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第65回 逆風とシェアハウス

一時はあわや中止の危機を迎えたものの、6月12日、予定通りトランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長による米朝首脳会談が開催されました。トランプ米大統領は「歴代大統領の誰にも実現できなかった史上初の快挙」と胸を張りますが、なに、北朝鮮の核配備が「世界平和の脅威」と見なされるようになったのはここ最近の話。歴代大統領は旧ソ連やイラク、あるいはベトナムといった国々を(それが客観的事実であったかどうかはさておき)より強大な「世界平和の脅威」と見なしていたというだけです。会談当日の日本国内のマスコミ報道も、東海道新幹線での3人殺傷事件や、富山県の集団レイプ事件など、より国民にとって身近な脅威に一定のリソースを割いていたように感じられます。

さて、ここ数回当コラムで取り上げてきた、「かぼちゃの馬車」破綻をめぐるシェアハウス投資トラブル問題ですが、一応、その後の経過を簡単におさらいしておきましょう。去る4月9日に民事再生法を申請したスマートデイズ社は、再生計画作成のメドが立たないなどの理由から4月18日には民事再生の申し立てを棄却され、前回のコラム更新後の5月15日、破産手続き開始決定を受けました。その一週間後の5月22日には、同じくスルガ銀行からの多額の不正融資を受けた投資家に対してシェアハウスの販売を行っていたゴールデンゲイン社の破産が報じられました。以下、翌23日付の『時事ドットコム』の記事「ゴールデンゲインが破産=シェアハウス運営、スルガ銀融資」( https://www.jiji.com/jc/article?k=2018052301255&g=eco )から全文引用します。
「シェアハウス販売・運営のゴールデンゲイン(東京)が22日に東京地裁から破産手続きの開始決定を受けたことが23日、分かった。シェアハウスを購入した投資家の大半がスルガ銀行(静岡県沼津市)から融資を受けていたという。東京商工リサーチによると、負債総額は13億6900万円(2016年10月末時点)。
 ゴールデン社は東京を中心に個人投資家向けに販売したシェアハウスを一括で借り上げ、あらかじめ約束した家賃収入の一部を支払っていた。しかし、入居率が低下し、家賃の支払いを停止するなど経営が悪化。物件所有者など債権者から破産を申し立てられた。(2018/05/23-21:06)」

スルガ銀行から投資家への融資を引き出していたシェアハウス事業者としては、スマートデイズ社に続いて2社目の破産となりますが、今後、マンション投資なども含むさまざまな不動産業者に波及することが想定されます。当コラムではこれまで、基本的に不正業者が淘汰されていくことを業界の浄化という意味でポジティブに捉え、ある面においては歓迎さえしてきたのですが、このまま社会問題化して拡大していけば、遠からず火の粉は業界全体に降りかかってくることが懸念されます。サラリーマンの副業としてのシェアハウス投資、というビジネスモデルを展開しているだけで、健全で優良な経営を続けている事業者にとっても、無視できない風評被害に悩まされることになりそうです。

また、投資トラブル問題以外でも、シェアハウスという住まい方が一般化したことによる一種の弊害が表面化しつつあります。そのひとつが、男女共用シェアハウスにおける男女間のトラブル。これまでにもたびたび当コラムで取り上げてきましたが、このところやたらメディアで同種の記事を見かけることが増えてきました。特にこのトラブルを好んで取り上げているのがフジサンケイグループの扶桑社の週刊誌『SPA!』系のWeb記事で、ここ2〜3ヶ月だけ見ても手を変え品を変え、同様の内容を何本も掲載しています。たとえば、
「若者とツルむ40代おじさんの生態。シェアハウスでナンパ、BBQ写真を投稿…」( http://news.livedoor.com/article/detail/14829861/ )(2018年6月7日 15時54分更新 日刊SPA!)
「シェアハウスに男女4人で暮らしたら、恋愛トラブルで大崩壊」( https://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%82%A2%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%81%AB%E7%94%B7%E5%A5%B34%E4%BA%BA%E3%81%A7%E6%9A%AE%E3%82%89%E3%81%97%E3%81%9F%E3%82%89%E3%80%81%E6%81%8B%E6%84%9B%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%96%E3%83%AB%E3%81%A7%E5%A4%A7%E5%B4%A9%E5%A3%8A/ar-AAxIztL#page=2 )
(2018/05/24 08:47更新 女子SPA!)
「『テラハ』に憧れて入ったシェアハウスでトラブル続出。1人の女子が男全員と…」( http://news.livedoor.com/article/detail/14652470/ )(2018年4月30日 15時54分更新 日刊SPA!)
といった具合。最後の記事の見出しにもあるように、これらの記事では先年大ヒットした例の“恋愛リアリティー番組”こと「テラスハウス」の影響を指摘する声が多いようです。これらはまだしも入居者間のトラブルであり、当事者にとってはもちろん深刻でしょうが、シェアハウス大家さんにとってはいわば「貰い火」、巻き込まれた被害者の立場でした。ところが――。
6月13日付の『朝日新聞デジタル』において、ついに看過し得ない事件が報じられました。「シェアハウスで泥酔女性にわいせつ容疑 オーナー逮捕」( https://www.asahi.com/articles/ASL6F5GRPL6FPIHB01K.html )という記事です。以下、全文を引用します。
「自らが経営する『シェアハウス』内で、泥酔した入居者の女性(当時21)にわいせつ行為をしたとして、兵庫県警は13日、神戸市灘区の会社員森崎幸義(ゆきよし)容疑者(60)を準強制わいせつ容疑で逮捕し、発表した。容疑を認めているという。
 灘署によると、森崎容疑者は2016年7月19日未明、経営するシェアハウスに泥酔して帰宅した女性の居室で、女性の服を脱がせて体を触るなどした疑いがある。森崎容疑者は妻と住む2階建て住宅の2階を3室に仕切って貸し、当時は女性数人が居住していた。
 女性は今年3月、森崎容疑者から裸の写真をメールで送りつけられ、『援助交際』を要求されたとして灘署に被害届を出し、今月初めに灘署が同容疑者を強要未遂容疑で逮捕。捜査の過程で、2年前のわいせつ行為を同容疑者が撮影した動画が見つかったという。(2018年6月13日20時30分)」

上記の記事中にもあるように、事件が起きたのは2年前であり、警察に被害届が出されたのは今年3月のこと。それがよりにもよってこの時期に表面化したのは、世間におけるシェアハウスバッシングが一段と厳しくなってきたことと無関係ではないでしょう。無論、事件そのものは卑劣な犯罪であり、絶対に許されることではありませんが、「とにかく悪い奴を叩きたい」世論の正義感にとって絶好の「燃料投下」となったことは間違いありません。

それともう一つ、3年前の「脱法ハウス問題」のとき、シェアハウスバッシングの急先鋒だった毎日新聞に対して、どちらかと言えばシェアハウス擁護派に立っていた朝日新聞が、「かぼちゃの馬車」問題以降は積極的にシェアハウスバッシングの立場に回っていることも無視できません。しょせん、マスメディアの倫理観などそんなものなのかもしれませんが……。いずれにせよ、これから夏本番を迎えるというこの時期、シェアハウス大家さんにとっては、今後しばらくの間は逆風の吹き荒れる冬の時代となりそうです。
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