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第75回 メディア報道とシェアハウス(令和編)

7月22日は参議院議員選挙の投票日でした。今回の選挙は5割を切るほどの投票率だったそうで、つまり、有権者の2人に1人はそっぽを向いたという計算になりますが――自民党は改選前議席を割り込み、単独過半数には達しなかったものの、惨敗というほどのこともなく、まずは「大勢に影響なし」という結果に落ち着きました。麻生副総理などは「消費税率引き上げの予定に変更なし」と明言しておりますし、いよいよ10月1日からの増税は待ったなしのようです。当然予想される景気の冷え込みに対して、どのような言い訳を用意しているのでしょうか……。
ちなみに、今回の参院選でちょっとした話題になったのが、「NHKから国民を守る党」いわゆるN国です。比例区で党代表の立花孝志氏が議席を獲得し、法律上の政党要件も満たしているそうですが、N国が公約に掲げた「スクランブル化」については、政府閣僚はこぞって否定的な見解を示しています。どうやら、たんなる一時の話題づくりに終わってしまいそうですが、政見放送では当のNHKの電波でN国の主張が流れたこと、有権者がNHKの強権的な受信料徴収にNOを突きつけたということは、このまま忘れ去ってしまうには惜しいように思います。

さて、今回は7月22日に発売された朝日新聞出版社刊の週刊誌『AERA』2019年7月29日号に掲載された「不動産業界に蔓延? 低金利で投資『フラット35』悪用の手口 ( https://news.goo.ne.jp/article/dot/nation/dot-2019072300061.html )」という記事からご紹介していきましょう。週刊誌という媒体はとかく情報が古くなりがちで、この記事も今年の5月ごろに話題になったネタですが、ネット上にある程度まとまった内容で転載されていることもあり、全文引用することにいたします。

「住宅ローン『フラット35』で不動産投資をする不正が発覚。筆者が著書『やってはいけない不動産投資』でも指摘した不正のしくみとは──。
*  *  *
 2年前。年収600万円台で20代前半の男性は、都内の湾岸エリアの築浅マンションを4千万円台で買った。入居している住人との賃貸契約を引き継ぐ『オーナーチェンジ』物件。家賃収入を得る投資目的だったが、居住目的にしか認められない住宅ローン『フラット35』で、購入資金を借り入れた。
 きっかけは、都内で開かれた投資セミナーだった。不動産収入で悠々自適な生活を送っているという講師が『住宅ローンで不動産投資ができる』と解説。不動産業者からも、『できます』と教わり、トントン拍子で話は進んだ。
 フラット35は住宅金融支援機構が取次金融機関と連携して提供する住宅ローン。不動産投資向けローンに比べて金利は低い。投資目的での借り入れは契約違反で、発覚すれば一括返済を迫られる。『そうした知識はなかった』と男性は言う。
 業者に『絶対買い』と推された物件は耐震性などに優れ、金利が一定期間下がる『フラット35S』が適用された。利息減収分は国の補助金でまかなわれるため、不正利用で国のお金をだまし取っているも同然だ。
 男性は契約前、フラット35の取次金融機関である住宅ローン専門会社の担当者に『居住用ですね?』『引っ越し日は?』と確認され、『居住用です』『1カ月以内に引っ越す』と応じた。同席した不動産業者のシナリオどおりだ。
 契約後は物件所在地の区役所に転入届を出し、住民票を受け取って住宅ローン専門会社に郵送。翌日には同じ区役所で転出届を出し、もとの住所に住民票を戻した。区役所の職員は不思議そうな顔を浮かべたという。
 あとの手続きは業者任せ。ローン返済は月十数万円で、少し上回る額が業者から毎月振り込まれる。諸経費も引くと収支は赤字になるが、将来は資産が手に入る。魅力的に映ったが、『フラット35不正』の報道で気持ちは一変した。男性は言う。
『最初は「やっていいんだ!」と素直に思ってたんです。居住用とウソをつくときも、業者に「みんなそうしている」と教わって納得した。補助金が使われているとも知らず、とんでもないことをしたなと今は思います』
 取材後、男性は『不正な状態から脱してスッキリしたい』と物件を売却。たまたま空室になり、購入時と近い価格で売れたおかげで、通算で赤字にならずにすみそうだという。
 朝日新聞は5月初め、フラット35を不動産投資に使う不正が多数発覚したことを報じた。昨秋に情報提供を受けた住宅金融支援機構は、不正が疑われる113件を調査中。試算では補助金900万円が3月までに不正支出された可能性がある。機構はさらに、フラット35の全債権から疑わしい案件のあぶり出しにも乗り出した。不正件数は今後大きく増えるだろう。
 機構が把握する113件は、年収300万円前後の20〜30代が中心。数十万円のキャッシュバック、消費者金融の借金の一時的な返済などが目当てで、ローン返済が苦しい人も多い。
 だが、不正利用者のなかには、低金利で効率よく投資しようともくろんだ高年収層も含まれる。じつは冒頭のマンションを売却した前々の所有者も、フラット35で不動産投資をしていた。30代で年収1千万円超の証券マン。数年前にフラット35Sで4千万円強を借り、新築だったファミリータイプ1室を買うと、すぐさま貸しに出した。十数万円の家賃収入でローンを返し、自分は銀行の住宅ローンで買ったマイホームに妻子とともに暮らしていたのだ。
 証券マンが軽い口調で話す。
『ネット上には「セカンドハウスを買うと言えば、フラット35でローンを組んで家賃収入を得られる」って情報があふれてましたよ。私は事情があって収支トントンくらいで手を引いたけど、すこし前は、みんなやってたんじゃないかな』
 不動産業界では『なんちゃって』とも呼ばれる住宅ローン不正。どこまで広がっているのか。今はまだ計り知れない。(朝日新聞記者・藤田知也)」

さて、最後に名前が出てきた藤田知也記者ですが、じつは当コラムでは以前からおなじみの名前でもあります。そう、昨年度の当コラムで毎回のように取り上げた「かぼちゃの馬車事件」「スルガ銀問題」を追い続けてきた記者であり、この問題に関しては朝日新聞を代表する論客です。今回の記事でも、タイトルにこそ「不動産業界に蔓延?」とクエスチョンマークを付しているものの、本文では一刀両断、不正は絶対許さないという態度を明確に打ち出しています。正直なところ、いささか正義漢気取りが鼻につく――と感じられた方も多いのではないでしょうか。無論、明らかな違法行為は問題ですが、従来は法律上グレーゾーンと判断されてきた部分まで白黒はっきりつけようという彼の主張はあまりにも一方的であり、当事者ではないが故の無責任な発言と取られても仕方がないように思われます。

上記の『AERA』の記事を執筆した藤田記者の主張がいかに一方的なものであるかは、次にご紹介するNHKのニュースサイトの記事を見ればわかりやすいでしょう。これは、7月5日付で掲載された「『サブリース契約』トラブル絶えず 国が実態調査始める( https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190705/k10011983401000.html/ )」という記事です。公平を期して、こちらも全文引用しておきます。

「アパートなどの建物を家主から一括して借り上げて入居者にまた貸しする、いわゆる『サブリース契約』でトラブルが後を絶たないことから国土交通省は、賃貸住宅の管理業務を手がける全国およそ1万1000社を対象に、5日から契約の実態調査を始めました。
サブリース契約は、業者がマンションやアパートを家主から建物ごと借り上げ、入居者にまた貸しする契約形態です。
去年、サブリース契約を手がけていたシェアハウスの運営会社『スマートデイズ』が経営破綻し、家主が家賃を得られなくなったほか、全国の消費生活センターにも『一定の家賃収入を保証する約束だったのに守られていない』といった家主からの苦情が依然として相次いでいます。
 国土交通省は、契約の実態を把握するため、5日から賃貸住宅の管理業務を手がける全国およそ1万1000社を対象に調査を始めました。
 調査は、書面やWEBのページを通じて今月末まで行われ、管理する建物の戸数や管理を自社で行っているかどうかに加え、家主に対し、入居者が見つからない場合は賃料収入が減る可能性があることを説明しているかなどを調べるということです。
 サブリース契約を手がける業者については、国に任意で登録する制度がありますが、国土交通省は、調査結果を踏まえて制度の見直しや登録を義務化するなどの対応を検討する方針です。(2019年7月5日 12時55分更新)」

一読しておわかりのように、こちらの記事に関しては何の問題もありません。報道姿勢としてはごくニュートラルなものですし、「サブリース契約自体は合法的な制度だが、中には契約を守らない悪質な業者もいる。それらは当然、正さなければならない」という、当たり前のことを言っているに過ぎません。藤田記者ならさしずめ、このニュースを「サブリース契約を信用してはいけない。業者は皆嘘つきだ」と言わんばかりの記事に仕立ててしまうのではないでしょうか。仮にそういう論調の記事にしてしまえば、たとえ「国交省がサブリース契約の実態を調査し、規制を強化する方針だ」という報道内容自体は事実に基づくものだったとしても、「印象操作」であり「偏向報道」である、というそしりを免れないでしょう。何も、ことさらNHKを持ち上げて、『AERA』=朝日新聞を貶めようという意図は毛頭ありませんが……センセーショナルを売り物にする週刊誌の内容を鵜呑みしてはいけない、ということぐらいは言っておいていいでしょう。

最後に、直近の不動産市況について触れておきます。不動産情報サービスのアットホーム(株)が7月22日に発表した、「2019年6月期の首都圏居住用賃貸物件の市場動向( https://athome-inc.jp/wp-content/uploads/2019/07/2019072201.pdf )」によると、首都圏のアパート・マンション等賃貸物件の成約件数は、7ヶ月連続で前年同月比減少となりました。数値を見ていくと、首都圏全体で6月の成約件数は1万4,973件(前年同月比10.8%減)。地域別では、東京23区が6,717件(同14.3%減)、東京都下1,172件(同7.6%減)、神奈川県4,133件(同5.4%減)、埼玉県1,423件(同6.4%減)、千葉県1,528件(同14.5%減)と、全エリアでマイナスとなっています。さらに、1戸当たりの平均成約賃料は、マンションが8万8,700円(同1.4%下落)とマイナスに転じ、アパートは6万1,500円(同2.7%下落)と5ヶ月連続のマイナスでした。6月という時期はもともと引っ越し業界では閑散期ですが、それにしても年明け以降のこの成約件数の落ち込みは気になります。おそらく、9月には消費税増税前の駆け込み需要が起こるものと予想されますが、しょせん一時的なもので、秋以降も不動産賃貸事業者には厳しい市況が続きそうです。シェアハウス大家さんにとっても、空室募集には辛抱が必要な時期になるかもしれません。
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