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第71回 ニュースバリューとシェアハウス

早いもので、2019年が始まって1ヶ月半が経過しました。いつの間にやらすっかり馴染んでしまった「平成」という元号も、残すところあと2ヶ月半。今はちょうど確定申告のシーズンですが、平成表記での申告も今年度が最後になります。シェアハウスという住まい方が日本に根を下ろした「平成時代」を、近い将来の私たちはどのように回想することになるでしょうか。願わくは、「あの時代があったからこそ、今の私たちは、シェアハウスという素晴らしい住まい方のスタイルを見つけることができたんだ!」と肯定的に振り返ることができるような未来を迎えたいものです。

さて、2月18日夜のTBS NEWSでは「シェアハウス不正融資問題、不動産業者に初の行政処分」( https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3596998.html )というニュースが報じられました。公式サイトに紹介されている全文を引用します。
「国土交通省はスルガ銀行によるシェアハウスへの不正融資問題をめぐり、物件を仲介した不動産業者に初の行政処分を行いました。
 国土交通省が宅地建物取引業法に基づき業務を改善するよう行政処分を行ったのは、東京の不動産仲介業者、『フューチャーイノベーション』です。
 フューチャーイノベーションは、運営が破綻したシェアハウス『かぼちゃの馬車』の販売協力業者の一つで、顧客がスルガ銀行から融資を受ける際、預金通帳の資料の改ざんなどにより資産を多く見せかけていたことを知りながら契約を成立させたとされています。
 シェアハウスへの不正融資問題をめぐり、国土交通省が行政処分を出すのは初めてとなります。(2月12日19時03分更新)」
フューチャーイノベーション社に対して行政処分が下されるであろうという見通しは、2月1日付の「共同通信」などでメディアがすでに報じていましたが、三連休明けのこの日、ようやく正式に発表されたことになります。この件が最初にメディアにすっぱ抜かれてから約1年余りでの行政処分、ということになりますが、果たしてこれを「スピーディな決定」と捉えるか、「遅きに失した」と捉えるか……判断が分かれるところでしょう。

ちなみに、このニュースと同じ12日の朝、『朝日新聞デジタル』には「個人の不動産投資、ブーム減速 スルガ・ショック影響」( https://www.asahi.com/articles/ASM2833J5M28UUPI003.html )という記事が掲載されました。こちらは有料記事になっておりますが、無料で公開されている部分(前半部分)のみ引用してみましょう。
「日本銀行の大規模緩和下で起きた個人の不動産投資ブームの減速が鮮明になってきた。スルガ銀行(静岡県沼津市)のシェアハウス融資での不正発覚を受け、金融庁は不動産融資への監視を強化。不動産業向けの銀行融資が急減し、投資物件の価格も一部で下落するなど、好況に沸いた不動産市場は『スルガ・ショック』に揺れている。
 日銀が8日公表した統計「貸出先別貸出金」でわかった。国内銀行136行による2018年の不動産業向け新規貸出額は前年比5.7%減の11兆1125億円で、2年連続の減少となった。減少率はリーマン・ショック後の09年以来の大きさだ。
 不動産業向けの中でも特に減少が目立つのが「個人の貸家業」向けだ。会社員らがマンションなどに投資したり個人地主がアパートを建てたりする際に借りるローンで、新規貸出額は前年比16.4%減の2兆8348億円。減少は2年連続で、日銀が大規模緩和を始める前の12年以来の少なさ。減少率は調査を始めた09年以降で最大だ。(藤田知也 2019年2月12日06時00分)」
記事を執筆した藤田知也記者は、朝日新聞で一連の「スルガ銀疑惑」を追い続けており、いわば、同紙の論調を「シェアハウス擁護派」から「シェアハウス叩き派」へと転向させた当事者のひとりです。当コラムでは、これまで何度か藤田記者の記事を紹介したことがありますが、事実関係がわかりやすい反面、事実を単純化するあまり、やや一方的で攻撃的な文章になっている傾向が否めません。同記事には「不動産関連投資は伸び悩んでいる」と見出しをつけた棒グラフが掲載され、2016年を頂点に2年連続で新規融資額が前年比減少していることを図示しています。これもまた「事実に基づいた報道」には違いないのでしょうが……どうも、ある事実を都合の良い範囲で切り取って、そこだけに注目させようという一種のミスリードのようにも思えてなりません。本来であれば、不動産関連「以外」の銀行融資額の推移と比較した上で論じるべきで、そうでなければ不動産関連投資“だけ”が「伸び悩んでいる」とは一概に断定できないはずなのですが……。

また、同じ12日には、(公財)東日本不動産流通機構が「2019年1月度の首都圏不動産流通市場動向」( http://www.reins.or.jp/pdf/trend/mw/mw_201901_summary.pdf )を発表しています。これによると、1月度の首都圏中古(既存)マンションの取引動向は、成約数こそ2,667件(前年同月比1.0%増)とわずかに増加したものの、平均成約価格は3,249万円(同1.9%下落)、1平米当たりの平均成約単価は51万4,600円(同0.3%下落)と、いずれも前年同月を下回りました。同機構によれば、これは2012年12月以来じつに73ヶ月ぶりの下落だということです。ちなみに、既存戸建ての動向をみると、成約件数は862件(同1.9%増)であり、平均成約価格は2,988万円(同7.9%下落)となっています。
ただし――中古マンションに関していえば、同月の新規登録件数は1万8,479件(同8.3%増)であり、在庫件数は4万8,796件(同5.7%増)ということですから、市場に物件が過剰供給されれば個々の価格が下落するのはごく当たり前の市場原理です。「73ヶ月ぶりの下落」などとメディアが煽り立てると、さぞ大事のように考える人も出てくるかと思いますが、少なくともこの件については、さほど深刻に考える必要はないでしょう。

いずれにせよ、いくら世の中に不景気なニュースが多いからといって、あまり深刻に悩んでいては、気持ちまで後ろ向きになってしまいます。最後に少し、前向きになれそうな材料を投下しておきます。
世界的な経済誌である『Forbes』の日本版『Forbes JAPAN』では同じ12日、「シェアハウス、子育て支援に漫画!企業文化を変えたダイバーシティの取り組み8例」( https://forbesjapan.com/articles/detail/25413# )という記事が掲載されています。記事の内容はタイトル通り、同誌の注目企業8社の取り組み事例を取材したものですが、この中でシェアハウスに関連した取り組みを行っているピジョン社の事例を引用しておきます。「ピジョン──シェアハウス生活で多様性を“自分ごと”に」という小見出しがつけられた短い文章です。
「育児や介護用品の製造販売、輸出入などの事業を展開するピジョンは、ダイバーシティ研修として数カ月にわたって国籍やジェンダー、宗教など多様なバックグラウンドの人と一緒に生活する『シェアハウスでの生活体験』を今年導入。経営戦略としてダイバーシティ&インクルージョンを推進している。
特に、『他者を受容するためには、まず自己を知ることが重要』として、自らの働く意味を問う「自分軸を探る研修」にも力を入れる。一定以上の役職者が男女1人ずつの後継者を指定する制度や、不妊治療だけでなく養子縁組を対象にした休職制度なども導入している。(文=フォーブス ジャパン編集部)」
ピジョン社という社名は、当コラムの読者層であるシェアハウス大家さんにはあまりなじみのない会社かもしれませんが、1957年の設立といいますから業界ではそれなりに老舗であり、従業員数も984人とまずまずの規模の中堅企業です。そんな立派な企業が、ダイバーシティ&インクルージョンを推進する施策の一つとして「シェアハウス」を導入しており、それが評価ポイントになっているという事実は、私たちシェアハウス事業者にとっても大きなプラス材料だと言えるでしょう。それと、いくら三連休明けのタイミングといっても、同じ日にこれほど多彩なニュースが報じられるということは、それだけシェアハウスへの世間の関心が高く、メディアにとってもニュースバリューがある――ということでもあります。そのこと自体、業界にとって明るい材料の一つと言えるかもしれません。
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