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第70回 2019年とシェアハウス

皆様、あけましておめでとうございます。本年も当コラムをよろしくお願い申し上げます。

正月三が日が無事に終ろうとしていた1月3日午後6時10分頃、熊本県熊本地方を震源とする地震が発生しました。同県和水町では最大震度6弱が観測され、2年半前に起こったあの「熊本地震」以来の大きな地震となりました。気象庁の発表によれば、地震の規模を示すマグニチュード(M)は5.1。さいわい、今回は人的被害もほとんどなく(けが人1名)、「熊本地震とは無関係」という見解もあって、翌4日には、避難所となっていた和水町江田の中央公民館を会場とする成人式も予定通り行われたそうですが……自主避難された方からは「熊本地震よりひどい揺れだった」との声も聞かれ、また、折しもUターンラッシュで混雑していた交通網は大混乱に陥ったようです。当面は余震の心配もしなくてはならず、平成の最後にとんだ年明けとなってしまいました。

さて、1年半ほど前に書かれた当コラム( http://www.flat-house.jp/modules/contents/content0100.html )の中で、「LGBT支援シェアハウス」についての話題を取り上げたことがありますが、2019年1月4日、(一社)日本セクシュアルマイノリティ協会(JLGA)の提案する新しいLGBTのシェアハウス「リーフハウス」の見学会についてのプレスリリースが発表され、いくつかのメディアで取り上げられていました。プレスリリースに記載されていたのは「LGBT当事者が、抱える問題に応えます。LGBT検定を取得した、知識と心構えを整えた専門家(サポートチーム:弁護士、司法書士、ファイナンシャルプランナー、カラーコーディネーターなど)が、あなたのライフプランをしっかりサポートします」といった、いわば宣伝文句のみでしたが、興味を覚えてJLGAの公式サイト(https://jlga.or.jp/ )を参照したところ、いろいろ興味深い事実がわかりました。同サイトのページ( https://jlga.or.jp/service/sharehouse/#utm_source=newsletter&utm_medium=email&utm_campaign=sharehouse-newsletter )によれば、JLGAではこれまでに、2008年と2011年にセクシュアルマイノリティ(LGBT)のためのシェアハウスに関する調査や、イベント勉強会・意見会などを開催してきたといい、さらに2013年〜2014年にかけては「50歳からのシェアハウス」というテーマで同じく勉強会・意見会などを行ってきたということです。上記ページから一部を引用してみましょう。
「『安心』の実現のためには、自分らしくありのままでいられる場所と、それを認め合える環境が必要です。それは決して、弱みをさらけ出したり、慰め合ったりする場所ではありません。それぞれが、社会人として自立しているからこそ尊重し合える関係を築くことができます。
(中略)
『ひとりじゃない、安心』の為のコミュニティづくりとしての『住まい』になります。一緒に暮らす人同士が、共に交流し、長い友情や愛情を育み、学び、支え合える関係を作り支える環境を作りたいと考えております」
こうした記述内容から、JLGAはシェアハウスに関しても以前から真面目に取り組んできたことが伝わってきます。また、LGBTだけでなく、「50歳からの〜」とあるようにより普遍的なテーマにも取り組んできたらしく、正直、「お見それしました……」というところです。

一方、例年当コラムの新春更新で触れているいわば“お約束”ですが、今年も(株)不動産流通研究所が運営する不動産ニュースと不動産業務のためのサポートサイト『R.E.port』に掲載された「2019年 年頭挨拶」(業界団体等)の記事( https://www.re-port.net/article/news/0000057882/ )を見ていきましょう。まずは、石井啓一国土交通大臣のコメントからの抜粋です。
「(前略)本年10月1日に消費税率の引上げが予定されていますが、需要変動の平準化、景気変動の安定化のための対策として、住宅ローン減税の控除期間の10年から13年への延長及び一定の性能を満たす住宅を対象にした新たなポイント制度の創設を追加的に行うこととなりました。既に措置することが決定しているすまい給付金の拡充などの対策とあわせて、経済に影響を及ぼすことのないよう、万全を期してまいります。(中略)
 空き家対策については、「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき個々の地方公共団体による除却・利活用等に対する支援と併せ、地方公共団体等が空き家対策情報の共有化を図るための「全国空き家対策推進協議会」の設置等への支援も行っております。また、小規模の戸建て住宅等を他の用途に変更する場合の規制の合理化など、既存建築ストックの有効活用を進めてまいります。さらに、空き家等の流通・マッチングや再生を図るため、「全国版空き家・空き地バンク」の活用促進や、クラウドファンディング等の手法を用いた空き家等の遊休不動産の再生を促進するため、ガイドラインの作成等を進め、不動産特定共同事業等の不動産証券化の活用を支援します。(中略)
 所有者不明土地問題については、昨年6月に成立した「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」の積極的な活用に向け、ガイドラインの整備や協議会の設置等を通じ、地方公共団体の支援に努めてまいります。(後略)」
さすが……といったところでしょうか、前年度までに当コラム中でもしばしば取り上げてきた不動産業界の諸問題に過不足なく触れているのはもちろん、新年の挨拶ということもあってか、昨年度の不動産業界に最大の激震をもたらした例の「スルガ銀絡みの不正融資問題」には一切触れられていません。もっとも、これは国交相が年頭にことさら口に出すような話題でもないのでしょうけれど……。

なお、業界団体の各代表のコメントについても何人か見ていくと、たとえば(一社)不動産協会の菰田正信理事長は「我が国の足下の経済は緩やかな回復が続いているが、先行きについては、世界の政治・経済情勢の影響を受けて非常に不透明な状況にある。構造的には人口減少・少子高齢化が進み、10月には消費税率引上げが予定されているが、これを乗り越え、新たな時代にふさわしい持続的で力強い経済成長を実現しなければならない」と語り、また(公社)全国宅地建物取引業協会連合会の坂本 久会長は「本年10月より消費税が増税されます。これを踏まえ、31年度の税制改正においては、ローン減税の延長、住宅ポイント、住まい給付金の拡充等、需要の反動減がないよう万全の対策が講じられました。併せて買取再販に係わる不動産取得税の特例措置の延長、空き家3,000万円特別控除の適用要件緩和・期限延長が措置されました。本会としても昨年10月より開始した『安心R住宅制度』等を活用し、既存住宅流通促進策をより一層推進する所存です」と述べています。(一社)不動産流通経営協会の榊 真二理事長は「我が国の景気は、緩やかな回復を続けているがその足取りは重い。先行きについては、雇用・所得環境の改善や政策効果等を背景に回復が持続することが期待されるが、世界経済の下方リスクが高まるなか、楽観できない状況にある」とし、さらに(一社)不動産証券化協会の岩沙弘道会長は「わが国経済は、緩和的な金融環境の下、設備投資や個人消費が堅調に推移し緩やかな拡大を続けている。景気拡大を後押ししてきた海外経済も、総じてみれば着実な成長を遂げている。一方、経済の行方に大きな影響を与えるグローバルなリスクが多々存在しており、一部では顕在化しつつある」とコメントしております。いずれも年頭挨拶とあって、暗い話題のみに終始することなく、できるだけ明るい結論に落ち着くように心を砕いている姿勢が伝わってきますが、言葉の端々に不穏な空気を感じてしまうのは、決して気のせいではないはずです。今年は新天皇の即位と改元、さらに来年にはいよいよ東京五輪開催を控え、明るい材料にはこと欠かないはずなのに、つい2〜3年前までとは明らかに論調が変わりつつあります。

とはいえ、シェアハウス大家さんにとって2019年は必ずしも悲観材料ばかりの年ではありません。最後に、昨年暮れの『毎日新聞』に掲載された「空き家再生 学生暮らし共同利用、地域と交流 日立市と茨城大」( https://mainichi.jp/articles/20181230/ddl/k08/010/037000c )という記事を紹介しておきましょう。これは日立市と茨城大工学部が連携して取り組んでいる空き家再生プロジェクトの話題で、同大の学生が共同で暮らすシェアハウスとして有効活用しながら、リビングや庭を地元住民との交流スペースに位置づけているというもので、市と大学側は『空き家対策のモデルケースにしたい』と話しているそうです。以下、抜粋して引用いたします。
「(前略)プロジェクトは、茨城大工学部都市システム工学科の熊沢貴之准教授と同学科の学生有志が中心になり、昨年度から計画を始動。市は今年度予算に補助金200万円を計上し、支援した。
 空き家は築44年の木造2階建て住宅。約3年前から空き家になっており、所有者の同意を得て今年度からリフォームに着手。学生たちが県建築士会日立支部の会員から技術指導を受け、部屋の畳を取り除いてフローリングにするなど内装のリフォームを手がけた。
 リフォームがほぼ完了したことを受け、26日に地元住民らを招いて完成披露イベントがあった。(中略)
 完成イベントで、熊沢准教授はプロジェクトの内容を説明。(1)増加する空き家の利活用の課題を見つける(2)地域住民と空き家問題を共有する(3)まちづくりを考える拠点にする……の三つの目的を挙げ、『より良い街にするために一緒に考えてほしい』とあいさつした。
 空き家を所有する同市台原町の川上久雄さん(68)、睦子さん(67)夫妻は『空き家のままだと不用心。学生さんに快適に住んでもらい、地域の活性化につなげてもらいたい』と期待を寄せた。
 プロジェクトの一員で来年4月から入居する同学科4年の鎌田吉紀さん(22)は『地元に溶け込みながら、地域のまちづくりについて学べるのが楽しみです』と新生活を心待ちにしている。
 同市が2016年に実施した調査で市内に2878戸の空き家が確認された。今年5月現在では約3100戸の空き家があり、2年間で200戸以上も増えている。(佐藤則夫/2018年12月30日9時39分更新)」
一読すればおわかりの通り、これまでに当コラムでもいくつも紹介してきた官学連携によるシェアハウスづくりの一つの事例に過ぎませんが、こうした動きがさまざまな地方で活発化していくことで、きたるべき景気低迷の中でも我々中小・零細事業者に生き残りの道が拓けるかもしれません。シェアハウス経営が、そもそも「不況下でのリスクヘッジに有効な手段」であったという事実を今一度思い起こしてみてください。
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