不動産関連お役立ち情報  >  新・今月の不動産コラム  >  第64回 投資トラブルとシェアハウスその3

第64回 投資トラブルとシェアハウスその3

ここしばらく、北朝鮮をめぐる情勢が一気に変動しています。トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長による米朝首脳会談が6月12日にシンガポールで開催されることになり、非核化と南北融和に向けて一歩も二歩も前進したように感じられます。とはいえ、「金正恩氏にノーベル平和賞を……」という世間の声については、つい先日まで核兵器で世界を恫喝していた張本人であることを思えば、いささかマッチポンプの印象が拭い去れませんが……。

さて、前回・前々回に引き続き、例の「かぼちゃの馬車」をめぐるシェアハウス投資問題について、ここ数日、さらなる続報がメディアを賑わせています。まずは、GW明けの5月7日付の『朝日新聞デジタル』の記事から一部引用します。
「シェアハウス問題、被害弁護団『スルガ銀関与』音声公表」( https://www.asahi.com/articles/ASL5751FGL57UUPI001.html
「シェアハウス投資へのスルガ銀行(静岡県沼津市)の融資で資料改ざんが相次ぎ発覚した問題で、借金返済が困難なオーナーらの被害弁護団が7日、不動産業者がスルガ銀行員との電話を録音したとする音声データを公開した。その中では、スルガ銀行員とされる人物が、改ざんできる会社を紹介していた。弁護団は『銀行の不正への関与を示す証拠だ』と主張しているが、スルガ銀は『不正への関与は認識していない』としている。
(中略)
 音声データは2016年4月に録音され、不動産業者の顧問弁護士から弁護団に提供されたという。
 シェアハウス投資では複数の不動産業者が会社員らをオーナーに勧誘。多くをスルガ銀が融資した。融資の過程で年収や預金を水増しする書類改ざんが横行した。音声データでは、改ざん方法がわからない業者はどうすれば良いかスルガ銀行員とされる人物と会話していた。
 『いじくれない販売会社がいたらスルガさんはどうする』との問いに、行員とされる人物は改ざんできる会社名を挙げ、『オフィシャルにはいえないが、そういう依頼を受けることが多い』『彼はそこそこできる』などと応じていた。
 弁護団の河合弘之弁護士は『スルガ銀は不正への関与を認めないが、この証拠で覆る』とし、融資契約の『白紙撤回』を求めるという。スルガ銀の広報担当者は『音声内容は聞いていないのでコメントは控える。(行員が)不正に関与したとの認識はない』としている。また同行は7日、シェアハウス投資に関連し18年3月期決算で貸し倒れ引当金を積み増すと発表した。関連融資額は1千億円超とみられる。(藤田知也 2018年5月7日21時00分更新)」

この藤田知也なる朝日新聞記者は、この事件に関する取材を精力的に行っており、2日後の9日の同紙には次のような記事が掲載されました。

「スルガ銀大幅減益へ シェアハウス融資貸し倒れの可能性」( https://digital.asahi.com/articles/ASL585GRJL58UUPI001.html?_requesturl=articles%2FASL585GRJL58UUPI001.html&rm=287
「シェアハウス投資で多くを融資した地方銀行のスルガ銀行(静岡県沼津市)は8日、2018年3月期決算が大幅減益となる見通しだと発表した。シェアハウス投資ではずさんな計画や融資過程での不正が発覚し、多くのオーナーが返済に窮している。スルガ銀の融資も焦げ付く可能性が出ており、同行は貸し倒れ引当金を積み増した。減益決算となれば7年ぶり。決算は15日に正式発表する。
(中略)
 昨秋以降、賃料減額や不払いが相次ぎ、多くのオーナーはスルガ銀への借金を返せなくなった。同行は一部で金利引き下げや元本払いの一時猶予などの対応を進めている。ただ、支払い停止を申し入れたオーナーも多い。今後スルガ銀の損失が膨らむ可能性もある。
 また、オーナーの被害弁護団は8日会見し、スルガ銀の融資の過程で預金や年収を示す資料が改ざんされていると指摘。貸し倒れ引当金の査定は不正な資料に基づき不適切だとして、同行の監査法人に申し入れる方針を示した。不正に関わった不動産業者らに対しては、私文書偽造や変造の容疑などで来週中にも刑事告訴するという。(藤田知也 2018年5月9日13時14分更新)」

この段階で、藤田記者の関心はすでに「かぼちゃの馬車=(株)スマートデイズ」に関する問題から離れ、スルガ銀行の融資をめぐる経営姿勢に着目していることがわかります。そして、13日に至り、ついに今回のシェアハウス投資以外の「融資資料改ざん問題」にまで波及することになりました。それが次に引用する記事です。

「中古マンション融資、スルガ銀などを提訴 業者『資料を改ざんした』」( https://digital.asahi.com/articles/DA3S13491519.html?rm=150
「中古マンションを1棟丸ごと買う投資で、書類が改ざんされて融資が実行され、割高な物件を買わされたとして、岡山県の30代の男性が不動産業者やスルガ銀行(静岡県沼津市)を相手取り大阪地裁に提訴した。『不正をしてまで買いたくはなかった』と、計約2億2800万円の損害賠償を求めている。
 訴えられたのは、大阪市の不動産販売業者と勧誘業者、スルガ銀と同行京都支店の融資担当者。同行ではシェアハウス投資でも融資資料の改ざんが相次ぎ発覚した。一連の問題での同行への賠償請求訴訟は初とみられる。
 訴状によると、男性は2015年9月、投資目的で中古マンションを1棟1億9500万円で、新築マンション2室を計約3400万円で購入。全額をスルガ銀から借りた。しかし融資の過程で通帳コピーや確定申告書などが改ざんされ、貯蓄や年収が水増しされた。中古マンションの家賃収入表も偽造され、優良な物件だと装っていた。
 原告側は、高額の物件を買うには男性の収入が不足していると被告らが知りながら、改ざんで融資を引き出し、割高な物件を買わせた、と主張している。スルガ銀には、融資時にリスクなどの説明が不十分で、通帳原本の確認を怠った責任もあると主張する。
 勧誘業者は朝日新聞の取材に『販売業者に指示され、パソコンで資料を改ざんした。反省している』と答えた。販売業者は『改ざんは知らず、指示もしていない。客が改ざんを知らなかったのなら不信感を持たれても仕方ない』としている。スルガ銀は『コメントは控える』としている。(藤田知也 2018年5月13日05時00分更新)」

上記の記事では、大阪市の不動産販売業者の「改ざんは知らず、指示もしていない」というコメントの信憑性について、皮肉な見方をしている人も多いと思われます。もともと、不動産ローンを組もうという際に、スルガ銀行は他の金融機関に比べて「審査基準が“かなり”甘い」ということは、業界ではかなり以前から広く認知されていました。シェアハウス大家さんに限らず、たとえば自宅のローンを組む際にも、「大手都市銀ではまず審査を通らないが、スルガ銀なら融資可能」と言われた人は少なくないのではないでしょうか? つまり、不動産業者にとって、年収の低い、資産の少ない層(いわばサブプライム層)の顧客に不動産を販売しようとするときには、「困ったときのスルガ銀」として認識されていたと考えられるのです。無論、その理由が「組織的な(?)資料改ざんにあった」とまでは知らなかったかもしれませんが……。

いずれにせよ、「審査基準が他行よりも緩やか」というレベルであればギリギリでグレーゾーンに収まったでしょうが、「資料改ざん」が事実であれば明白な違法行為です。この件は司直の手に委ねられることになりますが、捜査の進捗にしたがって、さらに波紋が広がることも予測されます。そして、「中古マンションの家賃収入表も偽造され、優良な物件だと装っていた」ことが事実であったとすれば、ことはスルガ銀行だけの不正にとどまらず、不動産販売業者への責任追及へと発展することになるでしょう。

その一方で、大手資本によるシェアハウス事業もここへきてますます本格化の兆しを見せています。奇しくもGW直前の4月27日、2件の情報がリリースされました。1件は、旧財閥系大手デベロッパーのレジデンス部門が手がける中古ビル再生事業で、「初のリノベーションシェアハウス」が竣工したという報道発表。これは独身寮をリノベーションして、全30室のシェアハウスに転用したものだそうです。同社は6月にもシェアハウス第2弾をオープンするとのことで、今後もシェアハウスを含めた中古ビルの住宅転用を推進していくとコメントしています。もう1件は、別の大手デベロッパーが大手ゼネコンと共同開発を進めている都心部の再開発事業で、同じ27日に住宅棟2棟を着工したという報道発表です。こちらは東京都による「都市再生ステップアップ・プロジェクト」の一つで、「一般賃貸住宅、サービスアパートメント、シェアハウスを計画するなど、多様なライフスタイルに合わせた設計とする」としています。

リノベーションにせよ新築にせよ、大手資本が直接手がけることになるシェアハウスは、個人オーナーや中小零細事業者の手になるシェアハウスに比べて、圧倒的な信頼感をもって市場に受け入れられることは疑問の余地もありません。これによってシェアハウスという業態自体はより安定するかもしれませんが、個人経営のシェアハウス大家さんにとっては、諸手を挙げて歓迎というわけにはいかない事態となりそうです。
前
第65回 逆風とシェアハウス
カテゴリートップ
新・今月の不動産コラム
次
第63回 投資トラブルとシェアハウスその2

ログイン

ユーザー名:

パスワード:


パスワード紛失


シェアハウス大家さん
倶楽部(無料)

シェアハウスで不動産投資に踏み出すサラリーマンやOLの皆様を応援する会員制プログラムです。ご登録いただくと各種不動産投資情報やサービスを無料提供致します。
入会申込(無料)