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第62回 投資トラブルとシェアハウス

お隣の韓国では現在、平昌(ピョンチャン)オリンピックが開催中です。夏季五輪に比べると、注目度や国内の盛り上がりの点でどうしても一段落ちるきらいのある冬季五輪ですが、今回は来たるべき2020年東京オリンピックを目前に控えていることもあって、日本国内でも関心が高まっているほうでしょう。すでに何人かの日本人選手がメダルを獲得しており、銀メダルを獲得した平野歩夢選手・高木美帆選手・渡部暁斗選手・小平奈緒選手らの活躍はマスコミでも大きく報じられています。その一方で、ヨーロッパでのリアルタイムでのテレビ中継のために競技が現地時間の夜遅くに集中するなど、いささか本末転倒のような運営方針には疑問の声も多く、日本でもぜひ他山の石としたいところです。

さて、2018年2月13日未明、朝日新聞をはじめとする複数のメディアで一斉に「ある事件」が報道されました。朝日新聞系列のWebサイトのみでも有料・無料を含めてさまざまな見出しで報じられていますが、ここでは無料で確認できる『朝日新聞デジタル』の記事を全文引用することにしましょう。「シェアハウス投資、融資資料の改ざん多発 預金額水増し」( https://www.asahi.com/articles/ASL283DFVL28ULFA00F.html )という記事です。
「会社員らが投資目的で建てたシェアハウスで約束された賃料が払われなくなった問題で、融資関係資料の改ざんなどの不正が多発していたことがわかった。預金額の水増しなどで信用力を上げ、多額の融資を受けやすくしたとみられる。融資の多くは地方銀行のスルガ銀行(静岡県沼津市)が行っていた」
まず、ここまでがリード(前文)で、この後に「シェアハウス投資でトラブル続出」「偽られた資金力、銀行も積極融資 シェアハウス投資」などのセンセーショナルな見出しのリンクが張られ、いよいよ記事本文となります。
「問題になったのは、首都圏を中心に急拡大した『シェアハウス投資』。トイレなどが共用のシェアハウスで会社員らが1棟丸ごとオーナーになる。長期の賃料収入を約束する『サブリース』で勧誘され、副収入目当ての会社員らが1棟1億円超を借りて建てる例が多い。不動産業者らは土地紹介や建築請負、入居者募集なども担う。だが、800人超が賃料が払われないトラブルに巻き込まれている。顧客が多い不動産会社スマートデイズ(東京)は1月から約700人への支払いを停止した。多くはスルガ銀でお金を借りていた。
 シェアハウス投資では、不動産会社と提携する数十社の不動産仲介業者が窓口の場合が多い。会社員らは融資を受ける際、仲介業者に預金通帳の写しなどを渡し、銀行との手続きを一任。ところが一部の融資で書類が改ざんされていた。
 預金残高を10倍以上に膨らませたり、業者に多額の頭金を振り込んだりしたように書き換えた例もある。多額の預金や頭金の支払い能力があるように見せかけ、融資を引き出しやすくした可能性がある。
 シェアハウス賃料の支払い停止後、融資返済が厳しくなった会社員らがスルガ銀に返済猶予を求める中で不正が発覚。多くの改ざんは会社員らが知らぬ間に行われていたとみられる。
 仲介業者の一部は朝日新聞の取材に不正の存在を認めた。誰がどのように行ったかは明かしていない。スマートデイズは『金融機関とオーナー間のやり取りは答えられない』という。
 スルガ銀は、シェアハウスへの融資について『収益性不動産投資の新しい形として有望と考えた。具体的な融資額はお答えできない』とし、預金水増しなどは『融資実行後に一部そのような例が判明した』としている。『当社の手続きの不備によるか否かに関わらず許されることではない』とし、現時点で行員が関与した形跡はないとしている。(藤田知也、久保智/2018年2月13日04時06分更新)」

まず、はじめにこれだけは断言しておきたいと思います。私たちシェアスタイルは本件に一切関与しておりません。記事中に実名で報道されたスマートデイズは狭い業界の中での同業者であり、社名くらいは存じております(正直なところ、あまりいい評判は聞いていませんでしたが……)。また、スルガ銀行はシェアハウスに理解の深い金融機関として以前一緒にセミナーなどを開催したこともありましたが、現在ではまったく取引はございません。ですから、このような不正に直接関与していないのはもちろんのこと、こうした不正が行われていたという事実についても、文字通り寝耳に水の驚きでした。記事中では「不動産業者ら」「顧客が多い不動産会社スマートデイズ」などという表現で、あたかも多数のシェアハウス事業者が同様の不正に手を染めているかのような印象操作を行っておりますが、私たちの知る限り、多くの同業者は日々まっとうなビジネスに取り組んでおり、このような不正に積極的に関与しているとは考えられません。実際にスマートデイズではこのような融資資料の改ざんや預金額の水増しなどが行われていたとしても、そのことが直ちに「シェアハウス投資は詐欺だ」とか「サブリースはインチキだ」ということを意味するわけではない、とここできっぱり断言しておきます。

なお、上に引用した記事中にもありますが、スマートデイズが投資家へのシェアハウス賃料支払いを停止したのは1月20日前後の出来事で、このニュースはすでにさまざまなメディアで報じられています。また、今回の報道に先立ち、2月12日付の『全国賃貸住宅新聞』には「スマートデイズに対し集団訴訟視野 投資用シェアハウス被害者の会始動」( http://www.zenchin.com/news/post-3719.php )という記事が掲載されたほか、同じ2月13日更新の『MAG2 NEWS』では『伝説の探偵』こと阿部泰尚氏が「家賃収入10億のハズが破産へ。会社員を狙うシェアハウス投資の手口」( http://www.mag2.com/p/news/349835 )というコラムを掲載しています。後者は朝日新聞による融資関係書類改ざん報道とほとんど同時のタイミングの更新だったせいか、スマートデイズについては1回だけ実名を出しているものの、金融機関名については「S銀行」と伏せています。

ただし――これでまたしばらくの間、シェアハウス業界に逆風が吹くことが予測されます。この件をきっかけに、シェアハウス投資を検討していた人が手を引くこともあるでしょうし、一度交わした契約を白紙に戻すと言いだして業者との間でトラブルになることも増えるでしょう。さらに、金融機関側もシェアハウス投資家への融資には慎重になるでしょうし、審査基準もより厳しくなって融資を受けられなくなる人も出てくるかもしれません。数年前に騒がれた「脱法ハウス問題」や、それが引き金となった「寄宿舎ルール問題」など、ここ1〜2年でようやく影響を脱しつつある「シェアハウス冬の時代」の再現となることも十分に考えられます。

しかし、止まない雨はありません。風評被害によって一時的に収益が落ち込み、経営が苦しくなったとしても、それが永遠に続くと決まったわけではないのです。考えようによっては、今回の事件は、業界の自浄作用を促進させるための絶好の機会かもしれません。「シェアハウス投資は儲かる」という認識が世の中に広まってきたからこそ、そこにつけ込む悪質な業者がはびこりだしたとも言えます。その意味で、まっとうなビジネスに邁進するシェアハウス業者にとっては試金石であり、シェアハウス大家さんにとってはご自身が契約している業者がまっとうかどうかを見定める契機となるのではないでしょうか。
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