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第74回 不動産市況とシェアハウス(令和編)

令和元年が始まったばかりだというのに、痛ましい事故や事件が相次いで世間を騒がせています。主に高齢ドライバーの運転ミスを原因とする、多くの死傷者を出した悲惨な交通事故。引きこもり中高年をめぐる陰惨な殺人事件。これらは、何もこの時期だからこそ起こった事故や事件というわけではなく、また、この時期になっていきなり増えたわけでもないのですが、世間の注目度が高まったことを受けて、メディアも大きく取り上げるようになり、それだけ人目に触れる機会も多くなっています。さらに、これらの血なまぐさい報道を上書きするような明るい話題も乏しいため、テレビのワイドショーなどでは、米トランプ大統領の訪日やら芸能人の結婚やらを延々と取り上げているようなありさま……。大多数の国民にとってもっと身近な、明るい話題に盛り上がれるような日常が一日も早くやってきてほしいものです。

さて、6月に入り、「令和最初」の不動産市況を伝える報告がいくつか発表されています。まずは、6月10日に(公財)東日本不動産流通機構が発表した「2019年5月度の首都圏不動産流通市場動向( http://www.reins.or.jp/pdf/trend/mw/mw_201905_summary.pdf )」から見ていきましょう。これによると、令和元年5月の首都圏中古マンション成約件数は2,749件(前年同月比1.3%減)と、5ヶ月ぶりに前年同月を下回る結果となりました。新規登録件数は2ヶ月連続で前年比減少、在庫件数は48ヶ月連続で前年比増加となっています。これに対して、中古戸建ての成約件数は7ヶ月連続の増加となっており、ここだけを見れば「中古マンションは成約が減り、戸建てが増えた」というふうに錯覚してしまうかもしれません。ただし、中古戸建ての成約件数の実数値は980件(同0.7%増)と中古マンションの約3分の1程度であり、平均成約価格もマンション3,325万円に対して戸建て3,183万円とやや割安になっていることから考えても、「住宅購入者のマンション離れ」のような安易な結論に飛びつくのは賢明ではないでしょう。なお、戸建ての新規登録件数は22ヶ月連続前年比増加、在庫件数は24ヶ月連続前年比増加ということも付け加えておきます。また、参考までに、翌6月11日に(公財)不動産流通推進センターが発表した「指定流通機構の物件動向(令和元年5月)〔 https://www.retpc.jp/wp-content/uploads/reins/bukken/bukken1905.pdf 〕」では、首都圏中古マンションの成約件数は2,696件(同1.46%減)、成約価格は3,346万円(同0.80%減)。同じく首都圏の中古戸建ての成約件数は903件(同1.23%減)、成約価格は3,240万円(同0.95%増)となっています。

マンションといえば――少し前のデータになりますが、4月26日に国土交通省が発表した「平成30年度マンション総合調査結果」( http://www.mlit.go.jp/common/001081455.pdf )」によると、分譲マンション居住者の「永住意識」は過去最高にまで高まっているといいます。マンション総合調査は、管理組合や区分所有者のマンション管理の実態を把握するための調査として約5年に一度行なわれているもので、全国のマンションの管理組合4,200件と区分所有者8,400件にアンケートを実施し、有効回答数は組合1,688件、所有者3,211件となっています。同調査の中で、現在居住しているマンションに「永住するつもり」と回答したのは62.8%(前回調査比10.4%増)となり、6割超が将来的に戸建てや新築のマンション、あるいは賃貸物件等への引っ越しを考えていないことがわかりました。かつては「住宅すごろく」などと言われ、会社に入ったらまず賃貸アパートや独身寮→結婚して賃貸マンションや社宅→分譲マンションといった具合に、家族が増えたり収入が上がったりするたびに住み替えていき、最後に戸建て住宅を入手するのが「あがり」とされてきたものですが……それも今は昔。「昭和は遠くなりにけり」というところでしょうか。
ちなみに、同じ4月26日には総務省統計局から「平成30年住宅・土地統計調査」の住宅数概数集計結果( https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/pdf/g_youyaku.pdf )も発表されています。これは9月に公表される予定の同調査結果の確定数に先駆けて、住宅総数・空き家の総数等の概数を公表するもの。これによると、総住宅数は6,242万戸(前回調査比3.0%増)。都道府県別にみると、東京都が31万戸増と最も多く、次いで神奈川県が15万戸増、千葉県が14万戸増、埼玉県が12万戸増となっており、この1都3県で全国の増加数の4割を占めています。居住世帯のある住宅は5,366万戸となっており、戸建てが2,876万戸(構成比53.6%)、長屋建てが141万戸(同2.6%)、共同住宅が2,334万戸(同43.5%)になります。すなわち、全国ではまだ辛うじて戸建て住宅数のほうが多いことになりますが、アパート・マンションなどの共同住宅は1988年からの30年間で2倍以上増加しています。東京都に限れば、共同住宅は住宅全体の71.0%を占めており、特に15階建て以上の共同住宅の住宅数は2003年からの15年間で17万戸増加しているとのことです。なお、前述した総住宅数から居住世帯のある住宅を引いた残りは906万戸になりますが、空き家数は何故かそれより60万戸少ない846万戸(同3.2%増)とカウントされています。総住宅数に占める空き家の割合である「空き家率」は13.6%(同0.1%上昇)となり、こちらも過去最高となっているそうです。そして、空き家の内訳をみると、戸建て37.5%、長屋建て5.9%、共同住宅56.2%となっています。このうち、共同住宅の空き家数は、1978年から2008年までの30年間に336万戸増加したものの、2008年から2018年までの直近10年間では13万戸の増加にとどまっており、増加幅は近年縮小傾向にあるようです。

つまり――ここで紹介した国交省と総務省の2つの調査結果を総合すると、共同住宅(分譲マンション、賃貸マンション、アパートなど)の空き家数は直近10年間で増加幅が縮小しているという事実があり、少なくともその原因のひとつとして「分譲マンションに永住する世帯が増加したため」と分析することができそうです(日本の総人口が減少に転じたのは2009年以降とされるのでそれも一因かもしれませんが、単身・少人数世帯の割合が増えたことで世帯数そのものは依然として増加傾向にあるといわれており、直接的には大きな影響はないと判断できます)。

一方の戸建て住宅についてですが、6月10日付で(株)東京カンテイが3つの興味深いデータをまとめて発表しています。まず、2019年5月の「主要都市圏別・新築木造一戸建て住宅平均価格動向( https://www.kantei.ne.jp/report/kodatesintikukyosyo201905.pdf )」によると、「新築木造戸建て」の首都圏の平均価格は4,017万円(前月比1.4%上昇)と3ヶ月ぶりに反転上昇し、4,000万円台を回復しています。これは「敷地面積300〜100平米」の大規模物件を対象としたデータですが、「敷地面積100〜50平米未満」の小規模物件を対象とした「首都圏新築小規模一戸建て住宅の平均価格( https://www.kantei.ne.jp/report/kodatesintikukyosyo201905.pdf )」はこれを上回り、4,606万円(同0.7%上昇)とこちらも2ヶ月ぶりに反転上昇しています(小規模物件が大規模物件よりも高価格なのは、平米単価の高い都心部に多く立地しているためでしょう)。なお、同月の「主要都市圏の中古(既存)木造一戸建て住宅平均価格動向( https://www.kantei.ne.jp/report/kodatecyuko201905.pdf )」によれば、敷地面積300〜100平米の首都圏の平均価格は3,219万円(同0.2%下落)と、3ヶ月連続で下落しています。対象データや価格の算出方法が違うので一概には言えませんが、最初に取り上げた(公財)東日本不動産流通機構による首都圏中古戸建ての平均成約価格が3,183万円、(公財)不動産流通推進センターによる首都圏中古戸建ての成約価格が3,240万円であったことから考えても、かなり信憑性の高い数字であろうと判断できます。いずれにせよ――マンションへの永住志向が高まる中、シェアハウス大家さんが今から物件を入手しようと思ったら、「中古戸建て」という選択肢がおのずと大きくなってきているようです。

最後に、6月10日付の『産経新聞』(東京版)の連載コラム【TOKYOまち・ひと物語】に掲載された「異世代ホームシェアを NPO法人『リブ&リブ』石橋代表理事( https://www.sankei.com/life/news/190610/lif1906100022-n1.html )という吉沢智美氏による記事を一部抜粋してご紹介しておきましょう。
「一人暮らしの高齢者には寂しさと不安がついて回る。就学のため地方から上京する大学生も同様だ。ならば、一緒に住んでみたら――。NPO法人『リブ&リブ』の石橋エイ(=金へんに英)子代表理事は、両者を仲介して同居生活をサポートする『異世代ホームシェア事業』に取り組んでいる。
 ヒントになったのは、平成20年にスペインのバルセロナで見学した世代間交流ホームシェア事業だった。『高齢の女性が生き生きとしており、学生とお互いに、いろんなものを分かち合っていた』と振り返る。
 石橋さんは30年務めた在日アメリカ大使館を退職後、メーカー勤務を経て、『全ての世代の人々が役割をもって支え合う』取り組みを模索して欧州の10ヶ国以上を巡っていた。早速アイデアを持ち帰り、周囲に相談したが『日本だと無理だと思う』と否定的な意見が多かった。他人と2人きりで住むのは日本人には敷居が高いという理由だ。
 しかし、『これからは血縁なんて言ってられない。この事業が新しいライフスタイルになる』。24年にリブ&リブを立ち上げた。
 これまでに誕生した同居ペアは約20件。一般的なシェアハウスとの違いは、高齢者が自宅に住み続けられる点で、その代わりに独立した学生用の部屋と居間などの共有スペースがあることなどを求めている。学生は親元を離れて都内で勉強していることが条件だ。申し込み者とは1ヶ月から半年かけて面接し、シェア相手を検討する。同居が始まってからも毎月、高齢者と学生双方と面談して不満や疑問などを解決していく(後略)。」
昭和30年代の東京には、地方から上京してきた学生たちを受け入れる、主に戦争未亡人などが経営する下宿が至るところにありました。要するに、そんな昔ながらの下宿文化の復権――というよりも、先日“闇営業”でメディアを騒がせたお笑いコンビ「カラテカ」の“もう一人のほう”である矢部太郎氏の実録エッセイマンガ『大家さんと僕』に描かれたような、「若者と高齢者の理想的な同居生活」を目指すのが狙いのようです。これはこれで、実際にやるとなるとマッチング等にかなりの困難が予想されますが、空き家対策やコミュニティづくりなど、成功すればさまざまなメリットが期待できます。ただ、「安定した収益をもたらすビジネスモデル」になることは考えにくく、あくまで利益を追求しないNPO法人だからこそ可能な選択肢の一つに過ぎないようです。
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