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第77回 署名記事とシェアハウス

2019年10月6日3時にマリアナ諸島の東海上で発生し、12日に日本に上陸した「令和元年台風19号」は、関東・甲信・東北地方など東日本のほぼ全域で記録的な大雨による甚大な被害をもたらしました。10月23日15時の時点でNHKがまとめたところによると、死者84名、行方不明者9名、堤防決壊は71河川135ヶ所、住宅被害は6万8000棟余りに上るとのことです。政府はこの台風の被害に対し、通常の「激甚災害」の指定を行っただけでなく、台風の被害としては初めて「特定非常災害」を認定しました。災害救助法を適用した自治体は、同18日現在13都県317市区町村で、東日本大震災を超える過去最大の適用規模となっており、今後もさらに増加することが見込まれています。これにより、1977年の「沖永良部台風」以来、42年ぶりに台風としての名称が命名される見通しとなりました。被災地では現在も不自由な避難所暮らしを続けている方が大勢いらっしゃいます。この文章を書いている現在も、台風21号が日本列島に接近しつつあり、この週末にかけて引き続き厳重な警戒が必要になるとのこと。読者の皆様も、くれぐれも身の回りにお気をつけください。

さて、前回の当コラムでは、最近発表されたシェアハウスの実態を調査したいくつかの報告書についてご紹介いたしました。そうした世間の関心の高まりを受けてか、扶桑社の発行する雑誌『SPA!』系列のWebサイトである『女子SPA!』において、ここしばらく断続的にシェアハウス関連の記事が掲載されています。いずれも「トシタカマサ」という名義のライターによるもので、内容を読む限り、この種の記事としては珍しく(?)きちんと取材して書かれたもののように見受けられます。ただし、これは媒体の編集方針を受けてのことかもしれませんが、タイトルのつけ方などから、全体にシェアハウスに対してマイナスイメージを伝える論調が目立ちます。
たとえば、直近の10月23日に掲載された記事は「シェアハウスの止まないトラブル。施錠したはずの部屋からモノが…」( https://joshi-spa.jp/957372 )。
これは、ある女性の体験談として、シェアハウスで起こった盗難事件の顛末が記述されています。最終的に、盗まれた物はいつの間にか元の場所に返却されたものの、犯人はわからずじまい。彼女は半月で退去し、支払い済みの家賃も管理会社から全額返金されたので、警察には届けなかったそうですが……。「カギを交換したにも関わらず、誰かが侵入した形跡があった」など、いろいろ不安を掻き立てる内容になっています。
同じく、10月17日に掲載された記事は「シェアハウスの現実。男性を連れ込みまくるボス女子に『音、丸聞こえですけど…』」( https://joshi-spa.jp/957373?cx_clicks_art_mdl=3 )。
タイトルだけで内容はおおよそ察せられると思いますが、とある女性専用シェアハウスでの出来事を綴った体験談です。この事例では、取材対象者が過去に何軒ものシェアハウスを渡り歩いてきた経験者であったためか、管理会社に相談して、最終的には万事解決したそうですが……。この女性が当時抱いた感想として、「下品でガラの悪いテラスハウスみたい」という言葉が語られるのが何やら印象的です。
また、10月12日に掲載された記事のタイトルは「増えるシェアハウスの明暗。隣人ギャルの騒音がストレスで円形脱毛症に? 」( https://joshi-spa.jp/957369 )。
これは地方から上京してきて、初めてシェアハウスに住むことになった女性の体験談です。こちらもタイトルを読めばだいたい内容の見当はつくでしょうが、最終的には、彼女は2ヶ月で退去し、そのシェアハウスも1年後には閉鎖されたとか。ただ、気になったのは、このシェアハウスが「中古マンションの4LDKを改装した物件」であり、にもかかわらず定員は10名で、満室だったとあること。平米数は書かれていませんが、さすがにこの住環境では長続きするはずもなかったろうと納得できます。
このトシタカマサ氏の署名記事は、この類の媒体にありがちな「はじめに結論ありき」の一方的な「シェアハウスバッシング」ではなく、丁寧な取材に加え、客観的なデータを併せて提示していることが特徴で、煽情的なタイトルとは裏腹に、ライター自身はニュートラルな姿勢で臨んでいることが伝わってきます。個人の著作物なので引用することはできませんが、興味がありましたらリンク先の元記事をお読みになることをお勧めします。

ちなみに、上記の一連の記事が世に出る少し前、9月24日付けの『ORICON NEWS』には、次のような記事が掲載されています。
「『入居者間恋愛』は幻想?住人らが明かすシェアハウスの実態」( https://www.oricon.co.jp/special/53632/ )。
こちらは今井洋子氏というライターの署名記事です。タイトルのつけ方や、記事の冒頭で『テラスハウス』の話題に触れていることなどから、一見、ありがちな内容に思われてしまいそうですが、こちらもしっかりと取材されており、好感が持てます。やや長めの文章量で、運営会社と男女複数の入居者をそれぞれ取材し、良い話も悪い話も公正かつ客観的に記述していることがわかります。部分的には、やや目新しさに欠ける情報(たとえば、「物件数が増える中、コンセプトがない物件は埋もれてしまう傾向に」という一節など)もあり、おそらく今井洋子氏はこれまであまりシェアハウス関連の情報に深く触れてこなかったのではないかと思われますが、全体的にはよくまとまった、読み応えのある記事にまとまっています。こちらもぜひ、リンク先の記事全文のご一読を推奨します。
今井洋子氏といい、トシタカマサ氏といい、シェアハウスに対して妙な先入観や偏見を持たず、まっすぐに向き合うタイプの書き手が記事を発表する場が増えてきたことは、業界にとっては歓迎すべき状況だと言っていいでしょう。両者に共通する特徴は、「署名記事」であるということです。署名記事の場合、「○○編集部」などの匿名記事に比べて書き手の責任が大きいため、いい加減な内容を書き散らすわけにはいきません。先日、「やらせ」が発覚した某テレビ番組が相次いで終了したように、最近はメディア側でも責任を追及されることを極度に恐れています。そのため、いざというときには書き手に責任を押しつけられる署名記事を増やしている……という見方もできるかもしれませんが、結果から見れば、書き手に取っても読み手にとっても、また取材される側にとっても悪い話ではなさそうです。

最後に、ちょっと毛色の違うニュースもご紹介しておきます。10月4日の『弁護士ドットコムニュース』に掲載された、「住居借りられず仕事の応募も困難、母子世帯を救う『シェアハウス』、全国に広がる」( https://www.bengo4.com/c_18/n_10203/ )という記事です。一部抜粋して引用しましょう。
「母子世帯の住まい確保を支援するため、今年7月に設立されたNPO法人『全国ひとり親居住支援機構』(横浜市)代表の秋山怜史さん(一級建築士)が10月4日、東京・厚生労働省記者クラブで記者会見を開き、『住所、保育園、仕事の3つがそろわないと母子の生活は成り立たない。入居しやすく、質の高いシェアハウスを全国に広げ、行政との連携も深めていきたい』と話した。
(中略)
シングルマザーに特化した不動産ポータルサイト『マザーポート』( https://motherport.net/ )上でアンケート(回答者112人)したところ、84%の母子世帯が不動産を借りる上での不利益があったといい、『ひどいケースでは審査も通ったのに、母子世帯であることを理由に契約できませんでした』(秋山さん)。
母子シェアハウスでは、母子世帯を理由に入居を断ることはない。さらに、施設ごとに様々なサポートのメニューも整えている。たとえば保育園の送り迎えや夕飯があるなど、母子が生活する上で便利なサービスがついている施設もあるそうだ。
(中略)
秋山さんらは2012年から支援を始めた。現在、25の母子向けシェアハウスが全国で運営されているという。(10月4日〔金〕16時34分)」
母子家庭、シングルマザーに特化したシェアハウス、というコンセプトは、いわゆる「商売っ気抜き」というか、どちらかといえば「社会貢献」が主目的であり、やはりNPO法人が活躍するフィールドであり、民間のシェアハウス大家さんの出る幕はなさそうですが、シェアハウスという、今や確立した住まい方の可能性を一層広げていくことで、将来的には新たなビジネスチャンスが派生する土壌となってくれるかもしれません。
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