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第63回 投資トラブルとシェアハウスその2

財務省による文書改ざん発覚をきっかけに、ざっと1年越しに再燃した森友学園問題は、与・野党それぞれの思惑をはらんで国会審議の焦点となり、まだまだ決着する気配すら見えていません。一方、2027年の開業を目指すリニア中央新幹線の工事では、ゼネコン大手4社による談合事件が発覚。さらにはここ数日の米国株の暴落を受けて東京株式市場でも全面安となり、3月23日の日経平均株価は一時前日より1,000円超の下落幅を記録するなど、このところメディアの注目する大きな話題は枚挙に暇がありません。

これらの大がかりな事件や経済動向に比べると、前回の当コラムで取り上げたシェアハウス「かぼちゃの馬車」のサブリース事業が破綻した(株)スマートデイズや、そのオーナー向け融資をほぼ独占してきたスルガ銀行の事件などは、さすがにインパクトに欠けるせいかメディアの注目度も低くなっているようですが……一応、その後の続報について簡単に触れておきましょう。
まず、前回のコラム更新の直後、2月21日付の『朝日新聞デジタル』には、「シェアハウス投資、前社長『だますつもりはなかった』」( https://www.asahi.com/articles/ASL2N4D9ZL2NULFA015.html?iref=pc_rellink )という見出しでスマートデイズ前社長のインタビューが掲載されました。以下、一部引用しておきます。
「(前略)――割高な物件の売却益を賃料払いにあてる『自転車操業』で、無理なビジネスだったのでは
 『スタート段階での自転車操業はよくあることで、そういう期間は必要だ。1万室まで規模を増やせば、人材紹介料など家賃以外の収入で軌道にのれるはずだった。その前にスルガ銀行(静岡県沼津市)に新規案件の融資をとめられ、お金が入らなくなったために行き詰まった』
 ――オーナーをだましたのでは
 『だますつもりはなかった。僕も2016年末にシェアハウス2棟を買い、スマートデイズと(一括借り上げの)サブリース契約を結んで、今は未払い。だます人が自分で買わないでしょう』
 ――入居率や家賃外収入で虚偽の説明をしたのでは
 『入居率が下がってから数字は控えた。家賃外収入の数字も口にしていない』
 ――自身の著書に入居率9割と書いてある
 『書いてあるとすれば、それはライターのミス。僕は執筆していないから』(後略)」

「ふざけるな!」という読者の声が聞こえてきそうなインタビューですが、ここで一点のみ注釈しておくと、この前社長の「著書」というのは『「家賃0円・空室有」でも儲かる不動産投資―――脱・不動産事業の発想から生まれた新ビジネスモデル』(大地則幸著/ダイヤモンド社刊)というタイトルで2016年8月に出版された書籍です。著者である前社長のコメントにあるように、この種の会社経営者の出版物の99%以上は外部のライターが文章を起こしていますが、そのことは問題ではありません。いわゆる「ゴーストライター」が問題になるのは、文章そのものに価値のある職業作家や評論家などの文筆業者だけであり、経営者や芸能人のように素人が著者の場合、「文章そのもの」ではなく「書かれた内容」に価値があると見なされます。したがって、実際に文章を書いたのは別人だとしても、書かれた内容に対しては著者が全責任を負うことになります。仮に内容にミスがあったとすれば、それを書いたライターではなく、(おそらく内容のチェックもせずに)ミスを修正する義務を怠った著者の責任なのです。
その後、3月17日付の『朝日新聞デジタル』には、「スルガ銀に報告徴求命令 シェアハウス投資問題で金融庁」( https://www.asahi.com/articles/ASL3K4H7HL3KULFA006.html )という署名記事が掲載されました。翌18日にもほぼ同じ内容の記事がアップされていますが、17日の記事の方がやや詳しいので、こちらを全文引用しておきます。
「シェアハウス投資で約束された賃料がオーナーに支払われなくなった問題で、金融庁は、多くのオーナーに融資した地方銀行のスルガ銀行(静岡県沼津市)に対し、銀行法に基づく報告徴求命令を出した。シェアハウス投資では、オーナーが不動産仲介業者に託した融資書類で改ざんなどの不正が多数確認されている。スルガ銀は自主調査を始めたが、監督する金融庁としても実態を詳しく把握する必要があると判断した。
金融庁はスルガ銀に対し、シェアハウス投資向けの融資での審査態勢などについて報告を求めている模様だ。これまでも適宜報告を受けていたが、問題の広がりを受け、報告徴求命令を出して詳細に聴くことにした。命令への同行の対応は、行政処分を出すかどうかの判断材料にもなる。
 シェアハウス投資では、不動産業者が長期の賃料収入を保証し、会社員らがオーナーになった。多くはシェアハウスの購入資金を億単位でスルガ銀から借りた。ところが業者が突然賃料を払わなくなり、1千人規模のオーナーが返済に窮する事態になっている。
 また、オーナーがシェアハウスを購入する際、不動産仲介業者を通じてスルガ銀に出した融資関係書類で、預金残高の改ざんなどの不正が多数発覚している。スルガ銀は返済が難しくなったオーナーに対して返済を事実上猶予したうえで、オーナーへのアンケートなどを行うなどして融資実態の調査をすでに始めている。(真海喬生)」
文書改ざんの調査報告を命じた金融庁は、かつて大蔵省(現・財務省)役人の汚職事件をきっかけに、それまで大蔵省が担っていた民間金融機関等の検査・監督機能を分離し、総理府(現・内閣府)の外局として誕生した旧・金融監督庁が前身です。財務省が文書改ざん問題で揺れているのと同じ時期に、金融庁が民間金融機関の文書改ざん問題を追及するというのは、なんとも皮肉な構図ではないでしょうか。

この事件に関しては、今後も引き続き経過を見守っていきたいと思いますが……それはそれとして、少々興味深い動きが出てきているようです。
まずは国土交通省ですが、3月9日に「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案」が閣議決定されました( http://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo02_hh_000106.html )。簡単に言ってしまえば、所有者がわからないために利用できないまま放置されてきた土地の収用手続きに要する期間が、国・都道府県知事の事業認定を受けた事業については現在の約3分の2程度に短縮できるというものです。当コラムでもたびたび取り上げてきた「空き家問題」の解決に向けて、いささか遠回りではありますが、国もようやく本腰を入れてきた、というところでしょうか。
また、3月20日には東京都都市整備局が、市街化調整区域内での開発許可審査基準の改正を決定しました( http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/03/20/08.html )。これまで、市街化調整区域では原則として用途変更ができませんでしたが、「観光振興や集落の維持等を目的に空き家等の用途を変更する場合、新たに開発許可の対象に加えるように改正する」というものです。東京都は、この改正によって既存集落における地域再生活動を促進し、「空き家をシェアハウスにする」「空き校舎を研修施設やサテライトオフィスにする」など、有効活用の進展を期待しています。こちらは4月以降の受付案件より順次適用していくとのことです。

こうした土地の利活用に関する法改正・法整備については、やはり国や自治体など「お上」の動きに期待するしかありません。それだけに、ここへきて国交省や東京都がこうして不動産流動化促進の取り組みに意欲を見せているのは何とも頼もしい限り。「かぼちゃの馬車」事件によるシェアハウス業界への風評被害は避けられないとしても、上空ではまだまだ追い風も吹いているようです。
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