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第67回 逆風とシェアハウスその3

台風21号は非常に強い勢力を保ったまま、9月4日正午頃、徳島県南部に上陸しました。「非常に強い」台風が上陸したのは1993年以来、じつに四半世紀ぶりとのことです。さらに、同日14時頃に兵庫県神戸市に再上陸しましたが、16時の時点では台風の強さ階級が「強い」に変わり、日本海側へと抜けています。移動速度が速いこともあり、5日9時には北海道稚内市の西北西約200?に達し、温帯低気圧に変わる見込みとなっています。関東地方では明朝には風雨もおおむね収まり、午後には全国的に晴れ予報となっていますが、引き続き強風や、地盤の緩んだ土地では土砂災害などにも注意が必要です。また、シェアハウス大家さんは、物件や入居者に台風による被害がなかったかどうか、忘れずに調べておきましょう。

さて、世間では相変わらず、スルガ銀問題(さすがに、もはや「かぼちゃの馬車」問題という呼称は使われなくなりましたが)の続報が相次いでいます。順を追って取り上げていくと、まずは8月11日付で時事通信社の『JIJI.COM』で「スルガ銀、ダミー会社で融資拡大=シェアハウス問題( https://www.jiji.com/sp/article?k=2018081001247&g=eco )」という見出しのニュースが報じられました。以下、全文引用します。
「スルガ銀行(静岡県沼津市)のシェアハウス関連融資で、同行の行員がダミー会社を次々に設立して融資を拡大させていた実態が10日、明らかになった。ある不動産業者が販売するシェアハウスへの融資を当時の幹部が禁じたものの、別会社の案件のように装い行内審査をくぐり抜けていた。
 企業統治の機能不全ぶりをうかがわせる内容で、弁護士らで構成する同行の第三者委員会も調査を通じ、こうした実態を把握しているもよう。組織ぐるみかどうかも含めた全容と改善策を盛り込んだ報告書を月末までにまとめる。
 家賃の安さが魅力のシェアハウスは若者の間で人気がある。これに目を付けた不動産会社が投資物件として個人に販売。同行などがこうした個人投資家に購入資金を融資した。同行のシェアハウス関連融資は2014年後半から急増した。
 関係者によると、15年2月ごろ、ある不動産業者の資質を問題視して告発する文書が同行や金融庁に届いた。これを創業家出身の岡野喜之助副社長(当時、故人)が知り、この業者が絡む融資をやめるよう指示した。
 だがごく短期間の停止後、ある支店長(当時)の指示により、実際にはこの業者が販売したシェアハウス案件なのに、ダミー会社を使って別会社の案件と偽り融資を再開。審査部門に見つかると、新しいダミー会社を次々作って、シェアハウス関連融資を続けたという。
 同行は、17年10月にシェアハウス向けを含む不動産担保ローンの審査要件を厳格化したが、一部のシェアハウス向け融資は同年12月まで続いたもようだ。こうした融資では、外部にローンの審査基準が漏れたずさんな事例も多数見つかっている。(2018年08月11日07時53分更新)」
記事中には「家賃の安さが魅力のシェアハウス」とあります。実際のシェアハウス大家さんとしては大いに異議も異論もあるところなのですが、どうやらこれが時事通信社の、そして世間一般の共通認識でもあるようです。つまり、少なくとも同社の考える世間一般では、シェアハウス経営を一種の「貧困ビジネス」と捉えているふしがあるようなのです。とはいえ、これについて時事通信社に対して腹を立てても始まりません。この報道内容が正しければ、他らぬスルガ銀行自体がそのように認識している――ということなのですから。

こうしたスルガ銀行のやり口については、他のメディアでも後追いでさまざまな記事が報じられています。それら全部をいちいち取り上げていってはきりがありませんが、例えば、ITmediaの運営する「ねとらぼ」には8月20日付で「第二の“かぼちゃの馬車”、『ガヤルド事件』」と銘打ち、かなり詳細な記事をまとめています。
「スルガ銀行不正融資事件シリーズ(前編):( http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1808/20/news043.html )」
「同(後編):( http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1808/20/news044.html )」
上記についてはぜひ、リンク先にて全文に目を通されることをおすすめいたします。

こうした数々の報道を通じて、ついにスルガ銀行ではトップ人事の交代へと追い込まれたようです。8月27日付の『朝日新聞デジタル』に掲載された「スルガ銀会長、辞任の見通し シェアハウス不正融資問題」( https://www.asahi.com/articles/ASL8W77LBL8WULFA022.html )という記事ですが、以下に全文引用します。
「スルガ銀行(静岡県沼津市)のシェアハウス投資向け融資で不正が多数発覚した問題で、同行の岡野光喜会長兼CEO(最高経営責任者、73)が辞任する見通しとなった。不正の実態を調べる第三者委員会(委員長=中村直人弁護士)や立ち入り検査に入る金融庁では、30年超にわたってトップを務める岡野氏の責任が重いとの見方が強まり、引責辞任は不可避となった。
 第三者委が近く公表する調査結果や金融庁の行政処分も踏まえ、正式決定する見通し。組織の立て直しに経営陣の刷新は必至の情勢で、米山明広社長(52)ら他の経営幹部の処遇も今後検討される。
 シェアハウス投資では、不動産業者らが長期の家賃収入を約束して会社員らをオーナーに勧誘した。業者らは融資資料を改ざんして貯蓄や年収を水増しし、1棟あたり1億円前後の融資を引き出した。関連融資は2,035億円、1,258人分にのぼる。
 不正の発覚を受け、2018年3月期決算では貸し倒れリスクに備えた引当金が膨らみ、利益は激減。株価は年明けの4分の1程度にまで下落した。
 6月の株主総会では株主から厳しい批判を受け、岡野氏は初めて謝罪したうえで「経営責任は第三者委員会や金融庁検査の結果を待って自ら厳しい対応をとる」と述べた。
 創業家出身の岡野氏は1985年に頭取に就任。会長職を含めて30年以上にわたって経営の実権を握ってきた。(山口博敬、藤田知也/2018年8月27日22時17分更新)」
記事中に登場する岡野光喜氏は、上で引用した岡野喜之助氏の実兄であり、喜之助氏は2016年7月に亡くなっています。弟が生前、問題ある不動産業者への融資をやめさせるよう指示していたことから、光喜氏にしてもさぞや不本意な退陣かもしれませんが、やはり管理責任は免れないところでしょう。

しかし――これでもまだ、スルガ銀行に絡めた報道は尽きることなく、9月1日付の『JIJI.COM』には「従業員が預金残高改ざん=アパート施工のTATERU−融資審査通りやすく( https://www.jiji.com/sp/article?k=2018090100455&g=eco )」という見出しの記事が報じられました。じつを言うと、これは上で紹介してきた一連の記事とは少々趣が違うのですが、ともあれ全文引用しましょう。
「東証1部上場のアパート施工・管理会社TATERUの従業員が、不動産投資を希望する顧客の預金残高データを改ざんしていたことが1日、分かった。資産を多く見せかけて、銀行の融資審査を通りやすくするためだった。
 審査資料の改ざんは、スルガ銀行による投資関連不動産をめぐる不正融資でも判明している。アパート投資などへの融資を引き出すため、同様の手口が業界内で広がっている可能性が出てきた。
 預金残高を改ざんされたのは東京都内の50代男性会社員。代理人の加藤博太郎弁護士によると、男性は4月末にアパート物件を購入する契約をTATERUと結んだ。購入に必要な約1億1000万円は、山口県周南市に本店を置く西京銀行からの融資を紹介された。
 男性は約23万円の預金残高を示す資料を提出。金額が少ないことをTATERUの従業員に伝えたが『問題ない』と言われ、後日西京銀の融資が承認されたと連絡を受けた。スルガ銀問題で不審に思った男性が6月に西京銀に確認したところ、残高が約623万円に水増しされていたことが分かった。契約は解除され、実際の融資は行われなかった。同社は男性に謝罪し、契約に基づき手付金の2倍となる100万円を支払った。
 TATERUは1日までにコメントを発表し、データ改ざんの事実を認めた。『同様の改ざんが他にもないか、社内調査を進める。結果については判明次第速やかに公表する』としている。(2018年09月01日16時36分更新)」
上記を一読されればお気づきの通り、このニュースはスルガ銀行とは何の関係もありません。にもかかわらず、文中で二度までもスルガ銀行の名前が挙げられ、あたかも不動産向け不正融資の代名詞のように扱われています。各メディアがこれだけ「我も我も」と報道合戦をくり返しているのは、もともとある程度ネタを掴んでいたものの、裏づけが不十分などの理由で半ばお蔵入りにしていたものを、「このタイミングなら被害者側の一方的な証言だけでも十分だろう」と判断した、ということもあるでしょう。それに、単発ならあっさり埋もれてしまうだろう小ネタも、これだけ不正報道が続いている今なら、スルガ銀問題と絡めれば十分にニュースバリューがあると判断されたものと考えられます。たとえ、無関係の銀行や不動産業者のニュースであっても……。

すなわち、これもまた一種の風評被害。スルガ銀行に関しては自業自得と言えますが、真っ当なビジネスとしてシェアハウスを取り扱う不動産業者にしてみれば、とんだとばっちりです。とはいえ、移り気なマスコミのことですから、いずれまた必ず、風向きが変わる日も来るでしょう。今は地道に自らのビジネスに専念し、台風と同じように逆風が吹き過ぎるのを待つしかありません。
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