、日本経済は何かと景気のいい話題でもちきりとなりました。たとえば、12月26日の日経新聞を見ると「11月の完全失業率2.7%、24年ぶりの低水準。一方、消費者物価指数の総合は100.7で20年ぶりの高水準」といった内容の記事が掲載されていました( https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25077110W7A221C1MM0000/?n_cid=NMAIL007 )。また、株式市場に関しては12月29日の大納会、明けて1月4日の大発会で、ともに日経平均株価が26年ぶりの高値を記録しております。いずれも確かな数値に裏づけられた報道であり、日本国民としてはもろ手を挙げて歓迎したいところですが……。果たして今、日本中でどのくらいの人が好景気を実感できているものでしょうか。

もちろん、「庶民の実感を伴わない景気回復」などというお題目はそれこそ耳にタコでしょうし、ここへ来てしばしば引き合いに出されるバブル期の好景気のことなど、もはや実体験として知っているのは50歳以上の世代だけとなってしまいました。現在40代前半の働き盛りの世代では、バブル最盛期にはまだ中高生でしたから、少し上の先輩たちの話を信じられない思いで聞かされてきたことでしょう。
また実際、バブル当時の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という天上天下唯我独尊ムードとは正反対に、現在の景気はあくまでアメリカや中国をはじめとする世界経済の好調に支えられての好況であると認識されています。日本だけがわが世の春を謳歌しているわけではありませんから、たとえば「アメリカの象徴であるマンハッタンの摩天楼を日本企業が買収する」といった、バブル期の再来のような出来事は、今後まかり間違っても起こらないということは容易に予測できます。
その意味では、日経平均株価や完全失業率などの数値だけを根拠として、昨今の好景気からバブル期の隆盛の再現を期待することはできませんし、逆にバブル崩壊を懸念する必要もまったくないと言えます。それよりも、これほど景気のいい話題が飛び交っている一方で、なぜアベノミクスが目標に掲げる「デフレ脱却」を何年経っても果たすことができないのか――なぜ「庶民の実感を伴わない景気回復」が未だに続いているのか、を考えてみる必要がありそうです。

さて、2018年は、あの悪夢のようなリーマンショックからちょうど10年目に当たります。そもそもリーマンショックの引き金となったのは、その前年末にアメリカ国内で発生したサブプライム住宅ローン危機――いわゆる「サブプライムショック」でした。この時点では日本国内への直接的な影響はほとんどありませんでしたが、少し遅れて2008年3月に大阪の(株)レイコフが民事再生を申請して事実上倒産したのを皮切りに、6月には神奈川の(株)スルガコーポレーション、7月には東京の(株)ゼファー、8月には広島の(株)アーバンコーポレイションなど、全国で不動産会社の倒産が相次ぎました。レイコフは大証ヘラクレス、スルガコーポレーションは東証二部、ゼファーやアーバンコーポレイションに至っては東証一部上場企業であり、業界内では中堅から準大手に位置づけられていましたから、その社会的影響はきわめて大きく、取引先や下請け、関連会社などにたちまち波及して「連鎖倒産」が起こります。すなわち、9月15日のリーマンショック以前から、不動産業界(および建築業界)の一部ではすでに深刻な事態を迎えていたわけです。
これらの上場企業の倒産には、それぞれに(サブプライムショックの影響以外の)直接的な原因が挙げられていますが、共通しているのは、実際に倒産が報じられるまでほとんど前兆らしい前兆が見られなかったということです。たとえばスルガコーポレーションの場合、倒産直前の2008年3月期の連結決算では過去最高益を計上していたほどでした。
そこで、さらにさかのぼって原因を考えてみると、2006年から2007年にかけての、いわゆる「プチバブル」「ミニバブル」などと呼ばれた地価上昇に行き当たります。この時期には、バブル崩壊以来10年以上も下がり続けた公示地価が初めて下げ止まり、一部の地域では反転上昇となりました。バブル期に比べるとあまりにもささやかな地価上昇であったことから、プチ・ミニといった接頭語を付けて呼んだものです。いささか乱暴な分析になりますが、リーマンショック以前に連鎖倒産した不動産会社の中には、このプチバブルの時期に業績好調を背景に過剰な投資を行うなど、経営判断を誤ったことが倒産の遠因となったところも少なくないと思われます。
あれからちょうど10年が経ち、2016年の地価公示では「リーマンショック以来8年ぶりに全用途平均で前年比上昇に転じる」、2017年には「住宅地の地価変動率がリーマンショック以来9年ぶりに前年比横ばいとなる」など、あたかも当時をなぞるような状況が続いていることに改めて気づかされます。もちろん、同じような状況だからといって似たような結末を迎えるとは限りませんが、不吉な前例があるということは頭の片隅にでも意識し、自戒するに越したことはないでしょう。

なお、不動産関連の業界団体トップたちの年頭所感をざっと見ていくと、不動産協会の菰田理事長の「今年は経済の好循環に向け成長を加速できる年となるよう期待したい」、不動産証券化協会の岩沙会長の「わが国経済は、世界経済の回復を背景に、内外需がバランスよく景気を牽引し、緩やかな拡大を続けている。(中略)不動産投資市場は着実に成長を続け、上場・非上場を併せたリート市場の資産規模は約19兆円に達した」、不動産流通経営協会の榊理事長の「我が国経済は、『いざなぎ景気』を超えて、戦後二番目となる息の長い成長が続いている」など、今年も肯定的な評価と景気のいい文句が目につきます。その一方で、全国宅地建物取引業協会連合会の伊藤会長の「いざなぎ景気を抜き戦後2番目の景気継続と株価の高騰があったものの中小企業等には実感が乏しいものでありました」、全日本不動産協会の原嶋理事長の「景気は穏やかな回復基調にあると言われています。しかしながら、国民の多くが実感として抱いている景況感との間には、依然として距離感がある……」、全国住宅産業協会の神山会長の「企業業績や雇用環境が改善するなか、個人消費は緩やかな回復基調にありますが、若年層を中心に消費性向の低下が続いており……」など、庶民感情を代弁するようなコメントも見られました。景気動向のほかに、何人かのコメントに共通するトピックとして「宅建業法・住宅セーフティネット法・不動産特定事業法・民泊新法など新しい施策が施行されつつあり……」(伊藤会長)といった、不動産関連の法改正に関する話題、「AIの活用等、急激な時代変革を先取りするまちづくりに向けた取り組みを展開……」(菰田理事長)「IT重説がスタート、さらに不動産取引においてもICTの利活用が見込まれ……」(原嶋理事長)といった、新技術の導入に関する指摘が目立っています。

法改正にせよ新技術にせよ、何も不動産業界に限った話ではありませんが、年々目まぐるしいまでの変化と進歩が起こっており、少し情報収集を怠っていると、あっという間に世間から置いてきぼりになってしまいます。そして、一度置いていかれると、他人の2倍も3倍も努力しなければ世間に追いつけないのが現代の日本社会というもの。シェアハウス大家さんであっても同じことです。たまには新年らしく、教訓めいたことを言わせていただければ――「温故知新」という言葉の通り、前例に学ぶとともに、最新の情報にも常に目を向けていく姿勢が大切です。
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